第6話千葉一悟と氷見雪斗
気が付くと、僕は頭がユラユラするほどの不気味な空間にいた。いちごんとプディングの変身は既に解けており、2人の傍にはブレイブスプーンがふよふよと浮いている。
「あうっ…やめ…て…お父…様…」
いちごん達の目の前で、僕とカオスソルベを縛り付けている黒いもやは、カオスソルベを「ギリギリ」と音を立てながら締め上げていく。その痛みは僕の方にもじわじわ伝わり、息もできない程だ。負の感情が強いせいか、いちごん達はマジパティに変身して救出しようにも、変身不可能となっていた。
「どうすればいいの?変身もできないなんて…」
「大丈夫だ…変身できなくても、俺は絶対にカオスソルベも…
そう言いながら、いちごんは黒いもやの中へ消えつつある僕を両手で掴み、引きずり出そうと試みた。
「雪斗…俺は、5歳の時のお前を「女の子」だと思ってた…それで、「みるくが葬式から帰ってきたら、みるくにお前を紹介して、一緒に遊ぼう」って思ってたんだよ。でも…お前はあの時、黒いスーツの男たちに攫われた。俺は止めようとしたけど…」
いちごんはそっと左手で前髪をかき上げる…そこにうっすらと残る傷…
「「ユキちゃんとの思い出」ごと吹っ飛ばされるほど、お前のクソ親父が俺を殴ったんだ。お前が車に連れ込まれている時に…俺の父ちゃんも母ちゃんもお前の父親を訴えようとしたけど、ムダだった。来たのは氷見家からの謝罪だけ…あとは今川家がもみ消した。それからは、お前の事は思い出せないまま…」
いちごんの左のこめかみにある傷…その傷こそが、僕の忌々しいのあの男・
「入学式の時、俺はお前にとってヒドい事を言ったのは変えられない…でも、友達としてこれからを過ごすことができる。カオスソルベは、俺達にそれを教えてくれたんだ…」
段々と僕の身体が黒いもやから引きはがされると同時に、僕の心の奥からの熱い思いがぶわっと溢れ始めた…
「だから…雪斗!!!遠回りしすぎたけど、俺とお前はもう友達だ!!!」
いちごんがそう叫んだ途端、僕は大粒の涙をこぼしながら、いちごんの左肩に乗った。
「いち…ごん…あり…がとう…」
「だから、「いちごん」言うなって!!!」
「そうだよ!でも…氷見くんの「友達」は、いっくんだけじゃないからね?あたし…男の人が苦手でも、氷見くんなら克服できそうな気がするもん♪だから、一緒にカオスソルベを…ううん、ユキちゃんを助けよう!!!」
「あぁ!!!」
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