1 (6) 『堂々巡り』
一
「…は?」
「いや…、は?」
「…は?」
「だから、あの“銀髪女”なら暴行の罪で衛兵に引き渡したよ」
翌早朝。車馬賃を稼ぐべく小教会から持ってきた陶器類を売り捌き、更には倉庫整理のアルバイトを一晩中して帰ってきたヘトヘトのシャトーは、昨晩の出来事として、そんなことを安宿の女将から伝えられた。
「腹が減ったって凄んできたもんだから、サービス外だけど芋を蒸してやったんだ。それなのに、あの女ときたら『私にこんなものを食わすのか』って出してやった芋を投げつけてきてね。…当然怒鳴ったさ。せっかく用意してやったのに何すんだい!ってね。そしたらあの女、急に私に殴りかかってきて、大暴れを始めやがったんだ」
「あのクソ馬鹿女、その体の通りに馬鹿力で暴れやがるもんだから、主人と二人でも押さえつけられなくてね。もう、衛兵を呼んで、連れて行ってもらうことにしたんだよ」
カウンターに肘をつき、軽く腫れた頬を手で押さえる女将は完全に立腹していた。
女将は、ある意味で事態の元凶であるシャトーを睨んで言った。
「…なんだいあのアバズレは。よくもあんなのをウチに入れてくれたね。キチガイが、何度も何度も『私はラディカだぞ』なんて妄言を店先にも聞こえるくらい煩く叫んでくれて、おかげでますます客足が途絶えるじゃないか」
女将に続いて、カウンター奥にいた女将の主人が、事態に顔面蒼白となるシャトーに追撃をした。
「だから『破戒のシスター』なんて間違っても客に取るなって言ったんだ!どんだけ金がなくても世の中には扮別ってのがあるって何度も言っただろ!バカなキチガイ女はお前もだよ!」
「なにさ!誰でも良いから少しでも客を取ろうって言い出したのはアンタだったろうに!」
夫婦は、ラディカが暴れたせいで壁にいくつも穴が空き、花瓶や燭台などの陶器が割れ、多少の血が床に染みてしまったボロボロの安宿で喧嘩を始めた。
それを目の当たりにするシャトーは、自分のせいでこうなったんだと酷い自責の念に押し潰された。下手にラディカを一人にしてしまった自分の愚かさに、身を引き裂かれるほどの悔恨の念を抱いた。
…ただ、そんな後悔をするならば、シャトーは今すぐにでも、ラディカを留置場まで迎えに行かなければならなかった。これ以上、ラディカが誰かに迷惑かけないように。彼女の身元引受人に成らねばならなかった。
シャトーは虚ろになりながら、カウンターの上にそっと1.5フランを置いて立ち去ろうとした。しかし、カウンターを背にしようとした彼女は、寸で女将に肩を掴まれた。
「宿泊代は約束通り1.5フランでいいけどね。迷惑代と弁償代も無きゃ困るよ。軽く見積もって150フラン、きっちり払うまで返さないよ」
「ひゃっ…150フラン…!?」
シャトーは、賠償は払うべきだと当然思った。が、額に絶句した。…実際のところ、150フランでも非常に甘く見積もった額で、破格だった。しかし、シャトーの手持ちは、元々持っていた31フランと6スーに、陶器買値の7フランと、手伝いの駄賃の3フランを合わせて、41フランと6スーしかなかった。彼女は、そんな破格すらどうしようもないほどに困窮していた。
「あっ…!あっあ…、あの…!すいません…!その…」
シャトーは、罪悪感と、罪悪をどうすることも出来ない絶望で潰れてしまいそうになりながらも、せめてもの思いで手持ちの全てをカウンターの上に出した。そして彼女は、もうすぐ泣いてしまいそうな目をして、女将に必死に訴えた。
「今はこれだけしか持っていなくて…。あの…、お金は後日…ちゃんと、全額お支払いしますので…!だから…!その…!だから…!」
