第19話:え、桜井さんって……えぇっ!?

「……あ、それじゃあ早速ですけど、桜井さんのアカウントを教えて貰えますか?」


 桜井さんの“頑張って御馳走します”の意味を考えようとしたんだけど……でも今はそんな事よりも桜井さんのチャンネルについての情報を教えて貰う事の方が重要だった。


 なので俺は桜井さんがやっているVTuberのアカウントについてを尋ねてみる事にした。


「あ、そうですよね! はい、わかりました! それじゃあちょっと待ってくださいね」

「あ、はい、わかりました」


 すると桜井さんはそう言って服のポケットからスマホを取り出してきた。そしてそのままスマホの画面を開いて操作を始めていった。どうやら桜井さんは自分のウーチューブチャンネルに飛んでいってくれているようだ。


 という事で俺は桜井さんのスマホ操作が終わるのをしばらく待つ事にした。でもその時にふと俺はとある事が気になってきた。


(……そういえば桜井さんのチャンネルってどんな事をメインにやってるんだろう?)


 VTuberといってもやっている活動は人によって様々に異なっている。例えばゲームを面白おかしくプレイ実況をしている人もいれば、リスナーと楽しく雑談配信をしている人もいるし、歌ってみた系の音楽配信をしてる人もいる。もちろんそれ以外にも数多くの実況・配信ジャンルが存在している。


 そんな数多くのジャンルが存在している中で、果たして桜井さんのウーチューブチャンネルではどんな活動をメインでやっているんだろう? ちょっと気になるし先に尋ねてみようかな?


「あ、ちなみになんですけど、桜井さんはVTuberとしてはどんなジャンルをメインで取り扱ってるんですか?」


 という事で俺はスマホ操作している桜井さんにそう尋ねてみた。すると桜井さんはスマホを操作しながらもすぐに返答してきてくれた。


「あ、はい! えっとですね、メインでは歌ってみた系の動画投稿をしています! あとは雑談配信したりリクエストを貰った曲を歌ってみた配信とかもしてますよ!」

「あぁ、なるほど! 桜井さんは歌系のジャンルをメインに扱われてるんですね」

「はい、そうです!」


 俺が尋ねた事に対して桜井さんはいつも通り元気よく俺に教えてくれた。


(へぇ、なるほど。桜井さんは歌ってみた系の動画投稿をされているVTuberさんだったのかぁ……って、あっ!)


 俺はその時、つい先日に桜井さんと会った時の会話を思い出した。それは桜井さんが歌の練習をするためにカラオケに行くと言ってた時の会話だった。


『そんなにも本気で歌の練習をしているだなんて凄いね。あ、もしかしてカラオケの大会か何かにでも出場するとか?』

『え……あ、い、いや、そういうわけじゃないんですけど……でもちょっと友達……のような人にこの曲を歌ってほしいってリクエストを貰ったんで、それの練習をしにいこうかなと……』


 俺は桜井さんとそんな会話をした事を今思い出した。


(あぁ、そうか。それじゃあ“友達のような人”って……つまりは“リスナーさん”の事を指してたのかな?)


 という事はあの時の桜井さんはリスナーさんから貰ったリクエストの曲を練習しにカラオケに行っていたって事か。あぁ、なるほどな、だから桜井さんは色々なジャンルの曲を歌えるって言ってたんだな。


(そっかそっか、なるほどなー。うん、それは桜井さんのチャンネルもちょっと楽しみだな!)


 俺は基本的にどんなジャンルのVTuberも好きだけど、でもやっぱりその中でも歌ってみた系の動画を出してる人や歌枠配信をしている人が特に好きだった。


 それはやっぱり自分自身が如月サクを使った曲作りをしている身でもあるから、同じように音楽が好きな人の事はついつい応援したくなるってものだ。


(まぁだからこそスズハちゃんを一番推しているんだけどさ)


 スズハちゃんとは俺が今一番推している歌ってみた系動画をメインに投稿している新人VTuberだ。


 スズハちゃんは俺の好きな曲の歌ってみた動画を投稿してくれるし、歌声もかなり透き通っていてとても美しい歌を歌ってくれるんだ。でも雑談配信になるとゆる甘ボイスの天然さんというほんわか具合のギャップ差がもう最高に素晴らしいんだ。マジで一生推せるわ。


