第4回放送 〜ラストダンス〜 1
『……耐震工事の終了は9月末となっています。以上で放送を終わ──』
「──終わるのはまだ早いぜ?」
『……えっ!? ちょっと!? 今放送中だよ!?』
「大丈夫だ問題ない。というわけで第4回so cube──今回は参謀による特別編!」
『そ、そーきゅーぶ?』
「柊木に散らばるリスナーたちよ──お待たせっ!!!」
『な、なにが起こってるの……?』
「今日は旧校舎だけではなく、新校舎までもこの放送をカバーしてるぜ! つってももう旧校舎に3年もいないんだけど……ついに念願の柊木学園高等部の電波ジャック!」
『いきなりすぎてなんにもついていけないんだけど……ねえこれ大丈夫? あとで怒られたりしない?』
「大丈夫だ。これも立派な旧放送部の活動だからな」
『え、そうなの? なんだ〜心配しちゃったよ』
「それに──怒られるときは俺も一緒だから」
『大丈夫じゃないじゃん!? しかもさらっとあたしを主犯扱いしてる!?』
「いつも通り、cubeへのメッセージは公式SNSのDMを送るか、旧放送室前のメッセージボックスにメッセージを投函してくれよな!」
『あの箱ってそういう意味だったんだ……』
「ちなみに勉強以外での携帯の使用は許されてないから、先生にバレないようにな! 我が部は一切の責任を負いかねるぞ☆」
『無責任すぎない?』
「というわけで早速、参謀からリスナーに紹介しよう……cubeの新メンバーの更級さらこと、紅葉ちゃんです!」
『え、な、なに……は、はじめまして……』
「おいおい更級〜。そこは”本名とあだ名が逆になってる!”ってツッコんでくれないと」
『そんなのいきなり無理だよぅ……!!』
「ちなみに公式おにーちゃんであるリク兄いわく、”紅葉ちゃんはこの旧校舎の放送室のみに宿る妖精。その妖精が1年1組の更級さらの姿を借りてこの現代世界に舞い降りている”とのことだ」
『……何を言ってるの?』
「つまり紅葉ちゃんが本体で、更級さらは世を忍ぶ、かりそめの姿というわけだな」
『何を言ってるの!?』
「そうそうそんな感じでツッコんでくれれば。今回はまあいいけど次回のso cubeからは頼むぜ?」
『次もあるんだ……っていうか、これはどんな校内放送なの? 内容が全然わからないんだけど……』
「おいおい……そんな事も知らねーで旧部に入るなんておこがましいもいいとこだぜ?」
『ご、ごめん……』
「ったく……いいか? この参謀が直々に説明してやるからよく聞けよ? 俺たち旧部がやってるso cubeってのはなあ………」
『……so cubeってのは?』
「…………一体何なんだろう?」
『なんで本人が知らないの!?』
「いやだって……いつの間にか始まってたし……」
『校内放送でそんな事あるわけないじゃん……!』
「それがあるんだよなあ……」
『?』
「よし! ってわけでこの放送を聞いてるお前ら、こいつに一体この放送がどんな内容なのか教えてやってくんない?」
『丸投げ……』
「ちょうどいいや。そのメッセージを待っている間にまずは前もって募集しておいた理数科のバカ共からのメッセージを紹介していいか」
『メッセージ? いいけど……』
「
『これあたしのことなの? こ、こんにちは……』
「【僕は紅葉たんのフォロワー、通称“わかばー”の一人です】』
『わ、わかばー? ど、どうも……』
「【僕たちわかばーは、紅葉たんの澄み渡った声とその笑顔を支えに学校へ登校していました】」
『……笑顔? どこで見てるの……』
「【スピーカーからです】」
『予知!?』
「【ですが、ここしばらく、紅葉たんのお知らせ放送がないので、わかばーは栄養を接種できていません。寂しいです】」
『そ、そっか……そんなに待ち望まれてるとは知らなかったよ』
「【これからも、是非、校内のおにーちゃんたちにその声で呼びかけてくださると嬉しいです】」
『あ、ありがと……どんな内容かと怯えてたけど意外にまともな内容で──』
「【色々なところが元気になります】」
『──サイテーなんだけど』
「まあ理数科の奴らだから最後のはご愛嬌として」
『どこが?』
「さて……お、さっきの質問に対して続々とメッセージが来てんな……じゃあ今度はお前が読んでみ?」
『や、やってみる! CN:"第4回放送を待ち焦がれた者"さんから』
「待たせたな!」
『【ついに待ち焦がれた参謀の復活が嬉しいです! 待ち遠しすぎて夜しか眠れない日々を送っていました】』
「ただの熟睡」
『【紅葉ちゃんへ、この番組は──これからの政治経済について語る社会派の硬派な番組です】』
「──へっ?」
『どしたの、白崎くん?』
「い、いやあ、別に……」
『【学生が自身の視点やアイデアを交換し、各々が視座を上げて政治経済を自分の言葉で語っていくのがこの番組のモットーです】……ほんとにこんな番組やってたの? 全っ然イメージできないよ?』
「ま、まあな……」
『【というわけで早速。白崎氏は先日の衆議院選挙の結果について、どうお考えでしょう?】』
「…………」
『え、黙ってどうしたの? もしかして実はこんな番組──』
「そうですね──与党の大勝に終わった今回の衆議院選挙は、政治の地平を変える重要な転換点を示していると言えるでしょう。この結果は、有権者の現政権への支持を反映しており、政府の施策やリーダーシップに対する信頼が高いことを示唆していますが、それと同時に今の野党に対する期待・信頼の低下の表れとも捉えることができるでしょう」
『お、おお……』
「野党は従来の政府の在り方にメスを入れる役割も一定担っているわけですから、国民の関心や要望を積極的に取り入れて支持を集めていく必要があるでしょうね。このあたりについて、更級氏の考えをお聞かせ願いたい」
『ふえっ!? あたし!? え、えと…………あ、あたしもメスを投じていく必要があると、お、思いましたっ!!』
「……まあ更級らしいコメントというか」
『ど、どうかなっ……? あ、あたしもちゃんとしたコメントできてたでしょ! お姉さんだからね!』
「うーん……まあ……」
『えっなになに? 意外にコメントできてびっくりしてるって?』
「ああ……まあ確かに驚いてはいる」
『ふふん、あたしだってちゃんと勉強してるんだからね!』
「そっか。じゃあ俺から言えるのは一つだけ──メスは投げんな。しかと持て」
『……ふえっ?』
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