もうすぐ泣きそう、というか、もう泣いてしまったシャトーは、ぐずぐずと両手で溢れる涙を拭いながら、女将と主人に何度も頭を下げた。被害者の二人は、安宿の惨状よりもボロボロな修道服を着て泣きじゃくる、あまりにも哀れなシスターを見つめた後、互い、ばつが悪そうな顔を見合わせた。
女将は諦めのため息をついた。
「もういい。41フランは容赦なくもらうけど、それ以外はもういいよ」
シャトーはふるふると首を横に振った。
「だから、もういいんだってば。真面目は美徳だけど、人の善意には遠慮なく甘えておくもんだよ。分かったらサッサとキ…、大事なツレを拾いに行きな」
そう言って、女将はシャトーの肩を小突いた。
いたたまれないシャトーは、女将と主人に何度も頭を下げながら、出口に向かった。出口をくぐり、扉を閉めたあとも、彼女は安宿に向かって数度頭を下げた。彼女は女将らの情けが申し訳なくて、不甲斐ない自分が恥ずかしくてしょうがなかった。
しかし、シャトーはずっと頭を下げ続けるわけにはいかなかった。彼女は泣きじゃくるのを何とか止め、鼻水をズズッとすすった後、荷車を引っ張って、丘のてっぺん、留置場に向けて駆け出した。
……
…
「…あぁ、あの“銀髪美人”ならココの地下牢にいるな。あまりにも怪力で暴れまわるもんだから、殴って気絶させて入れたんだ」
バラルダ公の邸宅もある中央広場の前。教会裁判所の地下にある留置場の入口である、付属詰所に辿り着いたシャトーは、詰所の守衛からラディカの存在を確かに聞いた。
「なんだ?アレはお前のツレなのか?…まぁ、釈放は構わないが、被疑者には裁判に必ず出廷する旨の念書を、お前には被疑者が念書を破った場合に連帯責任者として代わりに罰を受ける旨の念書を書いてもらうぞ」
「はい…、それでお願いします…。本当にご迷惑をおかけしました…」
シャトーは、のそのそと棚から説明書類と念書を出す守衛に、ラディカの保護者として何度も何度も頭を下げた。
「あ…、裁判に出頭する旨の念書は代筆でいいですか…?」
「なんでだよ」
「多分、書いてくれないと思うから…」
守衛は、まぁいいよと、特別に代筆を許した。
その後、シャトーは憂鬱な表情で黙々と説明書類に目を通し、念書に必要事項を書き込み始めた。
その様子を眺めながら、守衛は尋ねた。
「…ところでアレ、何者なんだ?自分のことを『悪女ラディカだ!』って頑なに言い放ってやがるんだが、ひょっとして精神病者か?」
「…!」
茫然自失としていたシャトーは、無意識に、代筆している念書の署名欄にラディカの名を書こうとしていたことに気がついて、手を止めた。
「えぇ…そうかもしれません…」
彼女は代わりに、今思いついた適当な偽名を書いた。…疲れていた彼女は、どうせ、ラディカは裁判に絶対出席しないだろうから、代わりに罪を受けようと自暴自棄になっていた。
「…事情は知らんが散々だな、お前。前までは陰謀論者の親父さんに振り回されて、今は気狂いのおもりか」
留置場に務めて長い守衛は、何年も前から、シャトーが彼女の義父に連れられて、中央広場で頓珍漢な陰謀論の布教を手伝わされていた様子を見てきていた。だから彼は、小さくて健気なシャトーを襲う止めどない不憫に対し、後見人的な面持ちで憐憫していた。
「大丈夫か?お前。ちょっと痩せたんじゃないか?ちゃんとメシ食べてるか?」
「…ありがとうございます。ですが、お義父さんの手伝いは、したいからしていたんです。憐れまないでください」
「どうかな。お前、昔は熱弁する親父さんの隣で、いつも恥ずかしそうに俯いてたじゃねぇか」
「…それは、私が蒙昧だっただけです」
「真面目だな、お前。でも、報われない真面目さだ」
「…過度な実直は苦だぜ?突っ走れても、曲がれずに、壁にぶつかるしかないからな」
「…」
シャトーは、この話は終わりにしてくれと言わんばかりに、書き終えた念書を守衛に突き出した。
