第5話氷見雪斗と本音

雪斗ゆきと…お前、本当に体を返して欲しいと思ってるのか?」

「当たり前だ!!!僕は早く元に戻って…みんなと…一緒に…」

いちごんやカオスソルベ達がクグロフという幹部と戦っている中、ココアという精霊の問いに、僕はそう答える。早く元の姿に戻って、もう一度やり直したい…またいちごんと同じ事がしたいんだ。

「その想いを、なぜミルフィーユ達に伝えられないんですか?日記では恐ろしいほどに一悟と一緒に居たい気持ちでいっぱいだったじゃないですか!!!!」

「なっ…僕の日記を…どうして…」

ラテという精霊の発言に、僕は顔全体を赤く染め上げた。それと同時に、クグロフの鞭がプディングとライスに炸裂する。

「悪りぃけど、一悟いちごも、みるくも、ライスも勇者さまもみぃ~んな…お前が口に出さなかった本音、知ってるぜ?だから、昨日一悟はカオスソルベに「一緒に学校へ行こう」って提案したんだ。」

「それに、あなたが日記に書いても、口には出せず、行動にも出せなかったこと…ぜーんぶカオスソルベがやってるんですよ!!!」

「ひょっとして…怖いのか?本音漏らして、一悟達に嫌がられるの…まぁ、顔立ち良くても中身はコミュ障だもんなー?お前…」

ココアが僕を煽ったと同時に、クグロフの蹴りがいちごんとカオスソルベの腹部にそれぞれ炸裂した。僕の目の前で傷ついていくマジパティ達とカオスソルベ…助けたくても力になれない…そんな僕の心の中に、もどかしさが芽生え始めた。


あの時…いちごんを突っぱねてさえいなければ…


いちごんの事情を知ってさえいれば…


もうやり直せないかもしれない…でも、やり直したいんだ。いちごんと友達として…




「クグロフ!!!!!学校でのスメルハラスメントは、校則違反ですよ!!!それに、学校内は関係者以外立ち入り禁止です!とっとと去りなさい!!!」


顔にガスマスクを付け、頭に黒い鬼の角を付けたメイドとくノ一を合わせた姿をした人物・ティラミスが校舎から現れた。クグロフとは仲が悪いのか、いちごん達がいるのも構わず、2人は小競り合いを始めてしまった。


これはチャンスなのか…ミルフィーユとプディングは再び立ち上がる。


「行くぜ、プディング!!!」

「はいっ!!!」


ミルフィーユに変身したいちごんは再びミルフィーユグレイブを構え、プディングも再びプディングワンドを構える。

「ミルフィーユパニッシュ!!!!!十文字斬りっ!!!」

ミルフィーユの攻撃が、カオスイーツ達を次々と切り裂いた。

「プディングメテオ!!!フランベ!!!」

プディングの放った球体は炎を纏い、カオスイーツを焼き尽くす。カオスイーツはみるみるうちに光の粒子となり、本来の姿に戻っていく。ティラミスの横やりに不快感を示したのか、クグロフは捨て台詞を吐いて去ってしまった。



「み…ミルフィーユ!!!」

「…!?」

今更遅いかもしれないが、僕はいちごんに謝りたい…それしか方法がないんだ。

「僕…本当は君と一緒に戦いたかったんだ…でも、拒絶されるのが怖くて…つい…強がって…」

今まで日記でしか話せなかった本音が言えた瞬間だった。今までミルフィーユに対して対抗的な態度をとっていた自分自身への恥じらいが勝り、言葉こそ詰まるが、今なら言える…僕はそう確信した。


「僕だって…君と張り合うつもりも…ケンカをするつもりもなかった…また…あの時みたいに遊んでほしかった…友達に…なり…たかった…」


僕の話に、カオスソルベはにっと笑った。

「やっと…言えたね?でも…僕は消える気ないから!」

「それは僕も同じだ…」

カオスソルベは手のひらに雪斗を乗せ、お互い微笑み合った。その瞬間、カオスソルベの腰にあるノワールスプーンが一瞬にして消え去り、カオスソルベの恰好が変化する。

「ま…まさか…」

髪型はワンサイドテールからワンサイドアップに変わり、黒を基調としたツーピースのコスチュームも、瞬く間にサン・ジェルマン学園中等部の制服姿へと戻ってしまった。

「変身…解けちゃった…」

カオスソルベの変身が解けたと同時に、ミルフィーユ達の足元から黒い光が放たれ、ティラミスはフッと笑った。


ティラミスは、まさにこの瞬間を狙っていたかのように、ミルフィーユ達を横目で見つめる。


「今度こそ、完全敗北を差し上げましょう…マジパティども…カオスソルベと共に…」


「パチンッ」


ティラミスが指を鳴らした途端、先ほどのカオスイーツ達よりも大きいドーナツカオスイーツがいちごん達の頭上に現れた。


「ぴゃっ…」

「てぃ…ティラミス…」

「吸い込ま…れる…」

ドーナツの空洞に風穴があいたかの如く、謎の突風にあおられた僕はいちごん達共々空洞の中へと引きずり込まれてしまった。

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