第74話 お花見。
「ぷはっ。日曜昼間のビールは美味いっ!!」
「姉ちゃん、あんま飲みすぎんなよ。歩きなんだから」
「まあ拓斗、今日くらいいいじゃない。桃姉が日曜日の昼間にビール飲めるとかありえないんだし」
公園に咲く桜を眺めながら3人でお花見。
3月の終わりなので桜は綺麗に咲いているわけだが、社会人にとっての3月の末は本来忙しい。
故に見頃である桜を見に来た一般人も少なく、家族連れもいるにはいるが場所取りをするほどではなかった。
「大人ってお酒好きだよね。桃姉はなんでそんなに好きなの?」
「う〜ん……わかんない」
「味自体はジュースの方が普通に美味いって常連のおっさんが俺に言ってきたけど、そう言いつつ美味そうに飲んでたな」
「お酒はね、味とかじゃないんだよ〜。味とかいう概念とか知らないっ」
「まあ、桃姉が満面の笑みならいいんじゃない? たぶん」
シスコン弟である俺としては姉が
数々のエロゲ・エロ漫画を見てきた俺には泥酔した姉ちゃんにあんな事やこんな事をしてくる
普段はそこそこしっかりしている姉ちゃんだが、お酒を飲むとアホになる。
なんというか、知能指数が下がるのだ。
そもそもアルコールは脳機能を低下させるわけなのでそりゃそうなるわけなのだが、姉ちゃんが他の男に寝取られるとか想像したら全世界の男を殺害しようとする可能性すらある。
姉ちゃんの胸を見た男は目玉を
……まあ、実際にやったら俺が犯罪者になって姉ちゃんに更なる迷惑をかけることになるのでしないが、世紀末な世の中の法も秩序もなくなってしまったような世界になったらどんなことをしてでも姉ちゃんを護らなければならないだろう。
生まれる世界が違ったなら俺は魔王とかになってたまである。
「よいしょっと」
「椎名ずるいぞ」
「ふふん。羨ましいでしょ?」
「空が青いね〜」
姉ちゃんが不意に女の子座りをしている椎名の太ももを枕にしてねっころんだ。
ドヤ顔する椎名に苛立ちを感じつつ、それでも幸せそうに微笑む姉ちゃんは天使だった。
しかしこうして見ると美人姉妹のゆるゆりであるとも見れなくはない。
椎名も胸が小さい以外は普通に美人なわけで。
世の中には「美人は3日で飽きる。ブスは3日で慣れる」とは言うが、姉ちゃんはいつ見ても可愛いし綺麗だと思うが椎名についてはいつ以下なる時に見ても基本的になんも思わない。
少なくとも椎名をブスだと思ったことはないのだが、やはりどうしようもない
医者も投げ出すほどには手遅れなんだろうな、俺。
「ぬ?」
姉ちゃんのおでこに桜の花びらが舞い落ちてきた。
お酒が入ってハッピータイムな姉ちゃんのちょっとアホな反応に萌えつつ俺はスマホを取り出した。
桜をバックにしたふたりの姿はやはり絵になる。
「拓斗、写真チェック」
「あ、はい」
「……だめ。撮り直し」
「リテイクですか」
「椎名ちゃんがちょっとだけ半目になってる」
「ちゃんと可愛く撮ってよね」
「は、はい」
椎名さん、怖いです。
前髪いじりながら「ちゃんと盛れないと困る」とぼやきつつカメラ目線。
「おお〜椎名ちゃん可愛い」
「桃姉も可愛いわよ」
「ありがと〜」
なんというか、ここ数年で1番穏やかな時間だと感じた。
父さんと母さんが死んでからは、なんとなくいつもどこか
予定を合わせて海に行ったりはしたけど、精一杯楽しもうと予定を詰め込んだりしていた。
けど今日は思い付いた予定のままに過ごしているだけであり、まったりとした空気感に開放的なお花見である。
こういうのもいいものだ。
「今度は3人で撮ろうよ」
「あたしが撮るわ。拓斗は下手」
「椎名が鬼すぎる……」
糸目な姉ちゃんが座り直して姉ちゃんと椎名の間に入るように
「桃姉、もうちょい真ん中に寄って」
「おっけ」
「拓斗、顔が面白くない」
「俺だけディレクションおかしくない?」
「ほら、タクも笑顔笑顔」
「はいお姉様」
「拓斗、また鼻の下伸ばしてる。シスコンめ」
「当たり前だろう」
「開き直んなっ!」
右には酔っ払った姉ちゃんが密着してさらに胸も押し当てられている状況なのだ。
シスコンなら当然の反応と言えるだろう。
椎名も俺の肩に手を回して画角に入るようにと密着してくるので人口密度が瞬間的に上がっている。
「まあそこそこね」
「流石は椎名ちゃん〜」
どうやら椎名先生もご満悦の1枚だったようで、3人のグループメッセに貼られていた。
この写真だけを客観的に見たら、ただ仲のいい3人きょうだいである。
この場合の漢字表記なら
椎名なら姉妹弟でしょとか言いそうなので何も言わないでいるが、余計なことを考えずに見てもいい写真だと思った。
後で待ち受けにしよう。
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