受け取った守衛は念書に書き漏れが無いかを適当に確認した後、「ちょっと待ってろ」と、ペンを取り、手続きを始めた。
その片手間だった、守衛が彼女に尋ねたのは。
「ところでお前、その左目はどうしたんだ?」
「怪我だよな?それ。ちゃんとお前の魔術で治せんのか?」
「あ…、これは…」
「その…」
シャトーは結局、手続きが終わるまでの間、左目を奪われた理由を話せなかった。
誇らしい、誇らしいはずの話を、一欠片も話すことが出来なかった。
二
正午前。
一人寂しく地下牢に閉じ込められたラディカはずっと、へたり込み、鉄格子を弱々しく掴みながらえぐえぐ泣いていた。
「げぼく…?」
静かな地下にふと鳴り響いた、コツコツと人の歩く音に、彼女は反射的に反応した。
彼女は期待と焦燥の目を鉄格子の先に向けた。しかし、そこに現れたのは筋骨隆々の守衛だった。
「…ッ!なによ!下僕じゃないじゃない!バーカ!バーカ!お前なんかお呼びじゃないわよ!さっさとどっかいけ!」
そうやって、ラディカが小学生みたいな啖呵を切っていたその時、守衛の背後から見覚えのあるヴェールがひょこっと顔を出した。
「…私もちゃんといますよ」
「…!げぼく…!!」
ずっと見たかった顔が目の前に現れて、ラディカはぴょんと跳ね上がった。次いで、彼女は鉄格子の隙間から両手を伸ばし、なんとかしてその顔に触れようとした。
「あ…、あぁ…!こっち来て…!お願いだからこっちに来て、私を一人にしないで…!」
…自業自得で独りになってしまったというのに、ラディカはまるで自分を顧みていなかった。
シャトーは、そんなラディカに言いたいことが山ほどあった。
だが、とりあえずラディカには泣き止んでほしかったので、彼女はすっと前に進んでいった。
それからしばらくの間、ラディカは鉄格子越しにシャトーの両頬に触れながら、安堵の表情を浮かべて泣きじゃくった。
…
「…落ち着きましたか?」
「ぐすっ…、もうやだ!こんな街きらい!帰る!」
泣いて泣いて、目を真っ赤に腫らしたラディカは、泣き止んだかと思えば子供みたいな癇癪を起こし始めた。
「ね!下僕だってそう思うでしょ!?帰りましょうよ!こんなトコロ、さっさと抜け出してさぁ…!」
…興奮するラディカの一方で、シャトーはとても静かだった。
表情に起伏がなくて、凪いでいて、
…どこか怒っているようで。
「なんだ?お前、コイツに下僕って呼ばれてんのか?」
守衛が半笑いで尋ねた。
「えぇ!そうよ!このシスターさんは私の一番の下僕で、何でも言うことを聞いてくれる右腕なんだから!」
「だってよ、どうすんだ、『下僕』さんよ。もうコイツを牢屋から出しちまっていいのか?」
守衛はキーリングを指で回しながら尋ねた。
ここから出られると聞いて、ラディカがパアッと明るい表情に変わった。
しかし、シャトーは相変わらず静かであった。
「?下僕?どうしたの?」
そのラディカの問いかけに、シャトーはギロリと鋭い視線で返事をした。
ラディカは、そんな彼女のただならぬ視線に対し、「な、なによ…」と高圧的な態度を取りつつも、たじろいだ。
「…ラディカ様」
そして、シャトーは口を開いた。
「大人しくしていてくださいって、言いましたよね?」
「…え?いきなり何?何の話?」
「昨日の話です。私が車馬賃を稼ぎに出ている間、宿泊部屋で大人しく本でも読んでいてくださいって、言いましたよね?あんまり他人に対して、私にするような接し方をしちゃダメですよって、念押しましたよね?」
「はぁ…?は?」
「…ラディカ様が公開処刑の事実を飲み込めないことは配慮します。ラディカ様はまた復活されたばかりだから、未だ動揺していて、頭が上手く回らないのでしょう…」
