いや前話感想多すぎてビビる。何があった……どこにでもよくある話なのに。でも今後もそれぐらい多いと助かりますよ?
「それでは、メインヒロイン捜索会議を始めようではないか」
「捜索って……捕まえんなよ」
『うおおおおおおおおおお!!!』
『お前かああああ!!!』
昼休みの教室で、俺と二宮はコンビニで適当に買った昼ごはんを食べながら、作戦会議を始める。
「それに先立って、夏休みの間に公式のcubeアカウントで新入部員を募る投稿をしておいた」
「おおなるほど。準備がいいな」
『貴様、妹がいると言っていたよなあ……!!』
『お前もいると言ってたはずだ!』
俺たちが探さずとも希望者がいるなら、旧部の部員足りない問題はすぐに解決する。
「しかし……希望者は0だった……!」
「……まじかよ」
『どこに隠れてやがる……?』
『この中にいることは調べがついてんだ!』
まあそりゃそうだよな。
なかなか今の旧部に入るのはハードルが高いのは間違いない。
『凛たんの兄は誰だあああああああああ!?』
「──うるせえよてめーら!!!」
俺は疑心暗鬼で同士討ちをしているクラスメイトたちに向かって叫んだ。
「お前たち、みっともないぞ」
二宮がそれに続く。
『わ、わりい……』
『だが二宮、お前が落ち着いているなんて……』
「言っただろう? 兄探しは寮に帰ってからじっくりすればいいと。そっちの方が──皆で処刑しやすいだろう?」
『た、たしかに……!』
『そうだよな!』
『オレたち……今までどうかしてたよ!』
──お前ら、今もどうかしてるよ。
……ちなみに、例の件で凛を怒らせてからは、まだ一度も連絡は取れていない。
メッセージを送っても無視されてしまう。
早いとこ凛のご機嫌を取らないと……セカンドインパクトは避けられない。
今日の夜、再度連絡してみよう。
と、その時。
──ピーンポーンパーンポーン。
校内アナウンスの放送開始音が教室のスピーカーから流れる。
といっても、別に全然珍しいものでもないが。
「なあ二宮──」
「──静かにしろ!!」
「え? どゆk──」
喋ろうとすると、何故か急に口を抑えられる。
そして──
『放課後の部活連の会議について、お知らせです。本日の放課後、各部の部長は2階の職員室前にお集まりください。繰り返します。本日の放課後……』
と、ごく普通の校内アナウンスが流れる。
といっても俺たちには全く関係がない内容だが……。
「……何だよ?」
「いいから放送が終わるまで黙れ」
二宮は放送を聞き入るように、目をつむりながらうんうんと頷いている。
周りを見れば、さっきまで談笑したりふざけあったり殺しあったりしていた連中もじっと黙って放送を聞いている。
耳に手を当てている奴までもいるくらいだ。
──ピーンポーンパーンポーン。
と、音が鳴って放送が終わった。
「急に何だったんだよ?」
「分からないのか?
「どういう原理?」
まあ確かに透明感あふれる癒やし声であったことは否定しないが……。
「つーか紅葉ちゃんって誰だよ?」
『夏休み中の登校日から突如現れた柊木の妖精だ』
『みんなに幸せを届けてくれる柊木生のマスコット的存在だぞ』
『声を聞いていると癒やされるんだよなあ……』
と、クラスメイト共が答える。
どうやら即答できるほど、認知度は高いらしい。
「お前のために説明すると、紅葉ちゃんは以前の放送でも紹介したとおり、最高の妹声を持つ柊木に宿りし妖精だ」
紹介された記憶はないが、こいつの言うことは基本的に頭に入ってこないので仕方がない。
「端的に説明すると、そうだな……オレの妹だ」
「端的すぎる」
「ちゃんと説明すると、オレの妹にしたい部門No.1だ。分かったか?」
「ああ、よくわかったよ」
お前が説明する気がないことが。
「……お前、最高の妹声って、りn──神月凛のときも言ってなかったか?」
「むむっ! よくぞ聞いてくれた! 一口に妹といっても、妹とは多種多様な生態系をもつに素晴らしい存在なのだ。例えば年の離れた兄と妹という古典的スタイルから、やはり捨てがたい義妹スタイル。それに双子の妹というパターンも有るのだ! さらに──」
「わかった! ストップストップ!」
目を輝かせて喋る二宮。
ここまで熱くなれるのは才能だろう。
もし、こいつに妹がいたら一体どんな人生を送っていたのだろう?
