第9話


「なら、どうして……ここまで来たのは、私のせいだって思いながらっ…!」


『きたのに』。


 そう声に出したはずだった。


 しかしその後の言葉が続くことは事はなかった。何故なら。


「響、もういいんだ。囚われなくていいんだ。俺の事を想って身を投げた響を見ているのは辛かった。胸が張り裂けそうだった。だから俺は」


 抱きしめられていたから。


 だから出なかった。


 鼓動が聞こえてしまうのではないかと言う思いと死して尚も自分を想ってくれていたと言う事実に視界が滲む。

 想い人は響の瞳から溢れる涙を拭いながら少年を眺め、口を開く。


「この人に頼んだんだ。響をここまで連れて来てくれって」

「この子じゃなくて、この人……?」


 子じゃなくて?と言う少女──響の瞳が再びひび割れる。少年はそんな響を眺めながら答えた。

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