第3話
「お姉さん、乗るなら今だよ」
「乗るなんて言ってな」
にっこりと笑う少年に少女が抗議する。だが、それは無へと帰した。何故なら──。
「なら何で列車の前に居たの?」
少年の紺碧の瞳が波のように揺れ、弧を描いたからだ。少女の手に渡った切符は『わたしをここから出して』と言わんばかりに凪いだ。少女は唇を噛み締めると俯く。そんな少女を少年は一瞥すると右手を上げ、呟いた。
「まぁ、そう簡単に答えてはくれないよね。と言う訳だから答えは中で教えて欲しいな」
「……貴方、少年なんだよね」
少女の呟きを聞いていた少年が虚をつかれたように吐いた。その顔には驚きと戸惑いが滲み出ていた。少年は何を言うでもなく微笑み、先へと促す。少女は少年を一瞥すると中へと足を運んだ。澄んだ空気に肺が傷む。けれど、不思議と怖くはない。何故だろうと視線を巡らせた。刹那、掠れた声が口から次いでた。
「そっか」
少女は辺りを見渡しながら、気づく。
車内は夜空に輝く、星の凝縮された光で満ち溢れていることに。
「気に入ってくれたかな」
不意にあの少年の声が聞こえた。息を呑むと同時に目を見開いた。その格好と雰囲気に。気圧されたと言ってもいいだろう。
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