超人気インフルエンサーの裏方をしてたけど、給料が高すぎると言われて無理矢理クビにされた件。でもやっぱりお前が必要だから戻ってこいと言われたけど、新人VTuberのサポートで忙しいんでもう無理です。
第5話:役立たずのクズを辞めさせてやった(秀視点)
第5話:役立たずのクズを辞めさせてやった(秀視点)
俺の名前は神楽秀。25歳の男で職業はウーチューバーをしている。
そしてウーチューバーとしては若い子達からの絶大な人気を誇っているグループ“クルスドライブ”のリーダーを担当している。このクルスドライブを立ち上げたのは俺が大学一年の頃だったから、もう七年近くが経っているという事になるな。
クルスドライブを作ったきっかけは大学一年生の時に中の良かった俺、友瀬、成瀬、村本の四人で夏季休暇中に何かしようって軽いノリで始めたのがきっかけだった。
別に人気になりたいとか金持ちになりたいとかそんな気持ちは一切なく、いつもの俺達がダラダラと遊ぶ延長線上としてウーチューブを始めたんだ。
最初の頃は歌ってみた動画、ゲーム実況動画、まったり雑談配信などの他のヤツらがよくやっていた昔ながらの王道スタイルで俺達もやっていた。
まぁやっぱりウーチューブを始めたばかりの頃は見に来てくれる人もチャンネル登録者数も全然増えなかったんだけど、でも毎日継続してウーチューブ活動を続けていったら少しずつ人が見に来るようになってきた。
それからしばらくしてウーチューブ界隈では顔出し有りの実写系ウーチューバーが流行りだしてきた。なのでこれを機に俺達も顔出しをする実写系のウーチューバーになろうとメンバーに提案してみた所、成瀬と村本の二人は速攻でOKを出してくれた。
でも友瀬だけは顔出しは恥ずかしいから嫌だという事だったので、友瀬には演者としてではなく裏方をしてもらう事にした。という事でそれからは実写系ウーチューバーとして再始動する事になった。
実写系ウーチューバーに転身してからすぐに幾つかの実写動画がバズったおかげで、クルスドライブのチャンネル登録者数は爆発的に増えていき、そこからたったの数ヶ月でチャンネル登録者数が100万人を突破し金盾を貰う事が出来た。
それからも俺達の人気は留まる事を知らずに右肩上がりでどんどんと成長し続けていき、そしてそのおかげで今では俺達は年収数千万円を簡単に稼ぐ程の超勝ち組へと成長したのであった。
◇◇◇◇
「それじゃあ今日の動画はここまで!」
「チャンネル登録、高評価、メンバー登録もよろしくな!」
「それじゃあ、ばいばーい! ……はい、オッケー」
「ういー……おつかれーっす」
「あいよー」
「んー」
今日の緊急動画を撮り終えた俺はそのままソファの上にゴロンと寝転がっていった。
「今日の動画は編集せずにノーカットでそのまま投稿でいいよな? 編集とかめんどくせぇし」
「全然それでいいよ。ってかどうせ今日の動画の本題は編集スタッフ探してるっていう動画だしさ」
「あぁ、わかった。それじゃあ後で動画見返して大丈夫そうだったら明日の朝にでも投稿しとくわ」
「オッケー。あ、それじゃあその動画が投稿されたら個人チャンネルで生配信しても良い? リスナーの皆に慰めて貰わないといけないしさ、ふへへ」
村本はニヤニヤと笑いながら手の親指と人差し指をくっ付けながらお金のポーズを取ってきた。
「はは、そんなの各自の自由だよ。好きに生配信して投げ銭貰って来いよ」
「やった! それじゃあ明日の投げ銭ランキング一位を取れるように明日の配信では頑張って泣いてくるわw」
「せこすぎだろw 一位取れたら焼肉でも奢ってくれよ?」
「はは、もちろん良いに決まってるじゃん」
「お、やったぜ。それじゃ村本が投げ銭ランキング一位を取れるように俺からも援護射撃してやるよ」
「ん? 援護射撃って?」
俺はそう言いながらポケットに入れていたスマホを取り出した。そしてそのまますぐに気軽に呟けるアプリの“トイッター”を起動していった。
―― 皆ごめん、マジでヤバイ大事件が起きちまった……明日の朝に緊急で動画投稿するわ……
「これで良しと」
俺は早速自分のアカウントを使ってそのような仄めかす文章を投稿しておいた。これで明日の朝に動画を見てくれるヤツが大勢いるはずだな。
「んー、どうしたよ? ……って、あぁ、何だよもうトイッターに宣伝してんのか。あはは、秀は仕事早いなー」
「はは、当たり前だろ? 村本が高級焼肉を奢ってくれるっていうんなら俺も本気ださなきゃなんねぇだろ」
「あはは、流石リーダーは仕事出来るなぁ! 超ウスノロな友瀬とは全然違うよな!」
「はは、あんなゴミみたいな男と一緒にすんなよ」
