第72話 シスコン弟vsシスコン義妹
「引っ越しだから、もう少し掛かると思ってたが……」
「終わっちゃったね」
「3人でやるとあっさりね」
引っ越しの前日の土曜日。
椎名にも手伝ってもらって姉ちゃんの引っ越しに
当初はざっくり1日かかると見込んでの予定だったが、思いのほかあっさり準備ができてしまった。
姉ちゃんが用意した軽自動車に積めるくらいの量しかなく、ベッドなどは大枠を俺が1度解体して新居で組み直したりしたのもあり、車で2往復で済んでしまった。
家電製品などは会社が備え付けで用意していたこともあり、大きな出費などもあまりない。
強いて言うなら車を購入したくらいだ。
まあ、車は移動手段としては必須な立地ではあったので必要経費だろう。
「でも明日までは姉ちゃん、ここにいるんだろ?」
「うん。部屋は入れるけど、ライフライン全部通せるのが平日になっちゃうから」
「ベッドも向こうに持ってっちゃったけど、今日はどうするの? 桃姉」
「俺のベッドで一緒に眠る」
「いやいや拓斗。ここは普通あたしの部屋でしょ!!」
「いやいやいや!!」
「いやいやいやいやっ!!」
椎名が頭おかしい事を言ってやがる。
何のために土日のバイトを休みにしたと思ってるんだよ?
姉ちゃんとイチャコラしたいがために休み入れてんだよ。
なんで椎名の部屋に姉ちゃん泊めなきゃいけないんだよ絶対やだね。
「じゃ、じゃあ今日は3人で寝よっか。川の字になって」
「いやいや姉ちゃん、それはないぜ」
「何言ってんのよ拓斗。拓斗は家族だからまだいいかもだけど、あたしからしたらこれで疎遠になる可能性だってゼロじゃないのよ? 人生何があるかわからないんだから」
「おい勝手に変なフラグ建てんな」
「あ、あの」
「フラグ建ててるわけじゃないわよ。ただせめて後悔無いようにしとかないと寂しいじゃん」
「安心しろ椎名。お前なら化けてでも姉ちゃんに逢いに行くだろうさ」
「シスコンの拓斗には言われたくないわよ」
「シスコンの義妹に言われたくないね」
「ちょ、ちょとわたしの話も……」
「というわけでやはり姉ちゃんは俺の部屋で寝るということで」
「なにが「というわけで」よ?! 全然話まとまってないでしょ?! こんな性欲魔人と夜を過ごしたら桃姉が疲れ果てて事故っちゃうでしょ?! 絶対駄目よ!!」
「残念でした〜。むしろ俺の方が生命力吸われてるレベルだし。姉ちゃんいつも終わった後とかツヤツヤだし!!」
「ツヤツヤなのは拓斗の脂でもべっとり着いてるからでしよ?!」
「……は、恥ずかしいんだけどぉ……」
「とにかく姉ちゃんは俺の部屋で寝るんだよ。これは決定事項。弟である俺の特権だ」
「あたしだって実質妹みたいなもんだし!!」
お互いにゼーハーしながら至近距離での言い合い。
だが俺も椎名もやはり1歩も引かない。引けない。
こと姉ちゃんに関して俺は基本的に譲らない。
これまで姉ちゃんがレンタカーを借りて3人ど遊びに行っていたりした時も俺はどんな時も助手席に座っていた。
より姉ちゃんの傍に。
なんならそれで死んでもいい。
シスコンとはそういう生き物なのである。
姉ちゃんの為なら大事に取っておいたショートケーキの苺すら俺は葛藤する間もなく姉ちゃんに献上する。
姉ちゃんの為なら臓器のひとつふたつくれてやる。
「や、やっぱり今日は3人で寝よ? 3人仲良くね?」
「それは……」
そんなことしたら姉ちゃんとえっちできないだろうが……
椎名があっさり眠るわけはない。
椎名が目と鼻の先にいるのに姉ちゃんとそんなことができるほど俺は性欲魔人ではない。
…………でもそのシチュエーション想像したらなんか興奮しなくもないな。
姉ちゃんが「……タクッ!! し、椎名ちゃんがすぐそこに居るんだよっ?! ……」って小声になりながらなしくずし的にフィーバータイム突入とかいいかもしれん。
エロゲシチュエーション最高だなおい。
「拓斗の手足を縛るなら川の字は賛成。絶対あたしが寝た瞬間に桃姉が襲われる」
「当たり前だろう」
「なに全肯定してんのよ?!」
「俺はしょうもない嘘なんて付かない」
「なにそのゲスい清々しさ!!」
「目の前に姉ちゃんが寝てて襲わないとかむしろ失礼だろ。姉ちゃんに恥をかかせるわけないだろ俺が?」
「そろそろ拓斗は犯罪歴必要なレベルよ?」
「問題ない。なんならこの間なんて姉ちゃんから」
「わー! わー! わーッ!!」
いかんな。
ついついヒートアップしてしまった。
姉ちゃんが顔を真っ赤にしてかき消している姿は可愛い最高。
だが姉ちゃんとのあれこれを高らかに話す性癖は俺も持ち合わせてはいない。
「と、とにかくっ!! 今日は3人で眠る!! 3人で手を繋いで眠ろうね!!」
「なにそれ保育園児みたいで可愛いな賛成」
「ほんっとあんたってシスコンよね?!」
「褒めてくれてありがとう」
「褒めてないからっ!!」
保育士姉ちゃん世界線いいな。
ショタになって「ぼく、おおきくなったらお姉ちゃんとけっこんする!!」とか無邪気に言って困らせたい……
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