この面白さが自分の文章力で伝わるか、正直自信がない。でもこの回は好きだ。
保健室に行くと、保健室の先生が不在だった。
どうやって凛に連絡を取ろうと思っていたけど……これはちょうどいい。
スマホを取り出して凛に電話をかける。
電話に出るために場所を移動しているのだろうか、しばらくコール音が続いた後──
『……もしもし』
「可及的速やかに帰ってほしい」
『……すぐに連絡くれるようになったかと思えば、いきなりそんな言い草はないと思うけど?』
「いやこれはまじで頼む。この際今日の暴挙については一旦水に流すから、とにかくいち早く学校外に出てほしい」
『…………なんで?』
「凛がいると絶対昼休みに騒ぎになって人が集まるじゃん? この後のプランが崩れるからまじで困る」
神月凛はこの前の番組出演を機に知名度が上がった。
そんな彼女が現在、柊木学園にいるとなったら大騒ぎになるのは必至。
幸い理数科は普通科の教室からは離れているため、まだ騒ぎにはなっていないが、一度バレると、大騒ぎになって放送どころではなくなる。
せっかく校内放送をしたとしても誰も聞いてくれないだろう。
そうなると、せっかく今日に向けて色々と根回しした準備が無駄になってしまう。
「ってわけでまじでよろしくな。じゃ」
『……』
……凛から返事がない。
「おーい……凛? どした?」
『なんかさ──軽くない?』
…………どういうことだ?
「軽い、と申しますと?」
『確認なんだけど……あたしサプライズで来たわけじゃん?』
「はい」
『おにいはあたしが来ること知らなかったわけじゃん? 後ろ見たら今をときめく人気女性声優がいたわけじゃん?』
……自分でそれ言っちゃうんだ。
「まあ……そうですね」
『それにしてはさ……なんか反応薄くない?』
困惑しているような様子が声から伝わってくる。
「え……いや……すごい驚いてたと思うけど」
驚いてないといきなり「うううううyeah!」なんて言うわけないのに。
『うん。その場ではね。うん、たしかに驚いてたね。その場ではそうだったよ』
「え、驚いてたじゃん? だから全然軽くなくね?」
『いや、まあそうなんだけど……なんか、それにしてはやけにあっさりしてるっていうか……念の為聞くんだけどあたしが来るって結構大きなイベントじゃなかった?』
「そりゃもちろんビッグイベントだよ? めちゃびっくりしたって」
これは
『だよね? そうだよね? その割になんか……うーん……もうちょっとあってもいいんじゃない?』
「……あっても? 何が?」
『なんていうか、さっきの教室内のやり取りの余波? 自分で言うのも何だけど、あたし結構なことしたと思うんだけど?』
「いや、だから電話してんじゃん」
……凛は何をおかしなことを言ってるんだろう?
『うんそういう意味じゃなくて。うーん、なんて言えばいいのかな……ひとくだり終えて、もう次のくだりいこうとしてる感が強すぎるっていうか』
「……」
『カメラ止まった後の冷めた芸人さんみたいなものを感じるっていうか』
「……」
『”もう十分撮れ高取れたし尺も稼げたから、もうこのくだりいいや”……みたいな?』
「……」
『しかも気に食わないのが──それでそのまま乗り切ろうとしてたよね?」
……。
「さっきそのまま電話を切って押し切ろうとしてたよね?』
…………。
『っていうか──今もバカなふりしてこの場を乗り越えようとしてない?』
………………。
凛の疑問に対して俺は、目をつぶりながら上を向き、ふぅっと息を吐いた後──
◇
保健室に行くと、保健室の先生が不在だった。
どうやって凛に連絡を取ろうと思っていたけど……これはちょうどいい。
スマホを取り出して凛に電話をかける。
電話に出るために場所を移動しているのだろうか、しばらくコール音が続いた後──
『……もしもし』
「──おい! なんでお前学校来てんだよ!! 俺を殺す気──」
『──いやもう遅いから。今さら急にオンで来られてももうこっち冷めきってるから』
……。
『言い訳があるなら聞くけど?』
凛の疑問に対して俺は、目をつぶりながら上を向き、ふぅっと息を吐いた後──
◇
保健室に行くと、保健室の先生が不在だった。
どうやって凛に連絡を取ろうと思っていたけど……これはちょうどいい。
スマホを取り出して凛に電話をかける。
電話に出るために場所を移動しているのだろうか、しばらくコール音が続いた後──
『──怒るよ?』
「…………違ったか」
俺は目をつぶりながら上を向き、ふぅっと息を吐いた後──
◇
保健室に行くと、保健室の先生が不在だった。
どうやって凛に連絡を取ろうと思っていたけど……これはちょうどいい。
スマホを取り出して凛に電話をかける。
電話に出る『──ほんとに怒るよ?』
「………」
『急に電話切られたと思ったらまた電話かかってきて、何もなかったみたいな感じで仕切り直しされても困るんだけど』
「……」
『長年おにいの妹やってるから分かるけど……もう心ここにあらずって感じなんでしょ? 早く何かやりたいことあるんでしょ?』
「…………いや、そんなことは……」
『怒らないからほんとのこと言って?』
凛の疑問に対して俺は、目をつぶりながら上を向き、ふぅっと『次電話切ったら一生口聞かないから』
……。
……。
「……はい。やりたいことがあります。そっちに目がくらんだばっかりに、凛さんのことをおろそかにしてしまいました」
教室に戻ったらどんな目に遭うか……それが怖くて本能的に意識を第4回放送に向けていたのかもしれない。
『……他に言うことないの?』
「…………ごめんなさい」
『ん。素直でよろしい。じゃあ今は許してあげる──』
やっと聞けた凛の優しい声色の言葉に、ホッと胸をなでおろす。
──よ、よかった……許してくれた……!!
確かに凛のことを多少雑に扱ってしまったのは事実。
でも温情判決を下してくれたということは、無慈悲な凛にもちゃんと兄への愛情が──
『──今度帰ったらガチ説教だから』
──憎しみに変わったらしい。
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