ミッション3

ミッション3



「すべては? 上層部の? ……北天騎士の上層連中が仕組んだ事柄なら何故将軍がいない?」


「し、しまっ……」


 リースの突き刺さる言葉に、インディはあからさまに表情を変え慌てて口を噤んだ。



「ーーふむ。それ程までに言いたくないと?」


 インディの胸中を顔色で読み取ったリースは、溜め息混じりに拳銃を懐に収めた。



「……まぁ、大方の見当はつく」

 と、言いつつリースは足を退かす。

「この事柄……、貴公の独断で招いたのだろう。上層部には内密裏に、どこかの騎士軍と接触を図ったのではないか?」




「ー…ッ! な、何故その事を?!」

「……どういう事かな?」


「あっ? ……い、いや! 何でもないッ!」


 リースの低い呟きにインディは顔を赤くし言葉を濁した。




「ーー貴公等は、退いた方が良さそうだが?」


 薄く笑いリースはインディにそう告げる。




「わ、分かっている! ただ、私からも質問がある!」


 体勢を立て直しインディは捲し立てるようにリースに聞く。




「ーー何でしょう?」


「お前は……、何者なのだ?」



「それはいずれ分かりますよ」


 リースは笑顔で答えた。


 それを聞いたインディは、まだ何か聞き出しそうな雰囲気のまま、兵士等を引き上げさせ自らも姿を消した。






「……危ない所だったな」


 リースはホルスに向かって声を投げかけた。



「ああ! お前が来てくれて助かったよ」


 ホルスは彼に近寄り、親しげに肩を軽くたたいた。




「……ホルス~、その人誰なの~?」


 間延びした声で聞くのは、ホルスと同じくSD隊員のノヴァ・ヂュアリ。後の二人は女性で、それぞれセイラ・アルディーンとサリア・ティルミットと名乗った。




「え? ああ、コイツは……」

「……リース・ブランズです。今日からSD隊長を務めます」


 ホルスの言葉を遮り、リースは皆に軍敬礼をする。その言葉を聞いてセイラとノヴァ、サリアは一瞬だけ呆気に取られたような表情をしていたがすぐに姿勢を正し、


「宜しくお願いします!」


 三者三様、リースに軍敬礼を返した。



「ー…にしても、お前丁度良いタイミングで現れたな!」


「起き掛けに、大将補佐のご命令だったんでね」


 と、面倒臭そうに言うリース。


「ハァ。ま、お前らしいわ」



 一通りの挨拶を終え、リースを含めたSD等は、世間話を始める。特にホルスとリースは同期らしく、寮の部屋も隣同士だったらしい。



「ーーそろそろ戻らなくて?」


 会話に花咲く、二人に呆れつつセイラは彼等を促した。






 ――SD等がその身を置く拠点は、ルーンヴァレイ公国のヴァレスティア市にある。ミッド連合第一・第二支部は、SDはもちろんのことSDの補佐を務めるSDAもまたここに身を置いている。



 ダルイレム国、ハイツベッカー領土のハルツカ北天騎士第三部隊との交戦から二日余り――北天騎士等からはまだ何の動きも無く、SDとしては痺れを切らす頃、情報部からの一報でSD隊員は活動を再開する。



「ーー情報部からは、先日接触した北天騎士第三部隊の兵長アンドリアン・インディは交戦後すぐに惨殺されたとの報告が上がっています」


 ミッド連合第一支部の作戦会議室。数十人いるSD隊員等は、あてがわれた席に座りある隊員の報告を聞いていた。

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