俺達はそう笑い合いながら今日クルスドライブから脱退したアイツの事を馬鹿にし始めていった。
「いやーでも友瀬はマジで仕事遅すぎて酷かったよな。あれで月に50万も貰ってるって絶対に詐欺だよな」
「あぁ、普通に考えてアイツは金貰い過ぎだよな。俺達は動画の出演者として毎日色々と大変だっていうのにさ……それなのにアイツは快適な部屋の中でパソコンをカタカタ打つだけの楽な作業しかしてないってのが本当にムカついたわ」
「いやマジでそれな。俺達が汗水頑張って稼いできた金を何でアイツに取られなきゃいけないんだよ……ってずっと思ってたもん。だから友瀬にクビに出来てマジで良かったわ」
友瀬は本当に無能な男だった。編集しかやってないクセに自分が如何に忙しいのかを毎回力説してくるし、新しいスタッフを雇えと言い出した時には俺もブチギレそうになってしまった。
「はぁ、それにしてもアイツの仕事如きに月50万の価値なんて全然ないっていうのに、それをちゃんと理解出来てない時点でアイツは終わってたよな。自分は仕事が滅茶苦茶出来る優秀な人間だって思いこんでる無能なヤツ程使えないっていうけど……いや、アイツはまさに典型的なそれだったよな」
「あはは、仕事が出来るって思いこんでる無能か、いやまさにアイツの事じゃん! それにしてもアイツ無能のクセに何でいつもあんなに態度がデカかったんだろうな?」
「あぁ、本当にな。しかもアイツは仕事全然しないクセに俺達にはいつも嫌味ばっかり言ってくるしさ。いやマジで何様だよコイツ……っていつも思ってたわ。でももう二度と友瀬と会わないで済むと思うと滅茶苦茶気分良いわ!」
昔は俺達の言う事を黙って聞いてくる普通のヤツだったのに、クルスドライブが人気になっていくにつれて、アイツの態度もどんどんと大きくなっていったんだ。
―― 炎上するような行動は絶対にするな!
―― 企業先やコラボ相手にはちゃんと敬意を払ってくれ!
―― 失礼な発言をするな! そんなの面白くないから!
―― マジで女性問題だけには気を付けろよ!
―― 特に浮気とか不倫とか人様に迷惑をかける事だけ絶対にするなよ!
―― 頼むから炎上だけは絶対にするなよ!!
……などなど、今ざっと思い出しただけでも、アイツが俺達に向けて言ってきた口煩い言葉を簡単に思い出す事が出来てしまった。それくらいに毎日のように言ってきてたんだ、アイツは。
でも俺達は友瀬が心配するような炎上を経験した事は一度もない。何故なら俺達は相当に優秀なウーチューブグループだからだ。アイツはそんな事もわからずにいつも優秀な俺達の事を罵って来ていたんだ。はぁ、全くもって腹立たしい事だな。
「あ、そうだ。そういやアイツがいなくなった事で余った臨時収入の50万はどうするんだ? 特に使い道もないしサクッと三等分するか? それとも何か面白そうな企画にでも使うか?」
「うーん……まぁ特にやりたい企画もないしサクッと三等分するでいいんじゃねぇか?」
「お! やったぜ! それじゃあ早速その臨時収入を使って今からデートに行ってくるわ」
「うん? いやデートって、お前いつの間に彼女作ったんだよ?」
「あぁ、いや実はトイッターのDMに可愛い女の子からDMが来てたからさ、ちょっとその子と遊んでくるわ。いつもなら友瀬のバカに無理矢理止められてたけど、でもアイツももういないし関係ないよな?」
いつもならここで友瀬のバカが“お前らは知名度が高くなってんだからそういう女遊びは極力控えろよ”っていつも言ってきてたよな。
「あぁ、全然良いだろそんくらい。ってか今時はSNS上で知り合った女と遊ぶくらい誰だってやってる事だしな。はぁ、本当にアイツは融通の効かないバカだったな。次の動画編集のスタッフは頭が柔らかいヤツにしようぜ」
「あはは、それ良いな! よし、それじゃあ早速遊びに行ってくるわ!」
「あぁ、わかった。それじゃあ今日のデート楽しんで来いよ、お疲れさん」
「あぁ、ありがとな! それじゃあお先ー!」
そう言って早川は嬉しそうな表情を浮かべながらクルスドライブの撮影スタジオから出て行った。
(……あぁ、やっぱり友瀬をクビにしたのは間違いじゃなかったな!)
満面の笑みを浮かべた早川の顔を見て俺はそう思っていった。やっぱり俺達のグループにはアイツは絶対に要らなかったな。というか仕事もしないクセに口煩いだけの無能だったんだから、もっと早くに辞めさせれば良かったな。
ま、もう二度と会う事もないからどうでもいいんだけどさ、あんなどうしようもない男の事なんて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます