第2話氷見雪斗とカオスソルベ
「それなら私・ティラミスがあなたに完全敗北を差し上げましょう…
頭がぼーっとする…あの言葉からどれ位の時間が経ったんだ?あの時、僕はミルフィーユに変身したいちごんと戦ったけど…途中で勇者がやってきて、勝負はつかなかった挙句…僕はもうソルベに変身できなくなってしまった…どうして…僕はただ、いちごんと一緒にいたいだけだったのに…
身体が動かない…僕がどこにいるのかもわからない…いちごん…いちごんはどこに…
雑音が響く…うるさい…僕は、いちごんと一緒にいたいだけなのに…邪魔をするな…
「でたらめを言うなっ!!!」
「そうやって否定する言葉だけは、すぐに言えるなんて変なのー?」
雑音が収まった途端、暗闇の中、ソルベの姿の僕と瓜二つの少女が立っていた。一糸まとわぬ姿であるという事は、ここは僕の身体の中なのだろうか?
「身体は今、僕・カオスソルベが使ってるよ…
「媒…体…?」
「そう…お父様…いや、カオス様のおかげで僕は生まれた。お前の事は、ティラミスやマカロンお姉ちゃんから聞いてるよ。マジパティとして最弱であることを自覚すらしないで、勇者様の力を好き勝手使いまくった挙句、ミルフィーユとケンカ…それが勇者様の
違う…アレはケンカなんかじゃない…僕はいちごんに、僕の強さを…
「そもそも、勇者の力が何なのかわかってないもんねー?カオスイーツが居ないところで変身して、力を使いまくって…何でマジパティになれたのか不思議なくらいだよ。」
あの時は、どうしてもいちごんを助けたかった…いちごんを守りたかった…
「マカロンお姉ちゃん経由で聞いたけどさぁ…初めてマジパティになれた時、突っぱねたんだって?しかも、宣戦布告付きで…ねぇ、どうしてそんなことしたの?ホントは一緒に戦いたいんじゃないの?」
「そ、それは…」
あの時の事は、今でも後悔している。でも…早く巻き込まれた母さんたちの所へ…
「答えられないんだ~?顔には「巻き込まれた家族が心配で、早く家族の所へ行きたかった」って出ているのに、それも言えないの~?」
「う…うるさいっ!!!勝手に僕の身体を乗っ取って、何がしたいんだ!!!!!」
「何がって…ミルフィーユと遊びたいからだよ?」
いちごんと…遊びたい?それは僕も一緒なのに…どうして…どうしてそんなに平然と言えるんだ?
「お姉ちゃんは言ってた。好きなものにはちゃんと「好き」って伝えなさいって…だから、ミルフィーユの事はお前の知らないところまでお勉強した。」
僕の…いちごんに関して知らない事?一体なんだと言うんだ?
「ミルフィーユこと、
カオスソルベは淡々といちごんのデータを読み上げる。このデータ…僕の知っているものばかりだ。
「フン!大した事ないな…いちごんの得意科目は体育と社会の地理!なんたって、スポーツ特待生なんだからな!!!そして、苦手科目は理科と数学だ。部活は帰宅部で、委員会には所属していない。」
「部活に所属していないのは、中等部に空手部がないからで、中等部理事会の許可の下で、提携先の道場に通っているから。」
「…!?」
まるで僕を
「空手で
「でたらめだ!そんな事、一体どこで…」
「そういえば、お前…SNSは愚か、授業中ですらネットに触った事ないんだったねー?僕はお姉ちゃんからネットの使い方とハッキングを教えてもらって、昨日は学校に居る間、ずーっとマルチメディア部の部室でミルフィーユの事を調べたんだー♪勿論、お前がネット上で酷い言われ方しているのも知ってるもんね。」
悔しい…去年のパソコンの授業で、開いてはいけないファイルを開いてしまった事で、おじい様に叱られて、それ以来パソコンの授業は全て免除になってしまって…
「先生の指示を無視して、アダルトサイトへ通じるファイル、開いちゃったんだよねー?ぷぷぷっ…よければ、教えてあげるよ。ミルフィーユのシャベッターのアカウントの…こ・と♪」
「しゃ、シャベッター…?」
「あははっ…ホントにシャベッターの事すら知らないの!!!いつの時代の中学生?そんなんだから、頭ごなしにプディングの事を襲っちゃうんだよねー?プディングはミルフィーユにとって、一番大事な家族同然なのに…」
ソルベだった僕と同じ顔立ちの女に
「家族?いちごんと
「隣同士なだけ?違うね!プディングこと、米沢みるく。11月25日生まれで、いて座のAB型。私立サン・ジェルマン学園中等部2年A組、出席番号29番。瀬戌市立木苺ヶ丘小学校出身。家族は父親の
「もういい!!!」
これ以上は米沢みるくの事を聞きたくない…僕は、カオスソルベの話を遮った。
「お前が僕以上にいちごんの事を調べたのはわかった…だが、僕は…」
「身体は返すつもりはないよ?お前の父方の祖父・
よりにもよって、
「それなら、どうしたらいちごんと…会える…教えろ…」
「自分で考えなよ?ていうか、上から目線とか何様のつもり?自分の立場をわかってないんだねー?」
「おじい様、おばあ様…母様以外に頭を下げるの…嫌いなんだよ…」
学校では仕方のない事だと割り切ってはいても、あの外道達の影が出るたび…頭を下げるのがイヤになる。
「人に教えてもらう態度取れないんだもん。一生身体を返してあげなーい!ミルフィーユにも会わせてあげなーい!」
「それは困る!!!
「僕は困らないもーん♪この際だから、シャベッターでなんて言われてるか教えたげよっか?メンヘラ!コミュ障!英語万年最下位マン!狙った相手を射抜けない弓使い!顔がいいだけ!病みっ子ゆっきー!」
突然、カオスソルベが僕に向かって、下劣な単語を言い始めた。この単語の羅列こそ、僕に向けられたクラスメイト達の本音だと言うのか…
「やめろ!このままだと…」
「やめなーい♪生徒会の出がらし!おタマのお荷物!ヘタレアーチャー・ゆっきー!生徒会長の…」
カオスソルベがクラスメイト達の僕に対する悪口を楽しそうに話している途中から、段々とカオスソルベの姿すら見えなくなってきた。意識までも遠のいていく…
「ざぁーこ♪我ながら流石に言い過ぎたと思うけど、ミルフィーユと本当に友達になりたきゃ…自分の力でなんとかしなよ?僕の前ではちゃんと喋れたのに…」
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