第41話 女の髪は命。これ大事。
みずみずしい姉ちゃんの肌はアロマキャンドルの橙色で艶めかしく照らされている。
女の子独特の肩幅とほっそりとしたくびれ、バスチェアに座っていて強調された腰。
いつもと同じのお風呂場のはずなのに、どうしてこうも悶々とするのだろうか。
決まっている。姉ちゃんは目の前にいるからだ。
一糸まとわぬ姿を晒しているからだ。
「……こ、これ、恥ずかしい、ね」
「そ、そうだな」
裸の付き合いというのは昔から好きではなかった。
けれどもこうして姉ちゃんと一緒に風呂に入るという経験をするのだとしたら、父親が死ぬ前にでも慣れておくべきだったと思った。
父親との裸の付き合い程度でこの緊張感と興奮に慣れるとは思えないが、それでもほんの少しの気休めにはなったかもしれない。
父親との風呂なんて、物心付く・付かないくらいの時のうっすらとして記憶しかない。
「ととととりあえずシャワー出すねっ?!」
「お、おう」
12月の風呂はとにかく寒い。
それでもお互いに寒さを感じていないのは極度の緊張感からだろう。
……背中を流すって、髪とかも洗ったりするものなのだろうか?
俺の頭の中の
「と、とりあえず俺、湯船に浸かってていい?」
「え、あ、うん!! そうだね?!」
髪の短い俺では姉ちゃんがどうやってこの長い髪を洗うのかはわからないけど、少なくとも俺が洗えるような髪ではないのはわかる。
とりあえず俺は湯船に浸かり、姉ちゃんの方を見ないように壁際を向いた。
たぶん姉ちゃんは見られてると恥ずかしくて進まないだろうし。
個人的にはめっちゃ見たいんだけども。
「いつもこの長い髪を洗う時ってどのくらい時間かかるの?」
「う〜ん、どうだろう……時計とかないしわかんないけど、5分から10分くらい? かな?」
「男とは大違いだな」
「正直めんどくさいから切っちゃおうかなぁって思ってるけど」
「絶対切っちゃだめ。そしたら俺は泣くぞ」
「なんで?!」
「姉ちゃんは今のままでいい。それにここまで伸ばすのにだって相当時間かかるでしょ?」
「そ、それはそうだけどぉ……」
黒髪ロングというのはそれだけで価値がある。
後ろ姿だけでも可愛いと錯覚させられるほどの力を持つ。
女の髪は命というが、生物学的に髪の艶も体調に影響を受けるらしい。
生物学に詳しいわけじゃないが、姉弟の近親問題を調べている最中に知った事だ。
髪の艶があるほど女性としての機能がより良く機能している。
要は健康体であり、子を産み育てられる体であるという事らしい。
人がボサボサの髪を見て不快に思ったり不健康だと感じるのは生物的本能で相手を判断しているというわけである。
男女問わずファッションの中にはそれぞれ「性」の特徴や利点をよく見せる為の文化的かつ本能的な技術がある。
「それはその……ショートヘアは似合わないってこと?」
「姉ちゃんならショートヘアでも似合うと思うし、俺は好きなままでいられる自信もある。けど、姉ちゃんの髪は少なからず丁寧に手入れしてるのはわかる。だから今のままでいい」
「そっか。ありがと」
それに、髪の手入れを気にかけている女の子は可愛いものである。
もちろん時間もかかるし面倒な事も多いだろう。
けれど、女の子の努力というのは見ていてとても可愛いと俺は思う。
「長い髪洗うのは大変なんだけど、タクがそう言ってくれるならもうしばらく伸ばしたままにでもしようかな」
「ずっとそのままでもいい」
「タクにフラれたらショートヘアにするね?」
「なら永遠にロングヘア確定だな姉ちゃん」
「この髪とも末永いお付き合いになりそう」
そう言ってお互いに笑った。
先程までのただならぬ緊張感は少し
「でも実際、黒髪ロングは大変なんだからね? まずお風呂入る前にブラッシングして、それからシャワーでまずしっかり洗ってから毛先でシャンプー泡立ててってやらないといけないし」
「世の女の子はみんなそうやってるの?」
「ショートかロングでも変わるんだろうけど、髪の艶とかまとまりとか全然違うんだよ?」
「具体的には?」
「う〜ん、そうだなぁ。時間無くて雑に洗うと手櫛がまずできないね。ちゃんと洗えば手櫛もスルスルできるし枝毛とかもないし艶も出るし」
女の子の風呂が長いにはちゃんとした理由があるようだ。
是非とも世の中の女性には長風呂で髪を労わってあげてほしい。
「よしっ。頭は洗い終わった〜」
「ついにボディですかお姉様っ?!」
いつの間にかトリートメントまで終わっていた姉ちゃんについうっかり興奮してしまった。
「が、がっつき過ぎだからっ!! ……ッ?!」
勢いよくお湯から立ち上がってしまった為、ド派手な登場っぽくなってしまった。
おかげで姉ちゃんにしっかり見られて俺も恥ずかしくなったが今更である。腹を括れ、俺。
「お、お願い……します……」
「まかせろ」
まかせろとか言ったけど、この場合の洗い方っていつも通り泡立てネットのボディタオルで洗うべきだろうか?
個人的には手で洗いたい……色々と触りたい……まさぐりたい……
「姉ちゃん」
「はいっ?!」
「素手とボディタオル、どっちがいい?」
「……お、おまかせしますぅぅ……」
おまかせですって奥さん聞きました?
むふふですわねええ。ごくり。
「……ではボディタオルから」
冷静に考えたら素手で洗うとか泡立て大変だから普通にボディタオル使わないとな。
……脳内がピンク過ぎるぜ俺……
「ッ!!」
ボディソープを泡立てたボディタオルで姉ちゃんの背中にそっと触れた。
ボディタオル越しでも姉ちゃんの肌のやわらかさが伝わってきた。
「痛くない? 大丈夫?」
「だ、だいじょぶ……」
姉ちゃんの肌を泡で覆い尽くすように優しく洗っていく。
「……んんっ……」
片手でタオルを使いながら、利き手で姉ちゃんの肌を撫でるように洗う。
緊張している姉ちゃんの熱を手のひら越しに感じつつも姉ちゃんの過敏な反応を楽しむ。
背中から肩、肉感のある腰。
ほっそりとしつつもやわらかい二の腕。
脇を指先でなぞるように滑らせていく。
俺と姉ちゃんの初めて。
お互い初めてであり、俺としても最も大事な場面である。
「み、耳は、だめ……っ!!」
頭の中では理性と本能が入り交じり、葛藤の先は肌色一色。
けれど、本能のままにすれば姉ちゃんを傷付けてしまうのではないか。
それだけがブレーキとなっている。
本当ならば、今すぐにでも。
「た、タク……当たってる……」
「しょうがないだろ。姉ちゃんが悪い」
「んんっッ」
姉ちゃんの耳から今度はうなじへと舌を滑らせ、手の向かう先にはぷっくりと膨れた突起の周りをもどかしそうに練り歩く。
豊満な姉ちゃんの胸から伝わる熱はさらに興奮へと導いていく。
片方の手は胸、もう片方はお腹から下腹部へとボディソープを馴染ませるようにゆっくりと走らせる。
姉ちゃんの足先に力が入っているのがわかる。
下腹部のさらに下へと進むたびにその足先の強張りは強くなる。
「タク……」
俺の名前を呼んで手を伸ばし、頬に触れて姉ちゃんからキスを求めてきた。
さらに舌を絡ませてきて、姉ちゃんの
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