第2話 !?!?!?

「ええっと何頼みます?」

「私はじゃあ……」


カフェで2人注文を頼み、しばらく待つ。

互いに目線は絶対合わせないよう、慎重に。

……どうしてこうなったのだっけ。

気まずさで目がおかしくなったわけじゃない限り、目の前には女子が居た。

しかも昨日出会った女子。

あの……能力者?の。

やっぱり何かの間違いじゃないか?

確認のため、なによりこの沈黙に耐えるため。

注文が届くまでの間、俺は今に至るまでを思い返すことにした。



次の日。

土曜日の朝。

俺は1人で昨日のことを思い出していた。

なんだぁ夢か。

そんなわけないもんね。

人の心を読める人間なんていないもんね。

いるわけないんだから。

いやでも夢で女子に対する自分の解像度透けるの嫌だな?

自己嫌悪がすごいですわよ?

俺はコーヒーを片手にTwitt⚪︎rを開く。

いろんな情報が載ってるので実質新聞紙。

なんて優雅……。

優雅だ……優雅な朝だ……。

お、俺の好きなライトノベル作家の新作?

嬉しいなぁいつ発売なんだろうか。

んん???

今日じゃないか?これ。

冷蔵庫に貼ってあるカレンダーを見る。

今日だなこれ。

びっくりだ。

好きな作家って公に言えないじゃん……。

オタクたるものせめて発売日には買わねば。

ほな買いに行かないとならんかぁ。

わくわくだ。



最低限の準備をして、最寄りの本屋に行く。

春。少し羽織っただけなので涼しいくらいだ。

日差しも鋭くなくて気持ちがいい。

本屋に入り、その奥まった場所にライトノベルコーナーがある。

漫画コーナーと併設されている至って普通の場所である。

毎回お世話になってます。

感謝の心は絶やしてはならぬのだ。

今月の新刊が置いてある場所にいき、好きな作家のものを手に取る。

さて、別に目をつけていた本以外も見ておこう。

買うわけじゃなくても見ているだけで後1時間は居れるね。

間違いない。

そうやってニチャアと本を眺めていた時、ふと違和感を感じた。

視線を感じる?

俺は一流の陰キャ。

人からの視線に敏感であり、それが勘違いだったことが殆どない。

眼球運動だけで様子を見る。

俺は油断はしない。

ここで顔を見せる愚かな真似はしないのである。

もし知り合いだった時にそそくさと帰れるようにね!

顔見せなかったら最終的にはあれ見間違えだったかな?ってなるから。

そういうもんだから。

そうして視線を遣る主と目があう。


油断はなかった。

問題は目線があった人間が心を読める能力者だったことである。

いやあれは夢であったことで解決したハズ。

あ、うなずいてくれてる。

だよねー。あれ思い返したら普通に恥ずかしいやり取りしてたもんねー。

じゃあ夢だよなぁ。

見れば彼女は漫画を持っていた。

彼女も買いに来てたのかぁ。

そりゃ同じ高校だもんな、行動圏内が被る可能性はあるよな。

彼女はにこやかに僕から視線を外し、直ぐにある場所に吸い込まれた。

僕の右手?

……あっ。

そこには先ほど買ったライトノベル!

こーれは不味いぞ!?非常に不味い!

……何が不味いかっていうと中身は全然普通の学園ものなんだけど、ちょっと表紙がえっちぃ感じなのである。

慌てて表紙を隠すも時すでに遅し。

彼女ともう一度目が合う。

……。

違うんです。

いや違うも何もないんだけど。

弁明させてください。

ああ待って、養豚場の豚を見るような目で僕を見ないで。

逃げないで、待って待って。

追いかけないと!

俺は彼女の後を追ってレジに並び、彼女が漫画を買った後、小説を買った。

一緒に店を出て、目を合わす。

会話出来ちゃってるなぁ。

目を合わすだけで。

夢じゃ……なかったね。

そっかぁ……。

……。

きっっっっっっっまず。

想像してみてほしい。

休日、うきうきで1人で外に出て、顔見知り程度の女子と出会うことを。

しかも表紙がちょっとえっちぃやつ片手に持った状態で!


「君って、その、混乱してる時、一人称が俺から僕になるよね」


あんさんも混乱してるじゃないか!

確かにそうだけど!

ええっと、その、うーんと。


後から思うのだ。

この日この時、このセリフを吐かなかった場合。

きっと未来は変わったのだろうと。

彼女との物語はいつもそうか。

言葉一つで全然違ったのだろう。

混乱というかなんというか、場に呑まれていたそう言うのがしっくりくる。

じゃないと出てこない。


「どこか、ぇと、そう!少しカフェで休みませんか?」


こんな言葉は。

そして多分──


「???は、はい」


それは向こうも同じなのだろう。

昨日の出来事が夢でなかったこと、完全プライベートな時に出会ってしまったこと。

そのどれもが不意打ちで、まぁ要するに互いに目ん玉グルグルだったのである。

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