第7話







 紗季さんや紗枝と初めて会い、俺の初陣が決まってから一ヶ月がたった。

 その間、俺は自分自身の鍛錬以外は紗枝と遊ぶことに重点を置いていた。


「にいさまこいこいです」


「ほう、猪鹿蝶でこいこいか」


 まあ、遊びと言ってもこんな感じで花札やったり、羽子板で遊んだりして昔ながらの遊びをやっている。他にも、チェスなんかをやったりもするが、基本的にボードゲームやカードゲームばかりでテレビゲームのようなものはやらない。

 テレビとかはあるし、アニメもやっていたりもするが、転生してからというもの剣術や霊術に夢中でたまに気に入ったアニメとかを見るくらいにしか使わない。


「これで三光。こいこいだ」


「むぅ、にいさまちょうしにのらないでください」


 あとは、紗枝を鍛える感じで霊術で遊んだらもする。別に上位の強力な術を使わずとも、水球を出すだけの術で霊力をうまく操作することで、鳳凰や龍の形にしたり、鱗まで細かく再現した魚を空に浮かばせたりするだけでも良い鍛錬になる。


「お、花見で一杯だ。どうする?」


「むきゅうにいさまなさけはむようです。ひとおもいにやってくだしゃい」


「じゃあ、上がりだ」


「うう、またまけました」


 ちなみに、花札などの遊びでの勝率はある程度ブレはあるが、俺が六から七割、紗枝が三から四割と言ったところだ。


「そろそろいい時間だし、オヤツでも食べて休憩しよう。美雪、何か食べ物持ってきてくれないか」


「かしこまりました」


 なお、美雪も紗枝と遊ぶ事は多いが、俺が手を抜く訳ではないが、紗枝に合わせるように遊ぶ反面、美雪は手加減一切なしでやるので、紗枝はむくれる事が多い。まあ、本人は「てかげんなしなのはそれはそれでうれしいです。いつかぼこぼこにしてやります」と言っている。いつになることやら。


「ところで紗枝。家にはもう慣れたか?」


「はいみなさんやさしくしてくださいます。みゆきねえさまはようしゃないです」


「なら良いが......」


 てか、美雪の奴いつの間に紗枝に姉様呼びさせてたんだ?

 それはそうと、初陣まであと二ヶ月。なんとかして壁を破らないとな。まあ、破ろうとして破れるなら苦労はしないが、紗季さんと紗枝の話を聞いた時、この世界がいかに危険なのかを知ったからな。ましてや、家はその最前線。可能な限り強くならないと守りたいモノどころか自分の身さえ守れない。


 そんなことを思っていると、紗枝が俺の膝に乗ってきた。


「にいさま、にいさまがなにをかんがえているのかはわかりませんがなやむくらいならそうだんするべきです。それにみゆきねえさまにばれたらおせっきょうなのです」


「ははっ、それは怖いな」


 まあ、確かにいつまでも一人で悩んでいると美雪に説教されそうだしなぁ。


「若様、紗枝様。軽食をお持ちしました。今日はどら焼きです」


「あまいのすきです!たべます!」


「ああ、ありがとう。置いておいてくれ」


 とりあえず、今日この後、自分を限界まで追い込んでみよう。それでダメなら父さん達や美雪に相談だな。

 

「あっ、紗枝!俺の分まで食べようとするな!」


「はやいものがちなのです」


 なんとか半個は確保した。



_______________________________________________________





 さて、紗枝にどら焼きを奪われて半個しか食べられなかった俺だが、今は訓練場に一人でいる。紗枝は美雪に頼んで部屋で霊術関係を教えてもらっている。

 父さん達は家にいるし、訓練場に一人ぐらいいるかと思ったが、最近増えた妖関係の仕事を分家や我家の下についている退魔師の家系、我家所属の退魔師達に渡しているみたいだ。

 ん?分家や下についている家はともかく所属の退魔師は何って?まあ、簡単に言えば家が経営してる会社で民間から雇った感じかな。退魔師の家系でなくても霊力が多かったり、神から加護を得ていたりする人もいる。そんな人達を雇って鍛えてる感じ。

 当然、国が直接管理している組合的なのもあるけど、明治維新だの民主主義化だので何度も政府が変わっている中、退魔師の中でも名家扱いされる歴史ある家は影響を受けても倒れたりしないから、就職先的には信頼されている。あと、仲介料で一定数貰うけど暴利じゃないし、保険とかも充実してるからね。国はそこらへん分かってないのよ、ホント。

 

 それに、退魔師ってそれなりにまともな人格してれば、後は絶対的に実力主義だから権力握ってる老害的なのがほとんどいない。いても若いのに下剋上されたり、自分家で似たの出てきたらたまったものじゃないって思考の他家が潰しにかかる。

 そんな感じで、国所属もいれば退魔師の家系に所属して居るのもいる。

 

 まあ、家所属も最初は国所属でそこから家に行くって言う格好だけはとっているから衝突とかはあんまりない。そもそも退魔師って人手不足だし、現実見えずに衝突し合ってんのは変な選民主義に染まった馬鹿とか利権クレクレ言ってる無能政治家を除けば、せいぜい中の三程度の家から見れば雑兵扱いされる奴らだけみたいだし。

 あと、本家より格の落ちる分家で才能無し認定された人たちも、肉体鍛えまくって死線を乗り越えてるから、能力的に中の三でも現実見えてない馬鹿と比べたらピンとキリレベルで違うからね。それに根本的に家所属は家の格とか抜きに、表に出ない悲惨なものも含めて正しい歴史を学んでるから覚悟が違う。

 正直、今の九段階評価は実力を分けきれてない気がするね。


「ま、んなこと考えてもしょうがない。年齢的にも実力的にもまだまだだからなぁ。でも、何千年も続いている割に驚くほど腐敗が少ないのなんでだろ?風通しもめっちゃいいみたいだし」


 あーあー、前世小市民の俺がんなこと考えて答え出るわけねーのよ。

 とりあえず自分を鍛える、話はそれからだな。







________________________________________________________



 ちな、引退退魔師が町で道場開いて若いのを鍛えてたりもする。

 

 下についている家は、本家扱いされてるところの当主が最高上の三で実力的にいささか頼りなく、他家や国からの攻撃を避け独立性を保つ為や、もしもの時に支援して貰うために下についている感じです。


 悲惨な歴史。

 例:平安の世、百鬼夜行同時発生により京の都半壊、他大規模な街が更地化など。

 例二:大蚯蚓や大鯰による大地震、それに伴う大噴火など。

 他にも疫病や巨大台風。季節外れの大雪、猛暑。妖の特性に合わせた世界改変など。

 



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界転生したら退魔師になってた〜なんかゲームの世界みたいだけど何にも知りません〜 龍流延焔 @ryuryuenen

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