第4話クビになる
平岡は出勤率が悪かった。自身の体調が悪いのに加え、1歳の子供が良く熱を出す。
「もしもし、平岡です。今日は昨夜から子供が熱を出したので休みます」
「またぁ、平岡さん、休み過ぎですよ」
「すいません」
と、いうやり取りを何度もしている。勤めて2年目に平岡は精神のバランスを崩して任意入院した。それは、3週間の入院。
退院しても会社に暫くの間休職したいと、会社の責任者に伝えると、
「休職じゃなくて、退職です。平岡さんは、働ける身体じゃありません」
「働かないと苦しいのですが」
「でも、休みが目立つのでここは無理です」
そう、言われた平岡は携帯電話を投げた。
携帯電話は鈍い音を立てて壊れた。
その夜に、嫁さんに事情を話した。
嫁さんは驚いたが、日頃から子供の面倒を見てもらっていた後ろめたさもあり、叱ることは無かった。
「次、見つかるといいね」
「うん。ゴメンね」
それから、2週間後に新しい福祉作業所の面接を受けて見事に合格した。
事務員だった。
福祉作業所と言うより、一般企業の障がい者枠。だから、給料は11万円だった。
ガイドヘルパーの会社の事務員。
そこも、1ヶ月も持たなかった。直ぐにフラッシュバックして休んでしまう。
暫くの間、平岡は家で静養した。
統合失調症とは、人間のもっとも大事な忍耐力を削るのだ。
そして、NPO法人の事務員の仕事を見つけたが、そこも3ヶ月だった。
平岡は自信を無くした。力なく笑いながら子供と接する夫の姿を見た嫁さんは涙が出そうになった。
孤高の人 羽弦トリス @September-0919
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