第5話





 と言うことで、今日話す内容が決まった。

 父さんがどちらから話すのかと思っていると、父さんが話し始めた。


「まずは、蒼夜も気になっているであろう二人のことから話そう」


「わかりました」


 俺としてもそちらの方がありがたい。


「まず、彼女の名前は天山紗季てんざんさきと言う。娘の方は天山紗枝てんざんさえと言う名前だ。彼女達は天峰家分家である天山家の者で、紗季は天山家現当主の姉に当たる」


 へえ、分家があるのは効いていたけど本当に質がいいみたいだな。紗季さんも紗枝ちゃんも霊力の量・質ともに高水準。制御力や操作力もしっかり鍛錬を積んでいるようだ。


「ちなみに蒼夜、紗季はお前の義母にあたり、紗枝はお前の腹違いの妹になるぞ」


「......は?」


 ちょっと待て...という事は......


「父さん......浮気したので?」


 思わずそう聞いていた。


「ぶっ!?そ、そんなわけ無いだろう!側室だ側室!そもそも唯と紗季も学生時代から仲がいいしな!あと、浮気なぞしようものなら唯にどんな目に遭わされるかわかったものではない!!」


「......あなた?」


「ヒッ!」


 そう言えばこの世界一夫多妻だった。まあ、金銭面や本人同士の意思など。クリアしないといけない問題もあるが、退魔師の家系は基本的に一夫多妻で血が途切れないようにしているんだったな。

 それと、父さんは母さんの尻に敷かれているようだ。どうやらこちらの世界でも家庭は女性が強い方が円滑に行くのだろうか?いや、そうでもないか?


 ま、そんなことは置いておこう。


「それで、父さん。父さんが浮気してないってことはわかったし、紗希さんが義母で紗枝ちゃんが妹っていうのも分かったけど。それなら何で今になって来たの?別に病院に入院してたとかではないんでしょ?」


「う、うむ。まあ、話すと少し長くなってしまうが、先に言っておくと病院に入院したりオレの意思で今日まで外に置いておいたわけではないと理解して欲しい」


「わかった」


「それでは話そう。まず、紗季の父親。先代の天山家当主は分家の中でも強かった。上の一の実力は確実にあったからな。だが、今から五年ほど前、お前が生まれる少し前に彼は死んでしまったんだ」


「何故?」


 退魔師の格は九段階に分かれている。

 まず、大きく上中下の三段階に分かれ。更にそこから一つの段階が一二三に分かれる。この場合下の三が最も弱く、上の一が最も強い。(正確にはその上もある)

 つまり、先代の天山家当主は九段階の格の中では最も強い格だったわけだ。


「理由はしっかりとある。お前も授業で習ったり資料を読んで知っているだろうが、この世界の妖や神は本当に多種多様だ。中には星海の果てから来た邪神やその眷属、魔界と呼ばれる世界に住む魔神や妖。他にも酒呑童子や玉藻前のような有名な妖や、名こそそこまで知られていないが、それらと同格の妖もいる」


「でもそれらは封印されていたり、この世界の神々に見張られているんじゃないの?」


 確かそのはず、玉藻前や鵺など直接封印されたり、倒された後、復活出来ぬよう封印したりしたはずだ。


「ああ、だが平和が続けばそのより返がくる。最近各地で妖の封印が解けたり、魔界との通路が繋がって魔界の中でも人に害意や敵意を持った妖がこちらの世界に来ているのだ。今の所特別強くはないが、それでも稀に上の三以上の妖が封印から逃れたりこちらの世界に来たりする。そしてここ数年、それが酷くなっているんだ」


 Oh, Jesus !

 マジかよ!転生して危険な世界だなって思ったけど、ちょうどドンピシャで一番ヤバい時代って......はあ、それは後にしよう。父さんの話の続きを聞かないとだし。


「それで、それらの妖のせいで先代の天山家当主さんが死んでしまったの?」


「その通りだ。その後紗季の弟が当主を継いだが少し若くてな。走り回ってたんだよ。そんな時紗枝ができた」


 なるほど、クソ大変な時期にやることはやっていたと......


「それで?」


「問題は紗枝が生まれた後でな。蒼夜、特殊体質は知っているな?」


「そりゃ勿論」


 特殊体質。霊体などとも呼ばれているが、要するに他の人と比べて特定の霊術の威力が強いとか、肉体強度が段違いとか、霊力への親和性が高く最初から手足のように操作・制御できるとか。他人と比べて強くなりやすい体質の人のことを指す。


「その特殊体質の中に一際強いが、その代わりに妖を呼び寄せてしまう体質があるのを知っているか?」


「あ、ああ、匂いだか霊力の質だか知らないけど、本能しかない妖や人に敵対的な妖が血眼になって襲うって聞いた。あとは一部の邪神の信者や犯罪組織が実験目的で探したりとかも」


「そうだ、そして紗枝の生まれ持った体質がそれだったんだ。当時はかなり混乱していてな、紗枝が生まれてから天山家関連がひと段落するまでは風水・地脈を計算した上で隠蔽など様々な結界の貼られた地で大量の護衛で守りながら生活して貰ってたんだ」


 なるほど、家に連れてこればとも思ったけど、それはそれで何か事情があったんだろうし仕方ないか。


「それじゃあ、今こうして連れて来たってことは天山家のゴタゴタは落ち着いたってことでいいの?」


「ああ、一先ずは落ち着いた。完全では無いし、これから細かい調整はいるが、問題のない範囲だな。と言うわけだ蒼夜。これから彼女達と仲良くしてくれるか?」


 まあ、ちょうど弟が妹欲しかったし、見た感じ紗季さんも紗枝ちゃんも仲良く出来そうだから問題ないだろ。


「もちろん。ちょうど兄妹が欲しかったからね。これから楽しみだよ」


 こんな可愛い妹なら大歓迎だ。




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