第15話 姉ちゃんの水着姿が天使だった。いや元から天使だな。

 夏の海。微笑む姉ちゃん。揺れる胸。

 うーん最高。


「拓斗は泳がないの?」

「俺は荷物番してるわ〜」

「あっそ」


 夏休みは1ヶ月もあるが、3人のスケジュールを調整して行けるのは1日だけだった。

 社会人の姉ちゃんとバイトがある俺と椎名。

 予定を合わさるのは難しい。

 それでも今年も行けることになったのは運がいい。


「ねぇ、あたしの水着……どう?」

「んー? 可愛いぞ」

「感想が雑。やり直し」

「胸元のフリルがボリュームを増してる感じがしていいんじゃないか? 意外と椎名って太ももはムチッとしてるよな」

「……シスコンのド変態に綺麗な感想を期待したあたしが馬鹿だったわ」


 椎名の水着は黄色の水着で、フリルがひらひらと動く度に舞って可愛らしい。


 だがそれより姉ちゃんである。

 真っ白なシンプルなビキニは姉ちゃんのスタイルを際立たせている。

 豊満な胸には誰もが目を惹く。

 ぶっちゃけ椎名よりずっと姉ちゃんを見ていたのだが、シスコンとしては邪魔な虫どもを警戒しなければならない。


 世の中そんな都合よくプライベートビーチを持ってるような友だちと海に行けるような事はそうそうないのである。

 なので俺は姉ちゃんの胸を目を奪われつつも虫どもに目を光らせておかなければならないのである。


 姉我好妹子

「そういえば今日は海に行くと言ってましたよね? どうですか?」


 ポン酢

「姉ちゃんの胸が、揺れてるんです。最高です」


 姉我好妹子

「羨ましい……私も見たい……」


 ポン酢

「シスコンたる俺がそんなことを許すとでもお思いですか?」


 姉我好妹子

「それでこそ我が同胞……あ、鼻血出た」


 ポン酢

「妄想してる暇あったら仕事して下さいよ」


 姉我好妹子

「……お姉ちゃんの胸に溺れて死にたい……」


 やっぱり姉我好先生はまともじゃない。

 そしてそんな姉我好先生と語り合った俺もやはらイカれてるのだろう。それは認める。


「タクも一緒に遊ぼうよ〜」


 あ、天使が俺を呼んでいる……

 俺はスマホを投げ捨て結局水鉄砲片手にはしゃぎ回った。

 姉ちゃんに水を掛け、椎名に寝技を掛けられ、姉ちゃんにほっぺをつつかれる。


 がしかしそんな幸せもやはり長くは続かないもの。


「ねーちゃん、俺らと遊ばない?」

「死ね羽虫が」


 姉ちゃんに寄ってきたむしたちの目に水鉄砲を掛けまくる椎名。

 露骨な暴言はどうかとは思うが、姉ちゃんには指1本触れさせる気はない。


「すみませんが、他当たって下さい」


 ありったけの殺気を込めて男共にそう告げた。

 姉ちゃんをいやらしい目で見ていいのは俺だけなので、こいつらは許さん。

 男故に、弱点は知っている。

 どんだけガタイが良かろうと、隙を付ければ負けはしない。俺は姉ちゃんの為なら容赦しないのだ。


「ちっ……」


 身なりはそこそこいいんだから、ビーチで女なんて漁ってないで風呂屋にでも行けばいいのにな。

 とりあえず奴らは不機嫌そうな顔をして去っていった。

 アイツらも下半身の脅威に逃げ出したので一安心である。


「流石はシスコンね」

「尊敬したか?」

「感動して吐き気がしたわ」

「それは名誉な事だ」


 あいつら、椎名の事は見なかったな。

 ロリ認定されたのだろうか……


「ちょ、ちょっと怖かったね……」

「来年からはスタンガン常備しとかないとな」

「それはちょっとやり過ぎだよタク」


 まず男の股間を蹴り上げて海水で濡らしてからのスタンガンだ。

 刺激を求める男には丁度いいだろう。


「あたしお腹空いたし、ご飯でも食べない?」

「そうだね。焼きそばとか食べたい」

「なら行くか」


 海といえば海の家。

 家に帰って作れば安上がりな焼きそばも、海の家という特種な環境下だと3割増で美味くなる。

 さらにそこから姉ちゃんが居ることにより5割増に美味くなる。


「タクは塩焼きそば? 美味しそう」

「あたしと桃姉はソースだから、拓斗のちょっとちょうだい」

「どうぞ」

「う〜ん! 美味しいっ!!」

「悪くないわね」


 姉ちゃんが可愛い。

 姉や妹がいる家庭ならよくあることだとは思うのだが、姉ちゃんも椎名もよく他人の食べているものを欲しがる。

 なんならあれもこれも食べたがるので、必然的に違うものをチョイスする事が多い。


 俺は姉ちゃんの笑顔が見れてハッピー。

 姉ちゃんは美味しいご飯が食べれてハッピー。

 なんて素敵な世界だ。


「ああ〜お酒飲みたーい」

「運転手なんだから我慢して姉ちゃん」


 本日の運転手はもちろん姉ちゃんなので、今姉ちゃんにお酒を飲まれると非常に困る。

 個人的にはお酒で陽気になった姉ちゃんが海で楽しそうにしてるのを見るのは悪くないのだが、ただでさえ美人で可愛い姉ちゃんがちょろくなって悪い虫どもに群がられるわけにはいかない。


「桃姉が飲んじゃうと明日の仕事いけなくなっちゃうよ」

「だよね……」

「帰ったらおつまみ作るから、その時に好きなだけ飲んだらいいよ姉ちゃん」

「拓斗なら好きなだけ甘やかしてくれるから、かえってからにしてよね」

「じゃあ梅しそささみフライが食べたい」

「わかったよ姉ちゃん」


 運転を頑張ってくれる姉ちゃんの為にも真心込めて作ろう。

 姉ちゃんが喜んでくれるなら俺もやりがいがある。


「拓斗、あたしはカプレーゼね」

「仕方ないな」


 海に来ても結局食べ物の話に落ち着いてしまったが、これもまたいい思い出だ。

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