第23話 怒らせたら怖い女性
イナズマダンディーとウインドキッドは、両手を前に伸ばし、稲妻と竜巻を怪人達に放つ。怪人達はそのヒーロー達の繰り出された技の前に、ドンドン倒されて行く。
阿多も怪人達に向かって、レーザーガンを放つ。しかし、てんで見当違いの所に当たってしまう。それから何度も阿多は撃ってみるが、やはり全然怪人には当たらない。阿多は、苛立ちを募らせていた。
「コイツら、強いぞ。恐らくヒーロー達の幹部のヤツだ」
怪人達は、相手が自分達の力より強い事を悟り、慌て出す。
「貴様達、ザコ怪人では荷が重いであろう。どけ! 俺が殺る!」
怪人達の集団の中から、猿の顔をした怪人が前に出て来る。
ウキィと奇声を上げたかと思うと、猿の怪人は疾風の如く、イナズマダンディーの方へと掛けて行く。イナズマダンディーは、猿の怪人に稲妻を放つ。
しかし、猿の怪人は高速の動きでそれを交わし、イナズマダンディーの顔面に蹴りを食らわせる。イナズマダンディーは吹き飛ばされ、地面に倒れる。
「ウキキキ、知っているか? ヒーローども。俺達、怪人にはランクって物があるんだ。その辺にいるのはザコ怪人。つまり、三流の弱い怪人なんだ。だが、俺は違う。俺は幹部候補の怪人。要するに、強いって事だ」
猿の怪人は笑みを浮かべ、イナズマダンディーを見下ろしている。イナズマダンディーは、蹴られた所を押さえながら立ち上がる。
「イナズマダンディー、一斉にあの猿に攻撃を放つぞ!」
ウインドキッドは相手が自分達よりも格上だと悟り、イナズマダンディーと二人掛かりで倒そうと提案する。
二人のヒーローは、両手から稲妻と竜巻を放ち、猿の怪人を倒そうとする。が、動きが速すぎて当たらない。またもや猿の怪人から反撃に遭い、二人は顔面を蹴られる。そして二人のヒーローは、地面に叩き付けられる。
「ウキキキ、この程度か? ヒーローの幹部と言うのは。良いことを教えてやろう。俺は幹部候補だが、俺よりも幹部の怪人はもちろん強い。幹部の怪人は、全部で十人いる。絶望しろ、ヒーローども! これだけの戦力の差があるのだ」
ウインドキッドは、悔しくて小刻みに震えている。幹部の怪人カマキリンと戦った時の記憶が、思い起こされる。
自分達は弱く、敵は強大である。認めたくない事実を再び突き付けられる。
「あんた達、何やってんのよ? いつまでバスの中で待たせるつもり? 遅いと思って見に来てみれば、派手にやられてるし! あんた達、ブチ殺すわよ!」
ウインドキッドは声の主の方へ振り返る。バスで待っていたはずの氷子が、叫んでいる。しびれを切らせ、ここへやって来たのだと、ウインドキッドは悟る。敵よりもヤバい人が来たと、ウインドキッドは恐怖する。
「全員、ブチ殺してやるわ! 覚悟しなさい! いい女を待たせた代償は高く付くわよ」
氷子は腕を交差させ、変身と叫ぶ。全身が光に包まれる。そして、光の中からヒロインが現れる。
氷子はブレストの力を借り、氷を操るヒロイン、アイスギャルへと変身したのであった。
阿多は初めて、アイスギャルというヒロインを目の当たりにする。ショートカットで額の所には、氷の結晶の様な紋章が飾られている。プロテクターを纏っているが、女性らしく胸の辺りは強調されており、ミニスカートを履いている。
この女性が英雄仮面同盟、最強のヒーロー。ただし、キモクサマンを除くか。阿多は期待を込めて、彼女に視線を送る。
「あんた達、早くバスへ行きなさい。コイツら全員、私が凍り付けにしとくから」
アイスギャルはウインドキッド達に横目で告げる。そして、彼女は怪人達の集団を睨み付ける。
「あの猿の怪人、かなりのスピードだ。気を付けて」
ウインドキッドは、そうアイスギャルにそう言うと、イナズマダンディーと共に、阿多達一行と合流する。
猿の怪人が、アイスギャルに攻撃目標を定める。また、目にも止まらぬ速さで突進して来る。が、突然、猿の怪人の足がピタッと止まる。誰かに足を捕まれた、そんな感覚に陥る。猿の怪人は慌てて、自分の足を確かめる。
「足が、凍っている……」
猿の怪人は、地面と自分の足が氷で接着されている事に気付く。しまったと思って、アイスギャルの方を急いで見る。
アイスギャルの周りの地面が、円を描く様に凍っている。猿の怪人は、自分の置かれた状況に焦り出す。まるで、クモの巣に引っ掛かった蝶の様な、そんな感じだ。
足を固定され、動けないでいる猿の怪人に、アイスギャルは氷柱つららの様なニードル状の氷を放つ。猿の怪人はそれを胸で受け、全身を凍らせる。
阿多は逃げながら、横目でアイスギャルの戦いを見ていた。ホントに強い、彼女なら怪人達を、あのブラックハートを倒せるかもしれない、阿多はそう思った。
しかし次の瞬間、ドンという何かが壁に激しく叩き付けられる音が聞こえて来る。阿多達一行は、何が起こったのだと音のした方向を、足を止め確認する。
壁に叩き付けられたのは、アイスギャルだった。阿多は嫌な予感がし、アイスギャルが飛んで来た方角を見る。
「こんな奴では相手にならぬ。キモクサマンはここに来ていないのか? キモクサマンを連れて来い! 俺の方が強いと言う事を証明してやる」
そう、いい放った怪人は竜の頭をしていた。阿多は、ヤバい、強そうな、竜の怪人が出て来たと思った。アイスギャルを吹っ飛ばしたのは、コイツかと阿多は凝視する。
「あら、気が合うわね。私も実はキモクサマンの事を倒したいと思っていたのよ」
アイスギャルは壁に叩き付けられた時に付いた埃を払いながら、ゆっくりと立ち上がる。あなたヒーローでしょ、仲間でしょ、何でキモクサマンを倒したいのよと、阿多は心の中でツッコむ。
「あんな奴が、英雄仮面同盟でナンバーワンだ何て認められない。私がナンバーワンよ! 私はナンバーワンがいいの!」
アイスギャルは竜の怪人を睨む。
「俺もそうだ。カマキリンやゴリクマオトコよりも、下のランクに位置付けられている。奴等が死んだ今、俺の名誉を回復させる為、キモクサマンを倒さねばならぬのだ」
竜の怪人は、アイスギャルに向かって吠えている。
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