第7話


「……切符を」


 遠慮がちな声で少年が言う。


 ──そうだ、切符。


 と少女は手にあった切符を渡そうとした。

 だが何故だか手が震えて渡せない。


「あ、れ……?ごめんなさ、何でだろ…」


 おかげで切符は宙を舞ってゆく。


 そんな事になるなんて誰が思うだろうか。


 それでも少年は微笑み、宙に舞った切符を手中に収めると切った。カチッと歯切れのよい音と共に少女の意識が絶たれる。


「──か、──よう」


 次に少女が目を覚ましたのは少年の声でもない、潮とさざめきの中だった。


 どうしてこの場所なのか。


 少女は滲む視界の中で強く、呪う。


 吐く息は列車に乗る前と同じ位、冷たくて。……嫌だと思うも足は進み、体は正直でいる。抗いたくても抗えない性のようだと少女は思いながら前を見つめた。──筈だった。


「っ──!」


 だが、前を捉えた瞬間、少女の眼が見開かれる。そのは告げていた。


「響、久しぶり」


〝どうして貴方がここに居るの〟──と。

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