「だから、ラディカ様は『ラディカ様』で構いません。そこを無理に否定することを、下僕である私は決してしません」
「…ですが、『大人しくしていてください』なんて、子供でも分かる言いつけですよね?ラディカ様が何者かなんて、関係ありませんよね?貴女はもう大人なんだから、こんな簡単なこと、説明しなくても分かるに決まってますよね?」
「…あぁ、貴方、もしかして私に説教してるの?」
「…説教、しています」
「…なんで?貴方、もしかして、まだ自分の立場が分かってなかったの?」
「…!それは、ラディカ様の方でしょう!?」
シャトーはつい、語気を荒げた。
だが、ラディカは怯まなかった。
何故なら、彼女には根拠があった。
下僕と交わした確信があった。
だから、彼女は全くもって自信満々に言い放った。
「私はラディカよ。ラディカという立場よ。…それ以外に何を理解する必要があるの?」
「…ッ!だから…!」
「…その立場は、もう私にしか通用しないってことを、私はずっと言っていて…!だから…、他人に迷惑かけるなって、そう言って…!」
「…また意味分からない嘘を言って、今度こそ私を誑かそうって訳?」
「嘘って…!そんなわけ…!」
「嘘よ。嘘。出会った時に貴方がついた、“あのこと”は嘘だって、貴方自身も認めていたじゃない?」
「それとも、今更撤回するの?その行為の意味…、貴方はちゃんと分かってるの?」
シャトーの言葉が詰まった。
「ねぇ?貴方はどっちなの?」
「ど、どっちって…」
「…ここから私を出すの?出さないの?」
「…ッ!」
「貴方は私の下僕で、私は貴方のご主人様なんでしょ?だってそう契ったじゃない。今更違うなんて言わないわよね?」
「ねぇ、下僕?私の言っていることが分かるなら、さっさと行動で忠義を示しなさい」
「さぁ、ちゃんと見てあげるから、言ってみなさい」
「…、私は…!私…、は…」
「ラディカ様の…」
…下僕であるシャトーは、もう何も責められなかった。
「牢の鍵を、お願いします…」
…打ち止めであった。しがらみに囚われる彼女の権能では、これが限界であった。
彼女は、下唇と共に悔しさを噛み殺すしかなかった。
「何というか…、今の会話は、聞かなかったことにした方が良いな?」
事態が笑い事じゃないことを察した守衛は、酷い顔をするシャトーを心配しつつ尋ねた。
シャトーは黙って頷いた。
守衛は了解したら、彼女の肩を叩いた後、黙々と牢の開錠を始めた。
…そうして、悠然に自由の身になったラディカは、真っ先に守衛の元にツカツカと歩み寄り、彼を平手打ちした。
彼女は、コイツさえいなければ、自分は閉じ込められなかったんだと逆恨みしていた。
たから彼女は、頬を押さえて痛がる彼の姿を見てニヤリと気持ちの悪い笑みを浮かべた。
満足した。
そして、彼女は「さ、行きましょ?」と、大好きな下僕の方に振り向いた。自分勝手に自分の幸せに溶け込もうとした。
その直後だった。
彼女の頬に、小さな手の平が思いっきり叩きつけられたのは。
三
「…え?」
ラディカは、赤く腫れた自分の頬に指先で触れて、呆然とした。
彼女の眼前にいるシャトーは、息を荒げて、激しい怒りに駆られた表情を見せていた。
「叩いた…、の…?この私を…?」
…実際に叩いたのは、シャトーの手ではなく、彼女が魔術で出現させた透明のマジックハンドであった。
≪高位 変性魔術 空玖手(からくて)≫
「なんで…?貴方は下僕で、私はご主人様なのに…?」
「関係ありませんよ…、そんなこと…!」
シャトーは低い声で言った。
その迫力に、ラディカはビクッと怯えた。
「謝ってください」
「えっ…?」
「叩いたこと、守衛さんに謝ってください」
ただならぬ状況に、守衛が「俺は大丈夫だぞ…」と言葉を挟んだが、シャトーは意に介さなかった。
彼女はひたすらに、鋭い目つきでラディカを睨み続けた。
