日記
りとの夢日記
2024.1.4
今日も彼は舞台の上だった。
彼はいつも舞台下の皆と目を合わせている。時々、私とふと目が合う。そしてすぐに彼はまた誰かと目を合わせに行く。
私は席を立ち、舞台に上がった。ざわめく観衆を無視して、きょとんとした顔で見つめる彼を思い切り突き飛ばし、両目をアイスピックで抉った。誰かの悲鳴を皮切りに非常ベルが鳴った。
騒ぎが大きくなる前に周囲にガソリンを撒き、火をつけた。一気に火柱が上がり、そこに両目を投げ入れた。
観客は全員避難し、誰もいなくなった。なけなしのスプリンクラーが辺りを濡らした。
目が無くなった彼は手探りで私を探す。傍に来てくれと彼は言う。
血塗れの手で彼に触れた。
「ごめんね」と彼は私を抱きしめた。強い力だった。
どうして貴方が謝るの
僕は君を傷つけたから
違う、傷つけたのは私でしょう?
違わない、僕が君を傷つけたんだ
ーーー火事です。避難してくださいーーー
「逃げた方がいい」アナウンスを聞いた彼は急に私の身体を引き剥がした。
「逃げるわけないでしょう」今度は私から彼を抱きしめた。躊躇っていた彼の腕が、諦めたように私の背中に回る。
「最期くらい嫌いになってほしかった」
「ならないよ、僕を愛してくれてありがとう」
そんなこと、と言いかけて突然意識が遠のいた。声を出そうとして息を吸うと胸が焼け焦げたように熱い。
最期に、伝えたかった言葉があったのにな。
やっぱり私たち、ちょっとのろいね。
日記 りとの夢日記 @rito_yumenikki
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