第22話 相談相手は間違えるな。
「ふむふむなるほどぉ。つまりはハーレムってことっすね」
「……一夫多妻制を参考にするならばそうなりますかね」
俺は姉我好先生に現状の相談をしていた。
メッセで連絡をするの是非また会って話を聞きたいと言われて今に至る。
前回同様カラオケで2人である。
相談内容は姉ちゃんと椎名についてである。
「両手に花ってやつっすね。羨ましいかぎりで」
「……まあ、そうなんでしょうね」
「嬉しくないんすか?」
姉我好先生はジュースを飲みながら姉我好先生のお姉さんのパンツを嗅ぎつつ俺の話を聞いている。
相談する相手を間違えたとは思ってる。思ってるさ。
だが俺には姉我好先生くらいしかこの内容の話をできる人がいないのだ。仕方ないだろ……
「椎名からの気持ちは嬉しいが、自分の中ではやっぱり幼馴染という関係性から
幼馴染だし、椎名は誰が見ても可愛い部類に入る。
身内贔屓なしでもそうだと言えるくらいには可愛いのはわかる。
だが、どうしたって身内感というか。
「でも幼馴染ちゃんが下着姿で迫ってきた時には勃起したんすよね?」
「………………まあ」
なんでこの人そんなこと平然と言えるの?
いやエロゲのシナリオライターだし一般的な女性よりそういうのが抵抗ないのかもしれんが、仮にもこっちは思春期真っ盛りな男子高校生ぞ?
もうちょっと配慮してくれませんかね?
「ならいっそヤっちゃうってのはどうっすか? 1発ヤれば幼馴染ちゃんを女の子として認識できるかもっすよ」
「……うん、言いたい事はわかります。わかるけども」
姉我好先生のアドバイスはわかりやすく動物的だ。本能的とも言える。
姉ものに限らず近親もの寝取られものなどの創作ではよくある話だ。
1度関係性を持ってしまったら後には引けなくなったり、なし崩し的にそう言った関係を継続してしまう。
姉我好先生が言いたいのは、精神的に距離がある状態なら物理的に近づけばいい、そういう話だ。
「俺は姉ちゃんの処女を貰う約束してますし、俺の童貞も姉ちゃんで捨てる予定なのでそれをすると百歩譲ったとしてもまず姉ちゃんからになりますね」
「くぅぅ童貞めっ!」
「うるせ」
悪かったな童貞で。
それくらいいいだろ。
誰でも取っかえ引っ変えシたくないんだよこっちは。
そりゃこっちにだって性欲はあるし、なんなら生物学的には全盛期と言ってもいいのかもしれない。
だが、シスコンが姉ちゃんで童貞捨てないでどうする?
ロマンが無いんだよロマンが。
「私もお姉ちゃんの処女欲しい……」
「姉我好先生、血の涙流れてますよ」
「私の心はこんなに勃起してるのにぃー!!」
「……先生、
なんだろうかこの気持ちは。
漫画家なり小説家の担当編集ってこんな気持ちだったりするのだろうか。
全くの偏見だが、創作をする人って変人が多い気がする。
目の前の姉我好妹子先生しか知らないけど、そういう
「ポン酢さん、こんな考え方はどうっすか?」
「……聞きましょう」
なんか凄い悪い顔してるんですが……
ぐへへへって顔してるんですが大丈夫なのかこの人……
「幼馴染ちゃんを練習台にお姉さんと最高のセックス」
「……ちょっと待ていよいよド畜生のクズ男になっちまうじゃないかぁ……」
「お姉さんだって初めてなんすよね? 結構聞くっすよ? お互い初めてで上手くいかなくてどうこうっていうのは」
「エロゲのシナリオライターの取材というソースは強すぎる……」
「まだお姉さんが経験済みでポン酢さんが筆おろししてもらえるならもうちょいスムーズかもっすけど」
「やめろぉぉぉ姉ちゃんが経験済みとか死んでしまう……」
「処女信仰なんすね」
姉ちゃんが……他の男に……やめろ、やめてくれ……そんなの嫌だァァァァァくぁw背drftgyふじこlp;@:「」
「……あ……あ……ぐはっ……」
「おーいポン酢さ〜ん。帰ってきてー」
「ッは!! ここは……」
「おかえりなさい。まあ、気持ちはわかるっすけどね」
俺は……なにを。
姉我好先生に相談してたのは覚えてる。
なんで記憶が飛んでるのかはわからん。
「まあとにかく、お姉さんも幼馴染ちゃんも受け入れる方向でポン酢さんがそれをよく思ってないってのはわかったっす」
「そ、そうです。そうですね」
「結構ダメージ入ってるっすね」
「なんか、よくわかんないんですけど、そうみたいです」
酷い悪夢を見た後みたいな心地だ。
最悪と言っていい。
自分の断末魔だけが頭の中を
「まああれっすね。幼馴染ちゃんには真っ当なラブコメがしたいって言ってみたらいいかもっすね」
「……真っ当なラブコメ?」
「そうっす。聞いてる感じ、意識してるベクトルが違う感じするっすから」
「まあ、たしかに。こう……なんていうか、どうあっても男女の仲って感じじゃないですね。熟年夫婦みたいな」
「なので、傍から見てて「お前らもう早く付き合っちゃえよ焦れったいな!」みたいな感じになったらポン酢さんも幼馴染ちゃんを女の子として意識するかもっすよ」
「……わかりました」
姉我好先生の言うことは理解できる。
熟年夫婦みたいな空気感は居心地がいい。良過ぎると言ってもいい。
姉ちゃんとは基本的に姉と弟だし、自分の中ではまた別な空気感だと思ってる。
シスコンバレしてからは姉ちゃんへの遠慮がなくなった感覚もある。
自分の中で、椎名に対しての感覚が変われば、受け入れられるようになるだろうか。
けれど、それが漠然とこわい。
自分のシスコンっぷりを疑ってるわけじゃない。
けど、今の関係性がこれ以上に変わってしまうのがこわいのだ。
「私もお姉ちゃんとイチャイチャしたいなぁ」
「したらいいじゃないですか」
「どさくさに紛れて胸触ったりはよくしてるっすよ?」
「なにそれ羨ましい」
姉我好先生のマイペースぶりはなぜか落ち着いてしまう。
自分と似ているからだろうか。
まるでそれは当たり前みたいにそんな事を言う姉我好先生はやはりどうしようもなく良き同志なのだろう。残念な事に。
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