そうなったら、逆に姉に対して──いや二宮先生の時点で無理だわ。
「そもそもオレの築き上げた妹声データベースを参照しても、あの透明感あふれる妹声を持つ女子生徒は柊木学園高等部に存在しない」
「……それならこの放送はどこからやってんだっつー謎が生まれて、妖精扱いってわけか?」
こいつの妹への執念を考えれば、本当に女子生徒の声を判別できてもおかしくないが……。
「っつか、いつからこの人が放送するようになったっけ? 多分始めて聞いたんだが」
「夏休み中の登校日からだな」
「で、2学期始まったばっかでなんでこんな紅葉ちゃんってやつの存在が広まってんの? 急すぎじゃない?」
「フッ、これを見ろ」
二宮は得意げにスマホを見せる。そこには、
────────────────
ユーザ名:リクおにーちゃん@紅葉ちゃん推し
……。
────────────────
というアカウントが表示されている。
「これは謎の妹、紅葉ちゃん関連のことしかつぶやかないオレの紅葉ちゃん応援アカウントだ」
「……お前はほんとこーゆー系好きだよな」
「ちなみに紅葉ちゃんという名前は、オレが兄として責任をもって命名させてもらった」
「無責任すぎる」
「今日もさっそくつぶやかなければ!」
────────────────
今日の紅葉ちゃんボイスが尊すぎて尊死不可避
#紅葉ちゃん
────────────────
「まあ勝手にやるだけなら迷惑かけねーから別にいいのか──」
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…………何が起こってんの?
「今では柊木生のSNSのプロフィール欄はそのまま学校名を載せるのではなく、紅葉ちゃん推しと載せるのが密かなブームなんだぞ」
「何その密かすぎるブーム」
「紅葉ちゃんの反響は日に日に拡大している。ほら、見てみるがいい」
二宮が#紅葉ちゃんをタップする。すると、
『今日は紅葉ちゃんボイスが聞けた!』
『耳が幸せ過ぎる……』
『スピーカー越しに見える笑顔に癒される』
え? 何この人気。
ていうかみんなその笑顔見えてんの? 怖っ。
「今日も紅葉ちゃん界隈が盛り上がっているな。公式おにーちゃんとして嬉しい限りだ」
「いや存在が非公式なんだが。しかも公式お兄ちゃんってなんだよ」
「お兄ちゃんじゃない! おにーちゃんだ!」
「知らねーよ……」
─────あとがきのこーなー!──────
「……」
『……』
「さ、さあ、今回も張り切ってあとがきのこーなー!をや、やってくぞー……」
『……』
「……あ、あのう……なぜこちらへ……」
『……いつも通りやれば?』
「は、はい……ついに日間・週間に加えて、月間も1位になったぞ! い、いぇーい」
『……あたしをほったらかしにしてね』
「……」
『……いつもどおりはしゃいでいいんだよ?──おにい』
「あの……本編であんまり絡みない人ここに出てきちゃうと、色々悪影響が……」
『……なんで本編に出てこないの?』
「へ? そりゃ色々と──」
『……誰かさんが約束破ってなかったら違ったんじゃない?』
「…………」
『……』
「……ちなみに大変言いにくいことがありまして」
『……なに?』
「…………お前しばらく出番ないわ」
『いい度胸してんじゃん?』
※激おこ凛ちゃんですが、現代ドラマ月間1位、誠に感謝!
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