第54話 キスの合間。

 喧嘩の仲裁で姉ちゃんとの熱い夜を過ごせなかった、はずの夜遅く。

 深夜とも言う時間に俺の眠るベッドにゴソゴソと入ってくる謎のぬくもり。

 女の子の香りが眠たい頭に心地よかった。

 眠気ではっきりしない意識でも、それが姉ちゃんであることを理解してそのまま抱き締めた。


 女の子特有の細い体付きと程よい肉付きは抱き心地がよく、新年の寒さにはほどよい人肌の熱だった。


「……タク、起きてる?」

「…………ね、てる…………」

「寝てるわりにしっかり胸揉まれてるんだけど……」

「……どおりで、もみごこちが……いいわけだ」


 これはあれか、夜這いか。

 いや、でも本来の夜這いって意味が違ったような……?

 でもそのまま姉ちゃんを抱き枕にして眠るもの一興であるな。


「……まさか、姉ちゃんから夜這いして……くるとは……」

「よ、よ、夜這いとかじゃないよっ?! 寒いからタクのベッドでぬくぬくしたいなぁぁあと思って?!」


 猛烈に眠い。しかし下半身は元気になっている。

 途切れ途切れの言葉は思考回路が眠気で鈍り切っている故だが、こうして眠気に苛まれながら姉ちゃんとベッドでイチャイチャするのもいいものだ。

 眠る前まであんなに残念がっていたのになぁ……。人類は未だ睡眠欲には抗えないのである。


「よし。姉ちゃんも俺と一緒に安らかに眠ろう」

「永眠しようとしてる?」

「幸せな最期だった」

「待ってかないで?!」


 姉ちゃんを抱き寄せ、姉ちゃんの背中に顔をうずめて暖を取る。

 抱き枕湯たんぽが最高の寝心地過ぎる件。

 1月の真夜中なんて聞いただけでも寒気のする季節なのだ。

 人肌のあたたかさが如何に身に染みることか。


 このままぬくぬくと死ねたらいいと切に思う。

 おおよそ人が願う死の中で最も幸せな死に方であろう。


 しかし、死んでしまうにはあまりにもこの肉感はもったいない。

 死という概念とは程遠い、姉ちゃんのグラマラスボディ。


 性欲とは生物学的に言うなら生きることそのもの、生命を次に繋げる行為であり生み出す行為そのものだ。

 死にゆくのとは対象的な欲求はいかがわしくも美しくあるべきだろう。


「姉ちゃん」


 俺は姉ちゃんの頬に触れてこちらに顔を向けさせた。

 お互いに並行して横を向いて寝ていた体勢から姉ちゃんは体をじるようにして俺の方を向いているからか、大きな胸が一際強調されている。


 そのまま姉ちゃんにキスをしながら胸をまさぐるように揉んでいく。

 やわらかさとあたたかさが掌いっぱいであり、キスから漏れ出る姉ちゃんの甘い声は早くも脳を焼いた。


 段々とこちら側に傾いていく姉ちゃんの姿勢。

 姉ちゃんは俺の首に腕を回してより密着しながらキスをせがんできた。

 押し付けられた胸の弾力と舌のうねりが全身の感覚をも蹂躙していく。


 俺も姉ちゃんもなんだかんだでお預けをくらっていたからだろうか。

 互いを求めるのは熱も肌も匂いでさえも足りない。

 とろけた頭でぼんやりと考える。


 これは愛か。それとも単なる性欲か。


 人はこれを歪みと捉えるのか。

 16歳の自分にはそう言われる事すら受け入れてでも求めるだろう。


 今なら除夜の鐘すら邪魔をしない。

 今宵は三が日も過ぎて、姉との夜である。

 ふたりだけの夜である。

 冬の寒さすら心地よい。


「姉ちゃん」

「タク」


 キスの合間に意味もなく名前を呼び合い、互いの体をまさぐっては少しずつ素肌が見えていく。

 じれったいと感じつつも、いつまでも舌の絡まりは続いていく。

 姉ちゃんの股の間にある俺の太ももが擦れ合う度に姉ちゃんも下半身を擦り付けてくる。


 揉みしだいていた右手は姉ちゃんの肌を滑り、段々と下半身へ進んでいく。

 なめらかな肌をゆっくりと触りながら下着の隙間をもすり抜けてワレメへと到達した。


 そのまま指先でワレメをなぞった先のぷっくりとした部分を擦ると姉ちゃんの下半身が痙攣した。

 そうして攻め続けると姉ちゃんはキスすらできなくなりされるがままとなった。


 ねっとりとした蜜が音を立て始め、その音が恥ずかしいのか顔を隠す姉ちゃん。


「気持ちいい? 姉ちゃん?」

「気持ち、いいッッ……。けど、なんか恥ずかしい」

「顔隠さないでよ」

「いやッ♡ ……だからぁ」


 絶頂に達したのか、一際大きく体を震わせる姉ちゃん。

 そして思い出したかのように一定の感覚で何度も痙攣している。

 姉ちゃんは気持ちよさからか天井をぼーっと見つめていて、暗がりでも尚その顔がたまらなく愛おしい。


 右手の指先に付いた蜜はカーテンの隙間から差す月明かりでなまめかしくつやめいていた。


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