第29話 ラッキースケベは突然に。

「ふぅ〜」


 家に帰ると、風呂上がりのほぼ全裸の状態の姉ちゃんとガッツリ目が合った。

 火照っていて瑞々しい肌色。

 形の良い豊満な胸は歩く度に揺れていた。

 わずかに生えている恥部の毛も唆る。


「……」

「…………」


 姉ちゃんは頭を拭いてた状態のまま目を合わせて固まっていた。

 その姉ちゃんの顔が徐々に顔を赤らめていく。

 そして俺は全く目を逸らせなかった。逸らさなかったと言ってもいい。

 疲れが吹き飛び、神に感謝した。これぞ神秘と言えるだろう。


「ッ?!」

「……ただいま」

「お、おかえりッ?!」


 半ばパニック状態の姉ちゃんはしゃがんで丸くなっていた。

 なぜこんな時間にそんな格好のままで脱衣場から出てきてしまったのかはわからないが、ご馳走さまですはい。


「姉ちゃん、最高」

「感想とかいいから?! ってかタク?! 鼻血!!」


 鼻血を垂れ流しながら恥ずかしがっている姉ちゃんに親指を立てた。

 出血死してもいい気がする。そのくらい最高。


 俺の止まらない鼻血に動揺しつつもバスタオルを身体に巻いて駆け寄ってくる姉ちゃん。

 締め付けられたバスタオル越しにも胸は揺れ、流れ行く鼻血は留まるところを知らない。

 慌てて駆け寄ってきた姉ちゃんからシャンプーの香りが鼻血に塗れているはずの俺の鼻腔をくすぐった。


「だ、だ、大丈夫?!」

「全く大丈夫」

「いや凄い量の鼻血出てるからね?!」

「そりゃ姉ちゃんがそんな恰好してるからな。むしろ健全まである」

「全く健全じゃないから!!」

「思春期な男子高校生としては健全だぜ」

「ブレなさすぎだからっ!!」


 普通のラブコメのラッキースケベなら引っぱたかれるのがオチだが、落ちているのは俺の鼻血だけである。ビンタしない姉ちゃんとか優し過ぎ問題。


「とりあえず姉ちゃん、着替えてきて。じゃないとまず鼻血が治まらないかと思われ」

「え?! あ?! うん?! ちょ、ちょっと待ってて?!」


 慌て過ぎた姉ちゃんは着替えに行こうとしてうっかり転けた。


「ぶはッ」


 ガッツリ転けた姉ちゃんは四つん這い状態になってしまい、大事な部分が俺に丸見えな状態で露わになり更に鼻血が吹き出した。

 ……ああそうか、俺はもう死ぬんだな。

 最期にいいものを見れたよ神様ありがとう。

 すっごい興奮しましたはい。

 もうなんか鼻血で服が血だらけだけど、そんな事はどうでもいいんだ。

 姉ちゃんの四つん這いからのワレメとか菊の花とか見れたし。

 もう思い残す事はないのかもしれない……


「タク?! 大丈夫?! ってタクッ?! ほ、ほんとに大丈夫……?!」


 玄関先の廊下の俺の血溜まりに半泣きになる姉ちゃん。鼻血くらいでそんなに泣きそうにならなくてもとは思うが、改めて足元の血溜まりはもう事件だった。


「ごめんね。ごめんね……」

「とりあえず死なないから安心してくれ姉ちゃん」

「で、でもこの量はやばいよ?!」

「明日はレバニラ炒めが食べたいかな」

「呑気に鉄分補給とか考えてるし?!」


 とりあえずふたりで血溜まりを掃除していく。

 俺に休んでてと姉ちゃんは言うが、このまま家の中を歩き回ると余計に血で汚れてしまうのでそれもできないわけで。


「なんで俺が帰ってくる時間にあんな格好して脱衣場出ちゃうの姉ちゃん。いやむしろ毎日してほしいけど」

「長風呂してて時間感覚なくしてて……つい」

「という事は俺がいない時は全裸で脱衣場から出るという……やべ、また出てきた」

「えっちな妄想禁止っ!!」

「姉ちゃん、それはあんまりにも酷な話だぜ……男のさがってやつだ」

「カッコつけなくていいから!!」


 不意打ちだったからか、めっさ興奮が収まってない。

 だけど鼻血が出過ぎているが故に頭がクラクラしている。おそらく貧血だろう。

 頭クラクラしてなかったら流石に理性崩壊してたまであるもんな。


 未だに涙目な姉ちゃんは必死になって血を拭いている。その姉ちゃんが前かがみになっていて谷間に目が吸い寄せられていく。

 いかん。いよいよ鼻血が止まらないまま死ぬかもしれん……

 思春期男子の性欲は恐ろしい……


 頭ではわかっていても、何度もさっきの四つん這いの姉ちゃんの恥部が脳裏にフラッシュバックする。

 これだけで何回イケるだろうか。


「落ち着いた?」

「いや全く」

「なんか、ごめん」

「いやむしろご馳走様です」

「……怒りたいのに、怒れない……」

「うん。これは姉ちゃんの油断が悪い。俺は悪くない。むしろ最高」

「…………弟がこんなに変態だったとは」

「また鼻血が」

「とりあえず落ち着こうか?!」


 ジト目で睨まれても今ならやばいんですお姉様。

 全部ご褒美なんやでぇ。



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