超人気インフルエンサーの裏方をしてたけど、給料が高すぎると言われて無理矢理クビにされた件。でもやっぱりお前が必要だから戻ってこいと言われたけど、新人VTuberのサポートで忙しいんでもう無理です。
第25話:倉瀬スズハちゃんのサポートを全力で引き受ける!
第25話:倉瀬スズハちゃんのサポートを全力で引き受ける!
「そ、それはその……モデレーター以外の裏方作業もやって頂けるのは私としてもすっごく助かるんですけど……で、でも流石にご飯を御馳走するだけでここまでの事をやって貰う訳にはいきませんよ! これはちゃんとした謝礼金をお渡ししなきゃ絶対に駄目な作業量ですから!」
桜井さんは声を荒げながら俺に向けてそう言ってきた。
まぁ確かにモデレーターだけなら作業量的に無報酬で全然良いレベルなんだけど……でも、他の裏方作業もやるとなったらそれなりに仕事量は多くなってしまうからな。
そしてそれらの裏方作業を外注で頼むとしたらそれ相応の金額が必要になることは当然俺にもわかっている。だって俺は今フリーランスでそういう仕事をしてるんだし。
「……な、なんですけど……で、でも……本当に申し訳ないんですけど、私が友瀬さんにそれほどのサポートをして頂くための謝礼金を用意するというのは……さ、流石にちょっと厳しいというか、その……」
俺がそんな事を思っていると桜井さんは申し訳ない表情をしながらそんな事を言ってきた。
いやまぁ桜井さんのような個人勢かつ普通の大学生の女の子が裏方作業をしてくれるスタッフを雇うなんていうのは到底無理な話だ。そんな事は俺だって当然理解している。
そして桜井さんは俺が無償で引き受けると言っても、“それは友瀬さんに非常に申し訳ないですから……”と言って断ってくる女の子だという事も理解している。だから俺は……。
「うーん、そうですね……あ、それじゃあここは一つ……出世払いって事でどうですか?」
「……え? しゅ、しゅっせばらい……?」
俺はそんな提案を桜井さんにしてみる事にした。まぁ当然のように桜井さんはキョトンとした顔をしながら俺の方を見てきた。
「い、いやいや出世払いって……それは出世する見込みのある人が言うセリフであって、私なんかが使うセリフでは絶対にないですよ!」
「はは、いや大丈夫ですよ。だって桜井さんもこのままVチューバーとして頑張る事を諦めなければ……いつか必ず桜井さんもトップVチューバーの一人になれるはずですよ!」
「え……えっ!? い、いや、その友瀬さんの自信は……い、一体何処から来てるんですか……?」
「え? うーん、そうですねぇ……まぁ強いて言うなら、勘ですかね?」
「えっ!? いや勘なんですか!?」
俺がおどけた態度でそんな事を言ってみせると、流石に温厚な桜井さんであっても大きな声をだしてツッコミを入れてきてくれた。
「あはは、まぁ今のは冗談ですよ。でも俺も子供の頃からネット活動はしてきましたし、大人になってからはネット活動をしている人達の裏方作業も沢山してきました。だから俺は他の人よりも数多くのウーチューバーやインフルエンサーを見てきましたし、ある程度はこの人は有名になりそうだなっていうのも何となくわかるものなんです。そしてそんな俺の目からしたら……桜井さんは絶対に上を目指せる人だなって思うんです」
という事で俺はおどけた態度から一転して真面目な表情になりながら桜井さんにそう伝えていった。
「だからそんな桜井さんが有名になるためのお手伝いが出来るのであれば、俺は喜んで手を貸したいと思ったんです。そしていつか桜井さんが……いえ、倉瀬スズハさんがもっともっと人気になって、それでお金も稼げるようになったら、その時に改めて俺に報酬を払ってくれればそれで良いですよ」
「え……でも、それって……私が有名になれなかった場合は友瀬さんにお支払いする報酬はどうしたら良いんでしょうか……?」
「はい、ですから俺への具体的な報酬は全て桜井さんが決めてくれて良いです。俺の手助けなんて全然要らなかったなって思ったら0円で良いですし、俺のおかげで色々と助かったなって思ったらその時には桜井さんの気持ちを謝礼として頂ければそれで十分ですから!」
俺への報酬に関しては桜井さんに全て任せるつもりだったのでそう言った。
「え……えぇっ!? い、いや、それって友瀬さんにすっごく不利な条件なんじゃないですか!?」
「あはは、いやそれで全然大丈夫ですよ、俺は純粋に桜井さんの応援をしたいだけですし! あ、でも俺も仕事をしながらのお手伝いになるので、その点だけはご了承して頂けると助かります!」
「い、いやそんな……仕事の合間に手伝ってくれるだけでも十分すぎるというか……! い、いやでも……でも何でそこまで……私に良くしてくれようとしてくれるんですか……?」
「え……?」
桜井さんはそんな事を俺に尋ねてきた。いやそれは至極真っ当な疑問だ。俺が桜井さんの事を全力でサポートしたいと思ったその理由についてか……。
「……そうですね……まぁやっぱり……うん、俺が倉瀬スズハさんのファンだからってのが一番の理由ですよ! ファンの心理としてはやっぱりスズハさんが凄く有名になっていってくれたら俺も嬉しいってだけです。それにスズハさんが有名になったらオリジナルソングも聞けるようになるんですよね? あはは、そんなのファンとしては絶対に聞きたいに決まってるじゃないですか! だから俺は倉瀬スズハさんの一人のファンとして少しでもお手伝いをさせて欲しいって思っただけなんですよ」
「……そ、そうなんですか。い、いや……そこまで私の事を応援して頂けるとは思ってもいなかったので……純粋に凄く嬉しいです」
という事で俺は倉瀬スズハちゃんの一人のファンとして、桜井さんが有名になるためのお手伝いがしたいと言ってみた。まぁでも……。
(でも……まぁ本当は違う理由なんだけどさ……)
いや、もちろん今俺が言った言葉は決して嘘ではない。俺は倉瀬スズハちゃんの大ファンだし、それに桜井さんがとても優しくて素敵な人柄の女の子だという事も知っているからこそ、俺に何か手伝える事があるなら手伝ってあげようと思っていた。
でも俺が桜井さんの事を手助けしたいと思った理由はそれだけじゃないんだ。実は俺は桜井さんに……いや、倉瀬スズハちゃんにとてつもなく大きな恩があったんだ。
だから俺はその“スズハちゃん”から貰った恩を返せるというのなら……俺は喜んで“桜井さん”のお手伝いをさせて貰いたいと考えていた。
「はい、わかりました! それじゃあその……ファンの皆さんに……そして友瀬さんに早く私のオリジナルソングを聞いて貰えるように頑張ります! だからその……これからよろしくお願いしますね! 友瀬さん!」
「はい、こちらこそです!」
という事で桜井さんは俺の言った理由に納得してくれたようで、桜井さんは俺に向けて満面の笑みを浮かべながらそう言ってきてくれた。こうして俺は桜井さんのモデレーター以外の裏方作業も引き受ける事となった。
(……ま、でもいつか本当の事を言える日が来たらいいな)
まぁでも結局の所、ほぼ無償で桜井さんの手助けをしたいと言った本当の理由は秘密にしたままになってしまった。
それでもいつか本当の理由を桜井さんに話せる日が来たら良いなと……俺はそう願いながら桜井さんに向けて微笑みを浮かべていった。
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