第14話:一方その頃クルスドライブでは……②(秀視点)

「……あ、そういや先月の個人チャンネルでの配信はどうだったんだ? それなりには稼げたのか?」


 そういえば一ヶ月前の“緊急動画”を投稿してから紘一は個人チャンネルで配信しまくるとか言ってたよな。確かそれで稼いだ金で俺達に旨い物を食わせてくれるっていう約束もしてたよな。


「んー? あぁ、お陰様で先月は投げ銭だけで500万くらい稼げたよ。いやマジで人生ちょろすぎだわw あの友瀬クズが辞めてくれたおかげで毎日応援コメントの赤スパが飛びまくりよw」

「えっ!? マジかよすげぇな! はは、それじゃあ約束通り俺達に旨い飯を奢れよ? 焼肉でも鮨でも何でもいいぞ?」

「ん? あっ、すまん。もう投げ銭の金は全部つかっちまったわ、あはは」

「は……はぁっ!? いや全部って500万だぞ!? どうやったらそんな大金をたった一ヶ月で全部使い切れるんだよ??」

「はは、いやー実は俺さ、先月からトイッターのDMを開放してるじゃん?」

「ん? あぁ、そういやそうだったな」


 元々俺達クルスドライブのメンバーはファンと個人的な交流を持つ事を禁止にするという変な決まり事があった。もちろんそんな変な決まり事を作ったのはあの友瀬クズだ。


『クルスドライブは半年に一度大きなファンミーティングを開催してるんだから、ファンとの交流はその時だけにしておいた方が良いと思う。そうしないと個人的に交流を持ててるファンと交流を持ててないファンでの格差が生まれちゃうし、そのせいでファン同士のトラブルが発生してしまう可能性もあるだろ? だからなるべく個人的なファンとの交流は控えるようにしておこうな』


 そう言ってあのクズは俺達の各種SNSに個別でDMが送ってこられないように設定し、それ以降も俺達がファンと個別に繋がってないかSNSのチェックしてくるようになったんだ。


 まぁ本当はそんなの無視したかったんだけど……でも俺達のネット上での誹謗中傷対応は全部あのクズに任せてたから、時々そうやってクズにSNSチェックをされる事に関しては渋々と従っていたんだ。


 でもそんなクズはもうこのクルスドライブには居ないので、こんな変な決まり事を守る必要はもうなくなった。という事で紘一はすぐにファンの女の子達からDMを送って貰えるように速攻で設定を変更していった。


 ちなみに俺は動画投稿のお知らせをするくらいにしかSNSは見てないのでDM開放はしてない。そもそもメールを見るのが死ぬほどめんどくさくて嫌いなんだ。編集スタッフからの打ち合わせとか仕様書の催促メールとかも死ぬほど嫌だったしさ。


「んーでもそれってSNSのDMを開放しただけだろ? それがどうして500万も使い切った話に繋がるんだよ?」

「あはは、いやDM解放したらさ、もう毎日のようにファンの女の子達から俺と遊びたいってお誘いのDMが来るようになったんだよ!」

「あーそういや前にもそんな事を言ってたな。あ、そういや先月はほぼ毎日のように紘一は遊びに行ってたけど……あれってもしかしてほぼ毎日ファンの女の子達と遊んでたってことか?」

「あぁうん、そうだよ。まぁほぼ毎日ってか毎日違うファンの女の子と遊んでたんだけど。そんで俺のファンの女の子と遊ぶんだったらさ、どうせなら綺麗なホテルで遊びたいじゃん? ってことで先月は毎日“ザ・リッチホテル・トーキョー”のデラックスルームに泊ってたんだよね」

「へぇ、そうなん……ってえぇっ!? ファンの女の子達と毎日そんな超高級ホテルに泊ってたのかよ!? お前すげぇな!」


 “ザ・リッチホテル・トーキョー”と言えばこの都内でも有数の超高級ホテルだ。そんなホテルのデラックスルームともなると一泊辺り15~20万は確実にするはずだ。


 俺達クルスドライブでもウーチューブの企画として一度だけそのホテルに泊まってみたという動画を投稿した事があるんだけど、マジで高級感があって凄まじすぎるホテルだったというのは覚えている。そんな所に毎日泊ってたとか、コイツマジですげぇな。


「……ん? いや、というかそれってつまり……お前毎日ファンの女の子とホテルでヤッてたってことだよな!? あはは、お前どんだけ性欲溜まってんだよっ! 流石に毎日はやり過ぎだろww」

「いやいやしょうがないだろ? だって俺とエッチしたいって連絡くれる女の子が沢山いるんだからさ。でもそのせいで女の子達の管理がめっちゃ大変なんだよ。仕方ないからとりあえず今はメモ帳でセフレリストを作ったからそれでなんとか女の子の管理してるわ」

「はは、なんだよそれ、セフレリストとか男のロマンじゃん。いやめっちゃ羨ましいな。あ、でもそんな事して大丈夫なのか? そういうのが外に流出したら“少しくらい”は大変な事になるんじゃね?」

「あはは、いやこれくらい全然大丈夫だろ。今まで会ったファンの子達には全員誰にも言わないってちゃんと約束させといたからさ。そのためにプライバシー性の高い超高級ホテルに泊まらせてやったんだし、そもそも俺とエッチしたいって言ってきたファンの子達なんだから口は絶対に堅いだろ? だから俺が口を滑らせない限り問題ないさ」

「まぁ確かに言われてみればそうか。それじゃあ安心だな。はは、いやそれにしても友瀬クズをクビにしてから俺達ってどんどんと調子良くなっていってるよな。チャンネル登録者数の伸びも爆増したし先月の収益も過去最高だしさ」

「はは、確かにそう言われてみれば友瀬がいなくなってから俺達すっごい調子良いよな。でもそう考えてみるとやっぱりあのクズは俺達にとっての疫病神だったんじゃないのか?」

「あはは、確かにそうかもしれないな。でも疫病神がいなくなった事で一番調子良くなってるのは確実に紘一だよなー。投げ銭だけで500万も稼いでさらに毎日可愛い女の子と遊びまくってたんだろ? はは、超絶勝ち組すぎだろww」

「いや本当になww これも全部疫病神のクズが居なくなったおかげだな。はは、それじゃあまたいつかあのクズと会う事があったら、そん時はちょっとくらいは高い飯でも奢ってやろうかな」

「おいおい、その前に俺達に飯を奢るのが先だろ? あんなクズに飯奢るくらいなら俺達に奢れよww」

「はは、もちろんわかってるよw」


 そう言って俺と紘一はお互いに顔を見ながら笑い合った。


 という事で俺達は疫病神の友瀬クズを辞めさせた事により、金も地位も女も何もかもを手に入れ、さらには超絶勝ち組の人生を築くことが出来たのであった。


(はは、マジで人生チョロすぎだな!!)


 だけど俺達はまだ気づいていない。今まで友瀬がクルスドライブのために多大なる時間を費やして俺達のサポートをしていた事に……。


 そしてそんなサポートに徹していた友瀬がいなくなった事で、ここから俺達の転落人生が始まっていくという事を……この時の俺達はまだ気づいていない。

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