「な、なによ…、下僕の貴方が私に命令…?」
「ば、馬鹿にされたものね…、この私が『悪女ラディカ』だと知っていて、そんな狼藉を取るなんて…?」
ラディカは怯みつつも気を取り直そうとした。いつも通り、気品高く悪女らしく在ることで、下僕を圧倒しようとした。
しかし
「うるさい!!」
守衛は、シャトーからすれば、自分をずっと見守ってきてくれた叔父さんのようなもので、義父の次に親しく、大切な人だった。
何より、彼女はこの期に及んでも自分以外の誰かに迷惑をかけるラディカに耐えられなかった。
だから、今に沸く彼女の怒りは、ラディカとの特別な関係の遵守を完全に上回っていた。
「謝って!ラディカ様、守衛さんに謝ってください!だって…、私たちがどれだけ彼に迷惑をかけたと思ってるんですか!?」
「あの宿屋のご夫婦にもそうですよ!迷惑どころか、危害すら与えてしまったんですから!」
「こっ、この私に頭を下げろというの…!?有り得ない…!信じられない…!」
「そんなの絶対に嫌よ…!そんなの、そんな、権威を捨てるようなことなんて…、あっ!」
拒絶をするラディカの全身を、四方八方から現れた透明の手々が一気に取り押さえた。
もちろん、シャトーの力。
強烈な力、全く身動きが取れない。
やがて、透明の手々はラディカの身体をマリオネットのように動かし、彼女の身体をゆっくりと守衛の方に向けさせた。
「なっ、なんで…!放して…!放してよ…!」
しかし、何を訴えられようともシャトーは止まらない。
ラディカの腰は少しずつ前に折られ、彼女の頭は段々と下げられていった。
…そうして、透明の手々が、守衛相手にラディカを完全に謝らせた時、彼女はボトボトと大粒の涙を流していた。
「なんで…、やだ…、こんなのやだ…」
「やめて…、もうやめてよ…」
無理やりか否かは関係ない。下民に頭を下げているという、その一点の事実が、ラディカのプライドをズタズタに引き裂く。
お母様への愛に陰りが見えて、お母様を裏切ったような気分にさせられる。
『ラディカ』が、壊れてしまう。
「なぁ…!俺は本当に大丈夫だからよ…、そろそろやめてやれ!」
鬼気迫るシャトーを見かねた守衛が、彼女に叫んだ。
その呼びかけで、彼女はようやく怒りから我に返った。
透明の手々はパッと消滅した。
拘束が解かれたラディカは、その場に倒れ込んだ。
が、すぐに立ち上がって、彼女は脇目もふらずにその場から走り去った。
「下僕の馬鹿!!」
そう訴えて、彼女はシャトーの目の前から消え失せた。
シャトーは自分の衝動的な行いに絶望してへたり込んだ。
やり過ぎてしまったか?いや、あれくらいしないとラディカ様は分かってくれない。
でも、ラディカ様に無理強いをして、あの方を悲しませてしまった。
あの方だって、私と同じで見えないところで苦労しているかもしれないのに、戦っているかもしれないのに。
でも、ラディカ様はもう『ラディカ様』ではなくて
だけど、私は『下僕』で在りたくて
それで…
そうやって、頭の中で思考を堂々巡りさせていたシャトーの肩をもう一度叩いて、守衛は言った。
「真面目だ、…真面目過ぎだ。そんなの、苦しくてしょうがねぇだろ…?」
一度言われたことを、また言われた。
でも、一度目とは違って、その言葉には絶大な殺傷能力があった。
──────────────────────────
【人物紹介】
『ラディカ』
自室では裸族だけど、宿では流石に服を着る。
『シャトー』
別に冷え性とかじゃないけど、部屋ではいっぱい着込んでモコモコになるのが好き。だってそっちの方が女の子っぽくて可愛いじゃん。
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