ChaosSorbet

夜ノ森あかり

第1話カオスソルべとマカロン


「人妻になってもぉ~、甘音はみんなの甘音だよ?」


「クソうざっ!こいつ、もうアラサーだろ?年齢考えろよ、気持ち悪い!!!」

そう言いながら、僕は部屋の(部屋というか、ただパーテーションで区切っただけのスペースだけど)テレビを消す。さっきテレビに出ていたのは、白石甘音しろいしあまねっていう瀬戌テレビの女子アナ。「嫁にしたくない女子アナ」、「合コンで一緒になりたくない女子アナ」、「恋愛相談したくない女子アナ」、「アスリート限定・インタビューに来てほしくない女子アナ」全てランキング1位という不名誉な記録を知らないおめでたい奴だ。僕はこのアバズレが嫌いだ。カオス様に拾われる前の事を思い出すから…


僕はただ泣きわめきながら手足を動かすだけだった頃、この廃デパートに捨てられた。そんな僕をカオス様が拾って、ティラミス達と出会った。僕をここまで育ててくれたのは、カオス様と言ってもいい。合コンと男と自分のぶりっ子キャラとしてのイメージためだけに僕を捨てたアバズレと一緒にいるよりは、カオス様の所にいる方が幸せだから。


「ギャア…ギャア…」


飼っているコウモリ達が珍しく、騒がしくしている。そう言えば、ティラミスが言っていた気がする。僕がカオス様に拾われた時も、コウモリ達が珍しく騒がしくしていた…ってね。そのティラミスの言葉を思い出した僕は、カオス様のいる場所へと向かう。


「この人間…気に入ったぞ…我の力を分けてやろう…その執着心で我の腹を満たせ…」


カオス様に拾われた時と似ている…僕は、あの時カオス様の力で身体を自由に動かす力と、言葉を話し、理解する力を得た。そして、今…カオス様から生み出された彼女も…

「はい…お父様…」

生み出された彼女は、あのブルーのマジパティと身体も顔つきも似ている。

「僕と…遊ぼうよ…ミルフィーユ…」


「我が傑作、マカロンよ…お前の妹が誕生したぞ…名は…そうだな…「カオスの力を宿したソルベだった者」…「カオスソルベ」とでもしておくか…」


「僕の…妹…」

そういえば、この3日間ティラミスは氷見雪斗ひみゆきとについて調べていた。それはつまり…

「喜んでください、マカロン様!あなたがSNS上でいたぶってきた者は、もう我々が手にしたも同然!!!しかも、勇者の手によってマジパティとしての地位をはく奪されたのですよ!!!!!」

正直…納得がいかない…ソルベは、僕の手で片付けたかったのに…ティラミスは余計なことをしてくれた。


「カオスソルベよ…そこにいるのが、お前の姉であって兄ともいえる存在・マカロンだ…」


僕の妹となったカオスソルベは、生まれたままの姿で僕に近づく。

「お姉…ちゃん…」

今まで敵として見てきた相手が、こんなにも変わり果てた姿になってしまったのは事実だけど、僕はあのブルーのマジパティと戦えなくなったという事実が悔しくて仕方なかった。ソルベもとい、氷見雪斗が好きだったからじゃない。僕はただ…千葉一悟もといミルフィーユにウザがられても、決して折れようとも諦めようともしなかったあいつの性格に興味があっただけなんだ…

「ほら…服を着な。ここ、お風呂は外だから…」

そう言いながら、僕は自分の体操着を差し出す。サイズは全然違う。Tシャツはぱっつんぱっつんだし、ハーフパンツも何とかはけている程度だ。それでも喜んで僕に懐いてくれるのは、ちょっと嬉しい…


僕はカオスソルベを連れて、お風呂にやって来た。僕たちが暮らす廃デパートには、入浴施設がないけれど、ここ一帯は廃墟が多いのか、デパートの近くにある自動車修理工場だった場所の近くに一件の家屋がある。ここが僕たちが言う「お風呂場」だ。庭の草は生い茂っているけど、そんなの気にしない。気にすると言えば、黒光りするヤツとネズミくらい。たまには大きな銭湯に行くこともあるけど、僕は昔から五右衛門風呂があるここを気に入っている。薪をくべるのは、コウモリ達と狼が全てやってくれている。ティラミス以外とお風呂に入るのは初めてだけど、なんだか嬉しい気分になる。妹の方が体格いいのは腹が立つけど、僕の媒体とカオスソルベの媒体の体格差を考えると、それは仕方ないと受け入れるしかない。

「服…用意してやるから。それに、こんなデカブツぷるぷる揺らしてばかりじゃ危ないだろ!!!ちゃんとサイズ計って、この間入ったばかりの収益でお前のブラ買ってやる!!!」

「…?…いいの?」

「ミルフィーユと遊びたいんだろ?それなら、それ相応の身だしなみで遊べっての…」

カオス様が、カオスソルベを僕の妹としてお創りになられたのなら…せめて、僕の妹として相応しい身なりにしよう…お風呂を出て、僕たちは部屋に戻る。そして、実際に計ってみて、僕はその数値に愕然とした。


88センチ…しかもFカップとか冗談かよ…

「うあーーーーーーっ…しかも結構なお値段するーーーーーーっ…」

下着だけで僕が初めてミルフィーユとプディングの戦いの様子をライブ中継した時の収益…全部飛んだ…ぐすん。でも、割とかわいい方選んでやったから、そこは評価してほしいぺろ☆彡


「すぅ…すぅ…」

たまたま部屋に忘れ去られていたエクレールのワイシャツに身を包んだカオスソルベの横で、僕は彼女のための買い物と調べものをしている。大抵のものはこの廃デパートから一番近いコンビニに届くようにしてあるし、問題は彼女が学校に行きたがった時だけとなった。流石にそこではティラミスも手を貸すとは思うけどね。


「ひどい話だよ…学校にも通わせてもらえず、実の父親から性的なはけ口にされ続けて…」


媒体が氷見雪斗なので、カオスソルベの背中にはとんでもないモノが存在していた。根性焼き…つまり、タバコを押し付けられた跡だ。それも何度も…カオスソルベが背中を見せようとしなかったのも、この跡を隠すため…


「お前の事…正直憎らしいって思うけど…今は、僕の妹として可愛がってやる…父親からもらえなかった愛情…お前にたくさんくれてやる…」


僕だって、本当は「愛」なんて知らない。だけど…カオスソルベを大事にする事ならできる…


どんな立場であろうとも…

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