第4回放送 〜ラストダンス〜 3
「今回の放送はクラスでぼっちの更級をいじり倒す放送なんだから」
『ぼっちって言ったぁ!! それだけは言わないでって言ってるのにぃぃ!!』
「さて……時間を稼いだおかげて本命のメッセージが来たぜ……CN:”1年1組の女子”。これは更級が孤立してるでお馴染みのクラスメイトだな」
『それは言わないでよっ!』
「【普段のクールな更級さんとはイメージが違いすぎてやばいです!! いい意味でイメージ崩壊しました!】」
『いい意味なのかな……? それならよかった──』
「【これからも、距離を置いて温かく見守ろうと思います】」
『──ちっともよくない!!』
「えーと、他にもこんな声が来ているな、CNはないけど……【男子たちからのセクハラに負けないでください。私は夏休み明けに突如表れた紅葉ちゃんをずっと応援していました!】」
『あ、ありがと……ちゃんとした人もいるんだね』
「【紅葉ちゃんイコール金髪幼女説を推していた自分にとって、今日の放送は解釈一致にほかなりません!】」
『……ちゃんとしてる、はず……』
「【ですがたった一つ! どうしても納得いかないことがあります!】」
『な、なに……?』
「【紅葉ちゃんにその胸は余計です。出直してきてください】」
『……』
「ちゃんとしてるどころかとんでもないやつだったな」
『……うん』
「おお、さらにこんなのも来たぜ! CN:実名OK、
『おおーナオっちじゃん! 久しぶり! 去年同じクラスだったの!』
「【さらがクラスで孤立してると聞いて驚きです! さら……何かまたバカをやらかしたの?】」
『やってないよぅ!』
「【1年1組の皆さん聞いてください。さらはバカの子なんです! でも、心の優しい純粋な子なんです!】」
『ちょっと!?』
「【去年の4月早々、まだ誰も今のクラスに馴染んでいない頃に、さらが皆の緊張をほぐしてくれたんです】……なんだ、いい話じゃないか」
『……』
「【朝イチの授業で先生にあてられた時に、先生のことを寝ぼけてお母さんと呼んだあの伝説の事件は今でも私たち2年の語り草に……】」
『やめてっ! それは忘れてっ! いまだに夢に見るもんそれ!!』
「【他にも伝説はまだまだあります。あれは現代文の授業のときです】」
『……現代文? なんかあったっけ?』
「……ここに来てまさか本人の自覚がないパターンあんの?」
『ほんとに記憶がないんだけど……続き読んでよ』
「【走れメロスの有名な冒頭”メロスは激怒した”ってありますよね?】」
『うん、有名な一節だよね』
「【当時、現代文の授業でさらは先生に当てられて音読することになったんです】」
『まあ、そんなことがあったような……でも変なことしてないよ?』
「【さらはその冒頭の部分をこう言ったんです。”メロスは──
『え』
「【その時に教室中を突き抜けたあの衝撃……わたしたちは生涯忘れることはありません! あまりの衝撃に誰もが言葉を失ってしまい、先生すら誤りを訂正することはありませんでした】」
『ねえみんな言ってよ!? 全然気づいてなかったもん!』
「【1組のみなさん、ふつつかな子ですが、ただちょっとおバカなだけなんです。どうか優しく付き合ってあげてください】」
『……』
「フッ、更級よ、いい友達を持ったな……」
『全然よくない! 友達なら私の恥を全校生徒に広めないもん!』
「いや違うぞ更級。この行いはまさに親友と呼べるものだ。俺にはこんな真似はできない」
『どこが!? ただあたしの恥を暴露しただけじゃん!』
「現在進行形でこのナオっちも校内に恥を広めてるからな」
『……どういうこと?』
「いやだって、高梨奈央って実名だろ?」
『うん』
「これ先生も聞いてるからな? 実名で送ったら──先生が即刻没収しに向かうに決まってんだろ」
『あっ……』
「昼休みに携帯使っちゃいけない決まりがあるんだから、今頃先生が現場に急行してんだろ」
『……ナオっち。これでおあいこだねっ☆』
