相棒

  剣を買うという名目で金を貰ったのに、剣を買わないのも良くない気がするので、剣を買いに行くことにした。


━━武器屋。

 俺は剣を買いに来たのだが、そこには斧や杖など、元いた世界では見たこともない物が陳列されており、嬉しくなる。

 そうして目を輝かせて見ていると、店主らしきおっさんに話しかけられた。

 「もしかしてジョン様っすか?」

「は、はいそうっすけど」

なんだろう。問いかけようとする前には言った。

「7歳で盗賊を3人も捕まえたんだんですってね!すごいっすね!」

どうやら俺が盗賊を捕まえたのを知っているようだ。褒められて悪い気分はしない。

「ありがとうございます」

ここで謙遜するのは盗賊だった彼らに対する冒涜である気がした。彼ら強かったし。

「いい剣教えてくれないですか?」

俺は剣の善し悪しがわからない。剣は毎日振っていたが剣の見聞き初心者なのだ。すると、

「この剣がいいっすよ!」

そう言って陳列されている中から一つの剣を選んでみせた。 

その剣は折れにくく美しい日本刀のようだった。(日本刀ではなかった。もどきだった。)


かっこいいいいいい!


歴史好きならわかるだろう。いや、歴史好きじゃなくてもわかるだろう。日本刀の美しさを。かっこよさを。それが日本刀もどきであっても。


「買います、いくら?」


「本来なら80銀貨(80万円)だが、盗賊を捕まえた将来有望な御方ですからな。70銀貨(70万円)でいっすよ」

 安い、と思った。

これを使いこなすことができればモテモテになるだろう!

「ありがとうございます。買います。」

そう言って、日本刀もどきを手に入れた。



俺は知っている。

一流は、使うものさえ一流品であると。物語に出てくるヒーローは、かっこいい剣をを用いるだろう。かっこいい盾を用いるだろう。かっこいい戦闘服を用いるだろう。

俺は、その真似をするためだけに日本刀もどきを買ったのだ。モテモテになるために。

だから、とことんやろう。

真似るなら、とことんやろう。

よって、俺はこの日本刀もどきを、"相棒"と呼ぶことにした。

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