第2話
行き交う人の視線が痛く、耐え難い。そして逃げ出したい。ああ、何故。何故こんな事に…!少女は目の前を恨めしそうな視線で見つめた。
「お姉さん、どうしたの?怖い顔して」
少年は依然、喋り続けている。しかし、その声は少女によって遮られるのだった。少女は仄かに顔を赤らめ、呟く。
「……ぷ」
「ぷ?」
少年が首を傾げながら訊ねる。その瞳は好奇心に満ちている。少女はいたたまれなくなったのか顔を真っ赤にさせながら言った。
「……切符」
「…ああ、切符なら。はい、お姉さん。ぶつかってしまったお礼に」
何事もなかったかのように切符を取り出す少年。それを凝視する少女。両者の間に沈黙が訪れた。沈黙と共に風が少年の髪を凪いでゆく。それと同時に少年の瞳には優しさが混じる。少女は震える手を抑えながら切符を受け取った。刹那、少年の声が耳元で響くのであった。
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