第2話 !?!?!?
「ええっと何頼みます?」
「私はじゃあ……」
カフェで2人注文を頼み、しばらく待つ。
互いに目線は絶対合わせないよう、慎重に。
……どうしてこうなったのだっけ。
気まずさで目がおかしくなったわけじゃない限り、目の前には女子が居た。
しかも昨日出会った女子。
あの……能力者?の。
やっぱり何かの間違いじゃないか?
確認のため、なによりこの沈黙に耐えるため。
注文が届くまでの間、俺は今に至るまでを思い返すことにした。
※
次の日。
土曜日の朝。
俺は1人で昨日のことを思い出していた。
なんだぁ夢か。
そんなわけないもんね。
人の心を読める人間なんていないもんね。
いるわけないんだから。
いやでも夢で女子に対する自分の解像度透けるの嫌だな?
自己嫌悪がすごいですわよ?
俺はコーヒーを片手にTwitt⚪︎rを開く。
いろんな情報が載ってるので実質新聞紙。
なんて優雅……。
優雅だ……優雅な朝だ……。
お、俺の好きなライトノベル作家の新作?
嬉しいなぁいつ発売なんだろうか。
んん???
今日じゃないか?これ。
冷蔵庫に貼ってあるカレンダーを見る。
今日だなこれ。
びっくりだ。
好きな作家って公に言えないじゃん……。
オタクたるものせめて発売日には買わねば。
ほな買いに行かないとならんかぁ。
わくわくだ。
※
最低限の準備をして、最寄りの本屋に行く。
春。少し羽織っただけなので涼しいくらいだ。
日差しも鋭くなくて気持ちがいい。
本屋に入り、その奥まった場所にライトノベルコーナーがある。
漫画コーナーと併設されている至って普通の場所である。
毎回お世話になってます。
感謝の心は絶やしてはならぬのだ。
今月の新刊が置いてある場所にいき、好きな作家のものを手に取る。
さて、別に目をつけていた本以外も見ておこう。
買うわけじゃなくても見ているだけで後1時間は居れるね。
間違いない。
そうやってニチャアと本を眺めていた時、ふと違和感を感じた。
視線を感じる?
俺は一流の陰キャ。
人からの視線に敏感であり、それが勘違いだったことが殆どない。
眼球運動だけで様子を見る。
俺は油断はしない。
ここで顔を見せる愚かな真似はしないのである。
もし知り合いだった時にそそくさと帰れるようにね!
顔見せなかったら最終的にはあれ見間違えだったかな?ってなるから。
そういうもんだから。
そうして視線を遣る主と目があう。
油断はなかった。
問題は目線があった人間が心を読める能力者だったことである。
いやあれは夢であったことで解決したハズ。
あ、うなずいてくれてる。
だよねー。あれ思い返したら普通に恥ずかしいやり取りしてたもんねー。
じゃあ夢だよなぁ。
見れば彼女は漫画を持っていた。
彼女も買いに来てたのかぁ。
そりゃ同じ高校だもんな、行動圏内が被る可能性はあるよな。
彼女はにこやかに僕から視線を外し、直ぐにある場所に吸い込まれた。
僕の右手?
……あっ。
そこには先ほど買ったライトノベル!
こーれは不味いぞ!?非常に不味い!
……何が不味いかっていうと中身は全然普通の学園ものなんだけど、ちょっと表紙がえっちぃ感じなのである。
慌てて表紙を隠すも時すでに遅し。
彼女ともう一度目が合う。
……。
違うんです。
いや違うも何もないんだけど。
弁明させてください。
ああ待って、養豚場の豚を見るような目で僕を見ないで。
逃げないで、待って待って。
追いかけないと!
俺は彼女の後を追ってレジに並び、彼女が漫画を買った後、小説を買った。
一緒に店を出て、目を合わす。
会話出来ちゃってるなぁ。
目を合わすだけで。
夢じゃ……なかったね。
そっかぁ……。
……。
きっっっっっっっまず。
想像してみてほしい。
休日、うきうきで1人で外に出て、顔見知り程度の女子と出会うことを。
しかも表紙がちょっとえっちぃやつ片手に持った状態で!
「君って、その、混乱してる時、一人称が俺から僕になるよね」
あんさんも混乱してるじゃないか!
確かにそうだけど!
ええっと、その、うーんと。
後から思うのだ。
この日この時、このセリフを吐かなかった場合。
きっと未来は変わったのだろうと。
彼女との物語はいつもそうか。
言葉一つで全然違ったのだろう。
混乱というかなんというか、場に呑まれていたそう言うのがしっくりくる。
じゃないと出てこない。
「どこか、ぇと、そう!少しカフェで休みませんか?」
こんな言葉は。
そして多分──
「???は、はい」
それは向こうも同じなのだろう。
昨日の出来事が夢でなかったこと、完全プライベートな時に出会ってしまったこと。
そのどれもが不意打ちで、まぁ要するに互いに目ん玉グルグルだったのである。
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