第10話:スズハちゃん、悪質な荒らし被害に遭ってしまう

「こ、これ……ちょっとマズそうだな……」


 悪質な荒らしが相手でもスズハちゃんはスルーせずに懇切丁寧に対応をしようとしてしまっていている。でもこれでは荒らしてるヤツらの思うツボだ。


―― 雪ウサギ:こんばんは、基本的に荒らしコメントはスルーしちゃって大丈夫ですよ! あとコメント欄が荒れて不快なようでしたら、コメント削除やユーザーブロックとかも出来ますよ!


『え……あ、ゆ、雪ウサギさん、こんばんは……そ、そうなんですか……? で、でもすいません、実はそういう機能を今まで使った事がなかったので……ど、どうやるのかわかってないんですよね……』


―― グラン:あー、確かに今までこんな荒らしとかなかったからそんな機能使う事なかったもんね


―― atagi:あ、それじゃあ、もしスズハちゃんだけで荒らし対応しきれないようならモデレーターを誰かに頼んでも良いかも!


―― 雪ウサギ:あぁ、確かにそれも良いかもですね!


 モデレーターとは簡単に言えばウーチューブチャンネルの管理人みたいなもので、チャンネル主の代わりにコメントやユーザーをブロックしたり通報したりする事が出来るようになる人の事だ。


『え、えぇっと……モデレーター……? す、すいません、私……そういう配信の機能とかもまだ全てを把握しきれてなくて……』


―― あwせdr:嘘だろww そんな事もわからないとか情弱すぎだろww ちゃんと調べてから始めろよww


―― kぐしr:マジで何もかもが不快だからさっさとやめてほしいわ。なんでこんな頭の悪いヤツが配信なんてやってんの????


―― lsdじょ:きもすぎだわこの女。きっとリアルでもコイツ頭わるわるなんだろうなぁ……はぁ、可哀そうに……


『あ……う……す、すいませ、ん……勉強不足なばっかりに……皆さんの事を不快にさせてしまって……』


―― 雪ウサギ:いやいや、スズハちゃんが謝る事じゃないですよ!


―― atagi:全然大丈夫だよ! モデレーターなんて知らないウーチューバーなんて沢山いるし! ってかウーチューブの機能なんて知らなくても余裕で生きていけるし!!


―― グラン:そうそう、だからマジで気にしない方が良いよ! 荒らしはスズハちゃんの反応を見て楽しんでるだけだから!


『は、はい……そう、ですね……そ、それじゃあすいませんけど……荒らしの方々は一旦スルーする方向で行きたいなと……』


―― あしkf:ってかさぁ、俺このキモい萌え声に聞き覚えあんだけど……多分コイツAV女優だぞ?? 俺コイツのAV何本か持ってるわw


『え……えっ!? え、えーぶ……!? い、いや違います!! わ、私は普通の大学生ですから……!』


―― lsdじょ:マジかよw オイオイこんな所で二次元の皮を被って遊んでないでさっさと服脱いで仕事してこいよww 男優待ってんだろw


―― あwせdr:あーあ……もうアンタはAV女優だってバレちゃったんだから今から喘ぎ声配信に切り替えろよ。そしたら喜んで投げ銭するわww


―― kぐしr:えっ!? 今から現役AV女優による喘ぎ声配信が始まるの!? 全裸待機してんだからはよ!! いつも男優と絡んでる時みたいな叡智な喘ぎ声はよ!!


『え……ふ、ふぇっ……そ、そんな……わ、私……そんな事やってないのに……ち、違うのに……ぐすっ……う、うぅ……』


―― あwせdr:wwww 嘘泣きおつww こんなぶりっこに騙されるの弱男だけだろww


―― kぐしr:泣けば何でも許されると思ってるマンさんマジできちぃわ……


―― lsdじょ:馬鹿な弱男共を萌え声で釣ってソイツらから金せびって楽しいか?? いや弱男を騙すだけで簡単に金稼げるんだから楽しいに決まってるよなww


―― kぐしr:それマジでお前のやってる事ただの乞食と変わらねぇからな?? 外道すぎて草も生えんわ


『う、うぅ……そんな事……思ってないです……ぐすっ……ぐす……私はただ……皆を楽しませたいと思って純粋にやってるだけ……なんです……ぐすっ……』


―― kぐしr:純粋でやってるヤツは投げ銭なんて受け取るわけねぇんだよなぁ?? ぷはは、自分で自分の事論破してんじゃんw 乞食おつ


あでgぁ:うっざ……嘘泣きするくらいならさっさとやめろよ! 本業のAVに帰れ!!


lsdじょ:早くやめろやめろやめろ! マジで不快だからもう二度と配信すんな!!


『……ぐすっ……すいません、今日はちょっともうしんどいので……配信を終わりにします……不快にさせてしまい……申し訳ありません……でした……』


―― 本日の配信は終了しました。また次回の配信をお待ちください。


 スズハちゃんはそう呟いてからすぐに配信を閉じてしまった。


「……だ、大丈夫かな……スズハちゃん……」


 俺はそう呟きながらスズハちゃんの配信画面を眺め続けていった。


 俺や他のファンの皆はその悪質な荒らしコメントに負けないように応援コメントをずっと送り続けていっていたんだけど……でもまだまだ新人なスズハちゃんにとってはその悪質な荒らしコメントは相当にきつかったんだと思う。最後には泣いてしまっていたし……。


 そしておそらく新人配信者のスズハちゃんにとって今回が生まれて始めての荒らし被害だったと思うんだけど……マジでメンタルとか大丈夫かな……?


 こういう直接的な悪意をぶつけられるのって相当心に来るもんなんだよな……。

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