「“あ、ほんとだ……”、“え、やばいよね?”、“これやばくない!?”……ナオっちが矢継ぎ早につぶやいて──たった今交信が途絶えた……」
『合掌』
「ちなみに、俺たちは放送室のPCを使用しているので携帯の不適切利用には当たりません」
『えっ? 普通にスm──』
「──じゃあそろそろラストで! せっかくだから好きなやつ選んで良いぞ?」
『え? じゃあ〜これっ! えーとCN:”この素晴らしい裏切り者に祝福を!”さんから!』
「……うん?」
『えっと……【そこにいる裏切り者は授業中に凛たんと手wo──】】』
「──やっぱもう終わりにしよう! もう時間もないし! な!」
『う、うん……わかったよ』
「じゃあまあ……好きなだけ更級いじってきたけど、初めての放送はどうだった?」
『どうだったって……いや、なんか良くわからないままここにいて……もう胸がいっぱいっていうか……これ流れてるんだよね?』
「もちろん」
『……そ、そうなんだよね……なんか2人で放送室で2人で向かい合って話してると、いつもの部室って感じがして普通に喋っちゃったよ』
「意外にそうなんだよな……! わかるわかる」
『いきなりすぎてびっくりしたけど……なんとなく白崎くんがあたしのためにしてくれたんだなって感じがするよ』
「…………気のせいだろ」
『ほんとに頭が上がるっていうか……』
「できれば下げてほしいけど」
『ほんとに頭が下がらないっていうか……』
「なんで頑なに下げないの?」
『でもなんかこの気持ちは上手く言葉にできないね……』
「確かに言葉にはできてないね」
『もう胸がいっぱいっていうか……うん……ほんと胸がいっぱいっていうか……』
「何回胸がいっぱいって言うんだよ? 語彙力なさすぎだろ」
『だって……ほんとなんだからいーじゃん……!』
「一体いくつ胸あるんだよ……」
『1つだよ?』
「……いや別にほんとに気になってるわけじゃないから」
『あっ! ……男の子的には2つってこと?』
「”閃きました!”みたいな顔してるとこ申し訳ないがそういう意味じゃねーよ……まあたしかにそうではあるけど!」
『え……じゃあ……そういうこと?』
「もうそういうことでもなんでもいいわ。ちょっと気になっただけだから」
『気になったんなら……白崎くんなら……まあ教えてあげてもいいけど……』
「……急にもじもじしてどした?」
『だって恥ずかしいじゃん……でも…………良いだよ……』
「……良いだよ?」
『……うん』
「……え? どゆこと?」
『どゆことって……最近測ったし』
「最近測った? え、いきなりお前何の話してんの……?」
『…………胸の話でしょ?』
「はあ? …………あ。そういうことか」
『……うん』
「なるほど、そっちの
『……』
「……」
『……』
「──いやちがうちがう!! えっなに急に凄いこと言っちゃってくれてんの!? 誰が急に公衆の面前で胸のサイズ聞くんだよ!?」
『……』
「いやそういう意味で言ったんじゃねーから!! ねえ待って待ってこれは今のご時世的に一発アウトなんだけど!? 何!? お前俺を社会的に抹殺したいの!?」
『……』
「もじもじしてないでなんとか言ってくれよ!? ねえほんとにやばいこと言わせちゃった雰囲気出ちゃってるから!! こんな衝突事故ある!? これ訴えられたら多分俺有罪だよね!? 負けるよね!?」
『……』
「おいリスナー! 頼むぞ!? これだけは絶対拡散すんなよ!? 絶対だぞ!! 頼むから!! ねえほんっとお願いだから!! 何でもするからお願いしますって!!」
『……』
「どうせもう手遅れなんだろうな! あー俺知ってる! 俺知ってるもんこの感じ! なんでいつもいつも放送の最後に地雷が埋まってんだよ!?
もう──二度と放送なんてしねえよおおぉぉぉおお!!!!」
※この後の参謀がどうなるのか……はさておき。
皆様からの感想・フォロー・レビューでもなんでも待ってます!
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