武勇伝3

俺は剣から手を離し、彼の拳に俺の拳を打ち付ける。

骨がポキポキ、と音を鳴らし、彼が痛そうな顔をした。その腹に、グーパンを決めてやった。


そして彼の髪を掴む。


「君は、なぜこんなことをしたのかなぁ。君は冒険者として稼げるはずだ。傭兵としても稼げるはずだ。こんな盗賊の事をしてなんの意味がある」



そうすると、男は長くなるけどすまないね、と言って語り始めた。

「俺はそこの二人と同様に、冒険者をやっていたんだ。そこではある程度稼いでいたさ。

だが、俺はそこの二人もあわせて10ででパーティーを組んでいた。その10人で強大な魔物を倒しに行ったんだ。そこにいるのは一匹と言われていた。だが実際は3匹もいたんだ。

俺らはなんとか倒したが、俺とそこの二人以外は死んでしまった。それはとてつもなく怖かった。

人間において死ぬのは当たり前だとしても、いざ自分の仲間が、死んでいるんだぜ。言葉を発さないんだぜ。だが、ひどいのはこれからだった。俺が冒険者ギルドに戻り報告すると、他の冒険者は口々に俺らを褒めたたえた。もちろん、彼らは死んでしまった者への最大限の敬意を表して言ったのだろう。だが、俺等3人は人間に対して失望してしまったのだよ。俺らは人間なのに、魔物を倒す駒だと見られてるんだぜ。それから冒険者もやめて、三人とも無職だった。しばらくは金があったから生きていけてたが、金がなくなったから盗賊をやった。 僕はね、冒険者にはもうなれないんだよ。魔物を見ると、仲間が死んでしまったのをフラッシュバックしてしまうからだそして俺は傭兵になんてなれやしないさ。 あのとき、人間に失望してしまったからね。だが、盗賊になったからって、矜持くらいはあったさ、人殺しをせず、しかも事前に家を調べて、裕福そうなところから金を奪っていたんだ。そんなの言い訳でもなんでもないけどね」 

長い、長い彼の独白は、とても興味深く、そして悲しかった。

だが、罰は罰だ。俺は剣を引き抜いて言う。

「君たちには騎士団の詰め所に来てもらう」





俺は彼らを縛り、担いで騎士団の詰め所に来た。騎士団の詰め所の内部に向かうと、一人の青年がいた。

「すみません、盗賊捕まえたんすけど、どうすればいいですか」

「盗賊を捕まえた?何を言ってるんだ。我々でも捕まえてないんだぞ、冗談を言うのも━━」

そして、外で縄で縛り付けている姿を見て、驚いていた。

「盗賊の調査表で見た顔だ。もしかしてほんとにお前が!?」

何しとるんじゃ盗賊たちよ。顔がバレてるんじゃあ盗賊なんて向いてないぞと思いながらも俺は大事なことを口にする。

「こいつは賞金首だろ、金くれよ、金」

俺は悪人のような声音で、金をせびった。

そうしたら青年が三人の盗賊を回収して騎士団の詰め所に戻っていった。そして、偉そうな爺さんが現れた。

「儂はじゃ。この騎士団の長をしておる。なかなか盗賊が捕まられず、苛々していたところだったのだが、子供が捕まえたと聞いての。捕縛者を見たところ本当だったから、信じておったが、本当に子供じゃったとはな」

「そんなのは良いんだ。大事なのは俺が子供だからってことじゃあない。金だ。賞金首だろ?どれくらいの金額が貰えるのかなぁ」

「金にがめつい子供じゃのう。勿論、大量の金貨がかかっておるぞ。だが、お前さんの名前を聞かなきゃならん。教えてくれ。これは身分証明みたいなもんだ。別に深い意味はない。とはいっても、盗賊三人を倒した子供の名前は興味があるがな。」

かっこいい状況が来た!!

こんなときに答えるセリフは一つだって決まってる。

「やがて世界に名を轟かせる者さ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る