 でもそんなスズハちゃんは……今の桜井さんと同じように荒らし被害に遭ってしまっため、今は休止中のような感じになっているので非常に心配している。


(……早くスズハちゃんにも帰ってきてほしいな……)


 俺はそんな事を思い出しながらスズハちゃんの事を心配していると、桜井さんはスマホの操作が完了したようで俺に声をかけてきてくれた。


「はい! 私のチャンネルに入れました! どうぞです!」

「あ、はい、ありがとうございます!」


 そう言って桜井さんはスマホを俺の方に手渡してきてくれた。どうやらスマホの画面には桜井さんのウーチューブチャンネルが開かれているようだ。


「それじゃあ早速桜井さんのチャンネルを見させてもらいますね、どれどれ……って、え?」


 という事で俺は早速その桜井さんのチャンネル名を確認しようとしたんだけど……でもそのスマホの画面に映し出されていたチャンネル名は……。


―― 【倉瀬スズハch】


「……え?」


 俺は一旦スマホから目を離してすぐさま目をごしごしと擦っていった。そしてもう一度俺は桜井さんに渡されたスマホを見てみる事にした。でもやっぱりそこに映し出されているのは……。


―― 【倉瀬スズハch】


(……倉瀬スズハ……?)


 い、いや……あれ? え、えぇっと……俺はその名前を知っているというか……い、いやチャンネル登録もしているというか……え、えっと……あれ……?


「……え? えっと……あれ……え……いや……?」


 俺は今のこの状況が全く理解出来ず頭の中は最大級のパニック状態に陥ってしまっていた。


 だって桜井さんが見してきたそのチャンネルに書かれている“名前”は……どう見ても俺が今一番推しているVTuberの女の子の“名前”だったのだから……。


(……えっ? そ、それって……じゃ、じゃあ……その……つまり……?)


「えっと、どうかしましたか?」

「え……えっ!? あ、いや、その……えぇっと……その、桜井さんって……倉瀬スズハさん……なんですか……?」


 俺はかなり挙動不審気味な態度かつ震える声で桜井さんにそう尋ねてみた。すると桜井さんはいつも通り天真爛漫な笑みを浮かべながらこう答えてきた。


「え……あ、はい、そうです! 倉瀬スズハと言う名前で活動しています! 改めてよろしくお願いします友瀬さん!」

「え……えぇえええええええええええええっ!?」


 という事で俺の目の前にいる桜井さんの正体は……俺が一番推していた新人VTuberの倉瀬スズハちゃん本人だったのだ。


 俺はそのあまりにも偶然すぎる出会いに驚愕としてしまい、今日一番の大きな声を上げてしまった。そしてそんな俺の驚いた声に反応して桜井さんもビクっとなってしまっていた。


「う、うわっ!? び、びっくりしましたよ……どうかしましたか友瀬さん?」

「えっ!? い、いやだって……そ、そんな……えっ!? だ、だって……えぇっ!?」


 俺はそんな奇跡的な出会いをしたという現実が全然受け入れられず、もう一度大きな声で驚いてしまったのであった。


 しかしこの出会いこそが……遠い未来に“絶世の歌姫”と呼ばれるまでに至る彼女と、それを陰から支え続けていく事になる俺との最初の出会いなのであった。


(第一章:出会い編 終)


-------

・あとがき

ここまで読んで頂きありがとうございました!

ようやく第1章が終わったんですけど、序章だけで5万文近くも使ってしまい申し訳ありません……。

それでも少しでも多くの読者様に楽しく読んで貰えたようならとても嬉しいです!


そしてこれからもこの作品を読みたいと思って下さるようでしたら、是非とも本作品の☆評価やフォロー登録をして頂けるととても助かります!

読者の皆様からの☆評価やフォロー登録が私の投稿のモチベーションに繋がりますので、何卒宜しくお願い致します!


それでは第2章でもまた読者の皆様にお会いできるのを楽しみにしております!

そして改めて最後にもう一度、ここまで読んで頂き本当にありがとうございました!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る