兄と妹の未来 1


 ここから俺が語るのは──少し先の未来の話。


 なぜいきなり未来の話をしようと思ったかというと──読者の凛に対する好感度が急上昇しそうな気配を察知したんですよねえ……。


 それは非常に危険な兆候に他ならない。

 


 ここはひとつ──我が妹のブラックな一面を知ってもらわないと。



 これは断じて、妹の好感度が上がっていくのがムカつくとか、気に食わなかったとか、なんで俺を差し置いて凛に応援コメントがつくんだとか、そんな私怨とは無縁であって、ただの親切心からくるものであるということを先に述べておきたい。


 妹の明るい未来のためにも、このあたりでしっかりと好感度のバランス調整をしておく必要があるのだ。


 ほら、好感度が上がりすぎると、やらかしたときのダメージがでかいって聞くし。

 うん仕方ない。こうやって汚れ役を買ってあげるのも兄の務めだもんな。


 まあそんなわけで急遽ではあるが、兄妹の雪解けから少し関係性が進んだ俺たち二人の出来事を覗き見ていってくれたら幸いだ。




 ◇




 ──俺が柊木寮に入る当日。


「じゃ、そろそろいってくる」


 靴に足を通して踵を鳴らす。


 寮に持っておく荷物は玄関の脇に用意してあるバッグとキャリーケースが全て。準備は万端。


 今夜はいきなりクラスメイトと夜更かしパーティーが開かれるとだけあって、めちゃくちゃ楽しみにしている。


 これから学校が終わっても、あの悪友どもとバカをやれる時間がたくさんあるかと思うと、早く寮に行きたくてワクワクが止められねえ……!


「……おにい、本当に行くの?」


 と、凛が玄関に見送りに来てくれた。


「……別に寮に入らなくてもいいじゃん」


 凛がちょっと拗ねたような口調で言う。


「でも理数科のクラスメイトも全員入るし……俺だけ入らないってのもなんか浮くだろ?」

「……”これからはずっと一緒だよ”って言ってくれたのは口だけ?」

「ちょっと凛さん? お兄ちゃんそんなこと言ってないよね?」


 ……いくら未来の話だからってそんな豪快な捏造はやめてほしい。

 

 関係性進みすぎだろ。むしろ危うい方向行っちゃってるよ。


「……あと、あたしよりあやのんさんの方がやっぱりいいの?」

「……いやあ、そんなこと──」

「──こっちはほんとに言ってたらしいじゃん?」


 鋭く目を細め、追及の姿勢を見せる凛。


 ……やっぱその発言気にしてたのかよ。

 全然気にしてなさそうだったのに!


 気になる方は第3回放送をお楽しみに。

 本編のネタバレを本編で行う斬新なスタイル。


「……ここは一つ。駅前のカフェのスイーツで手打ちとしませんか?」

「……ん、許してあげる」


 凛さんからお許しの言葉を頂いた。

 スイーツ一つで済むのなら安いものだ。


 件のカフェは休日は行列ができるほど美味しいスイーツを出しており、あまりの人気ぶりもあってか、カフェにしては珍しくスイーツのネット販売も対応している。


 後で忘れずに注文しておかないと──


「……じゃ、夏休み中に行くつもり」


 なるほど……もしかして凛さんは現地参戦をご所望?

 まあそっちのほうが値段も安いし助かるんだけど。


「おっけ、じゃあ今のうちにお金渡しとくわ」

「……なんで? 一緒に行くのに」


 と、凛は不思議そうに首を傾げる。



 ……あれ?


 それ──もしかして俺も一緒に行かなきゃ駄目なやつ?

 あのめっちゃ並ぶカフェに?


 えっ割とめんどい……いやかなりめんどい……っていうか超絶めんどいかも……でもなんかもう断れる雰囲気じゃなさそう……。


 まあ後で考えればいいや。


「じゃあ行ってくるわ。まあたまには絶対帰ってくる……はず……そんな気がする」

「……それ絶対帰ってこないじゃん」

「まー流石に夏休み中には何度か戻ってくるって」


 そう言いながら、荷物を持って玄関のドアを開いた。






 ─────あとがきのこーなー!──────

「地味に現代ドラマで週間4位! コンテストのエンタメ総合週間4位!」


『妹たちのおかげだ!』


「レビュー・フォロー・応援コメントもありがたいぜ!」


『というわけで、izumiを知っている妹たちならお手の物だと思うが、”おたよりのこーなー!”』


「唐突に別コーナー始まったんだが」


『愛すべき妹たちからの声に対してオレたちが勝手に取り上げていくコーナーだな』


「いつの間にか多くの人に読んでもらえてるし本当にありがてーよな」


『というわけで今回はよく目につくレビューの一言コメントを紹介していくぞ! まずはこの作品に初めてのコメント付きレビューをくれたCNキューブネーム:”@rano1209”から』


「おお、それはまじで超感謝しないといけないやつ!! まじでありがとな!」


『【やっぱりバカな親友が一番】』


「なるほど」


『気持ちはわかるぞ』


「こいつバカだもんな」『お前はバカだからな』


「……なるほど? これはどっちが”バカな親友”なのかはわかんねーな?」


『まあどう考えてもバカなのはお前だと思うがな?』


「続いて俺から。CN:”トモユキ”」


『レビュー感謝する!』


「【バカな男子がバカな思いつきでバカな放送する物語】」


『……まだお前だけがバカだという可能性をオレは捨てんぞ……!』


「……奇遇だな。俺もお前だけバカだと思ってるぜ? だって絶対に俺はバカじゃない……!」


『ではラスト。CN:”@1978shin”』


「レビューさんきゅー!」


『【清々しいバカ。】』


「……」


『……』


「まあ……どっちもどっちということで……」


『うむ……これ以上考えるのはやめておこう……』


「だけど! そんなリスナーたちからのレビュー・フォロー・応援コメントをまだまだ募集中!」


『妹たちからの愛を待っているぞ!』

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