第20話 クセ者ぞろいの最強ヒーローチーム
一時間後、阿多は山田と待ち合わせをした、ショッピングモールの広めの駐車場に辿り着く。まだ、山田達は来ていない様だ。
阿多がそわそわして、辺りを見回し待っていると、猛スピードで走って来るマイクロバスが、阿多の前に現れ、急ブレーキを掛ける。
ヤバい運転をするバスだなと阿多がじっと見ていると、そのバスのドアの中から山田が現れた。
「阿多さん、遅くなりました。このバスに乗って下さい。直ぐに敵地に向かいます」
阿多は山田に急かされ、直ぐ様バスに乗り込む。マイクロバスの中は、二十人くらい乗れる様な作りになっている。その席には、間隔を空けて三人の人間が乗っていた。
阿多がバスに乗ると、再びバスは猛スピードで走り出す。阿多は、転げそうになったので、手前の席に捕まり、そのままその席に座る。
阿多は座った席から、先に乗っている仲間のヒーローと思われる人達の事が気になり、じっと観察する。
一番近い所に座っている男は、アフロヘアーでヘッドフォンをしながら、デカイ音で音楽を聴いている。そして、サングラスを着けて、ガムをクチャクチャ言わせている。
絶対、友達になりたくないタイプだ。阿多は、そう思い、次の奥に座っている女の子に視線を向ける。
大人しそうな、もの静かな感じの綺麗な女の子だ。窓の外をじっと見つめている。背も小さく、スレンダーな体型だ。そんな彼女が、ホントに怪人と戦っているのかなと、阿多は不思議に思った。
最後の一番奥に座っている男、いや恐らく高校生くらいの男の子だ。学生服っぽい制服を着て、寝ている。こんな若いのにヒーローなのかと、阿多はまた首をかしげる。
「阿多さん、英雄仮面同盟の特殊部隊の彼等を紹介しときます。一番、手前のアフロ。彼の名前は雷川(らいかわ)。変身すると、稲妻を扱うヒーロー、イナズマダンディーになります」
山田は手前のアフロでサングラスの男を指差し、阿多に説明する。山田はアフロの男のヘッドフォンを外し、阿多を紹介する。
「初めまして、阿多と言います。よろしくお願いします」
阿多はアフロの男、雷川に丁寧に挨拶する。が、雷川は首を横に向け、阿多を完全に無視する。阿多はやっぱり怖い人なのかなと感じ、早くも苦手意識を持つ。
「すいません、阿多さん。こいつ、ダンディーだねってコマメに褒めてやらないと、機嫌が悪くなるんです。雷川、今日もなかなかダンディーだね」
山田は、阿多に説明した後、雷川の方に声を掛ける。
「えーっ、そうっスか! マジっスか! 自分もみんなからダンディーだねって言われるから、そうじゃないかなってウスウス感じてるっス!」
雷川は照れながら、山田にご機嫌で話している。阿多もこれ、決まり事なのと思い、同じ様に褒めてみる。
「雷川さん、初めてお会いしましたが、ホントにダンディーですね。阿多と言います。これから、よろしくお願いします」
「え、阿多さん? なかなか、よく分かってるっスね。よろしくーっス!」
雷川は先程と打って変わって、阿多に対してニコニコしている。
こいつ、ホント面倒くさい。これ、毎回しなきゃいけないのと、阿多は虚ろな表情を浮かべる。
でも、愛する愛花を救出する為、ガマンだと自分に言い聞かせる、健気な阿多がいた……。
次に山田は、その後ろにいる、綺麗な大人しそうな女の子を紹介する。
「彼女は氷子(ひょうこさん)です。変身すると、氷を使うヒロイン、アイスギャルになります。キモクサマンを除けば、彼女がうちで最強になります。私は彼女達に強さの面で、抜かれた形になりました」
山田が、ちょっと悔しそうにそう言うと、クールな美女、氷子はジロリと阿多の方を見る。
「阿多と言います。これから、よろしくお願いします、氷子さん」
阿多は相手が美女なので、少し緊張気味に、こちらにも丁寧に挨拶する。
「私に話し掛けないで。ブチ殺すわよ。ただ殺すんじゃないわよ。ブチ殺すのよ。意味、分かる?」
氷子はただでさえ冷たい視線を、より強めて、阿多を睨んでくる。
「ひいいいい……」
阿多は思わず、悲鳴を上げ、山田に助けを求める。
「彼女、照れ屋さんでツンデレさんなので、気にしないで下さい」
「いや、でも目が本気だよ……」
「大丈夫ですよ。ホントに殺したりしないので。関節技、極められて骨を折った奴と、絞められて失神した奴は居ましたが、実際に殺された奴は、人間ではまだ居ません」
山田は、軽く笑いながら言う。阿多は骨折も、絞め落とされるのも、嫌なんだけどなと思いながら、氷子を再び見る。氷子はまた気にもせず、窓の外を見ている。
「最後に一番奥の奴ですが、名前は星です。ヒーロー名は、スタアボウイと言います。星の形をした武器を使うヒーローです。寝かせといてあげて下さい。起きると、うるさいので……」
山田の説明を受け、阿多は再び、星と言う高校生くらいの男の子を確認する。阿多は、なるほど曲者ぞろいで大変だなと、山田に呟く。
「いえ、キモクサマンに比べれば、三人とも全然カワイイ方ですよ。」
山田は苦笑いを浮かべる。阿多は、自分がキモクサマンに変身した時に、かなり迷惑を掛けていた事を察知し、山田に何度も謝る。
「阿多さん、これを渡して置きます。丸腰では、話になりませんからね」
山田は鞄から銃を取り出し、阿多に手渡す。
「普通の拳銃よりも威力がある、レーザーガンです。弱い怪人なら、一発で倒せます。もちろん、人に当たれば、タダじゃすみませんが……」
阿多は、物騒だからと言って、受け取るのを拒否する。
「キモクサマンのブレストに比べたら、こんなの物騒な内に入らないですよ。それに阿多さん、今から行くのは敵の本拠地ですよ。覚悟してるんですよね?」
阿多は山田に耳打ちされると、無言で頷き、レーザーガンを受け取る。
「すんません、寝ていました!」
一番後ろで寝ていた、高校生くらいの男の子、星が突然、飛び起きる。
「確か、氷子さんに話し掛けていて、殺すわよって言われたんです。それでもお喋りしたかったので、話し掛けていたら、後ろに回られて絞められてから意識が無くなって……。あれ? 山田さん、その方は新人の方ですか?」
阿多は思った……。
すぐ近くに、氷子から被害を受けた者がいた……と。
「あ、僕は星と言います。僕の自己紹介ですか? えーと、年齢は18です。趣味ですか? そうですね、小説とか読むのが好きですね。え、好きな女性のタイプですか? えーと……」
星がマシンガンの様に、阿多に喋りかけたその時……。
「あんまり、うるさいとまた、飛ばすわよ……」
クールなお姉様、氷子様の一言でバスの中は、皆、沈黙し、重い空気が漂った……。
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