第0話

『花なんか別に好きじゃなかった。』


 空へって行った者達を思い出してしまうから。


 好きじゃないと思っていた。


 ──君に出会うまでは。


 ***


 夢をみていた。


 ──ぽつんと雫が零れ、伝う。


「…………なんで、泣いて……?」

「目が覚めたようだね」


 伝った雫を拭い、呪いを落とす。


 とても醜く、触れられたものではないのに。


 飄々としている君が嫌だと思ってしまった。


「な……」

「やぁ、おはよう。幸」

「…おは、おはよう」


 君は飄々としながら空を見つめた。


 瞬間。


 何故泣いて居たのか理解わかった気がした。


「──こうッ!」

「な、何だい…」


 ケホッと咳き込みながら君の手を握り締めた。ほんのりと熱帯びた君の手は温かくて泣きそうになりかける。


 けれど、そんな事はどうでもいい。


 今一番、君に言いたい事があるのだから。


 頬を染め、君をまっすぐに見た。君は訳が分からないと言う表情をしながら見つめ返してくれる。


「いつもありがとう…!君が居る。花を空へ届けてくれるから僕は安心して守る事が出来る」

「少しでも幸の力になれているのなら願ったり叶ったりさ」


 負けじと見つめ返しながら思いの丈をぶつけ合う。それは魂と魂のぶつかり合いとも言えるものだけれど、今の僕には必要な事だと感じながら吐いた。


「──やっと言えた」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る