幕間 楠木家


「ただいまー……」

「おかえりー」


ライトノベルなら一人暮らしだったり、あるいは両親が家を開けがちだったりするのだろうが、生憎そんなことはなく。

普通に家に帰ったらちゃんと挨拶を返してくれる家族がいる。

一応両親とも共働きだったりはするが、今時珍しくもなんともない。

特に今日は休日だし。

ライトノベルでいうなら──って考えるならウチにもそういう概念が居なくもなくもないのだけれど。


「秀吾おかえりー」

「ああ、ただいまーって……俺の部屋で何されてるんで?」

「ゲーム」

「お兄ちゃんのPCなんだけど」

「この家に趣味のパソコン持ってるの秀吾のだけじゃん」


だから貴方様も使っていいとお考えで……?

我が3歳下の妹は誰に似たのかFPSとかにハマってしまったらしく。

時折俺が居ない時や俺が許可した時はこうして俺のパソコンに張り付いてる。


「ん?秀吾……なんかいい事あった?ニヤニヤしてて気持ち悪いぞ?」

「いや……なにも?」


まじか、決して頬を緩めないよう気を引き締めてたのに。

下唇噛んで我慢してたのに。


「阿呆、それが気持ち悪いんじゃ」

「そういうものか」

「そういうものよ」


で?何があったの?と先を急かされる。

マズイな。こういう時は話さないと長引いてめんどくさいんだ。


「女子とメアド交換した」

「……驚いた。いくらしたの?」


?奢った金額のことだろうか。

それなら確か。


「720円?」

「安っ……」

「え?」

「いや……冗談のつもりで言ったのにまさか本当に買ってるとは……レンタル彼女ってやつ……?」

「え、なに。なんで急に虫ケラを見るような目で俺を見るの?」


なんで?えぇ……?

心を読む能力者をここに召喚してやろうか。

はは、言葉にするとすごい人と知り合った気がするや。


「今度いつ会えるかなぁ〜……」


おっと、妹からの視線がゴミを見る目にランクアップしました。

普通に悲しい。

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