あやのんと! part1


『さあ、始まりました、”あやのんと!”。 この番組はあやのんこと、わたくし来崎くるさき彩乃あやのがお送りしているんですが、本日はなんと特別編です……特別と聞くとやっぱりドキドキしちゃいますよね!


ちなみに今回の放送の事前告知のSNS投稿が、ぶっちぎりで歴代最高で拡散されているんだとか……おそらく間違いなくこの番組を聞いてくださっているリスナーの数も過去最高だと思われます……私もちょっと緊張しちゃいますね……!


それでは早速本日のゲストをご紹介します。事前に告知されているのでご存知の方も多いと思いますが……突如彗星のごとく現れたcube──その参謀を務めるソラさんです!』


「はじめまして」


『はじめまして! 今日はソラさんの話が聞きたいと本当にたくさんの方がこの放送を聞いています。多くのメッセージも届いていますよ。率直に今、どういった心境なんでしょうか?』


「うーん、今の心境を率直に言うと──帰りたいですね」


『率直すぎますね』


「あれ、聞かれたことに素直に答えただけなのに」


『…………あまりの回答にちょっと面食らってしまいました。ドッキリ動画が投稿から数日で100万回以上再生されるだけの片鱗をこの一言に感じました』


「すいません。ちょっとリラックスしすぎました。もうちょっと緊張してたほうが良いですか?」


『そんな常識外れな注文をする人いませんよ? でもぜひリラックスして喋っていただければ! それにこの番組でいろんな方々とお話ししてきましたけど、こんなに堂々と自然体でお話ししている方は初めてです』


「じゃあ来崎さんは緊張されてたりするんですか? とても落ち着いて流暢に喋ってらっしゃいますけど」


『そうですよ! だって歴代最高の注目度ですもん……とっても緊張してますよ』


「とてもそうは見えないですね」


『本当ですよ? 今朝、今日のゲストが話題沸騰中のcubeのソラさんだと、あの神崎さんから直々にお電話を頂いた時から、何をするにも全く手がつかず、気づいたら今ここって感じです』


「……それ本当ですか?」


『そうですよ? 神崎さんから直々にお電話をもらったのなんて初めてで驚きました……あ、今日はブースの向こうにも神崎さんがお見えになってますね』


「いやそっちじゃなくて。何も手がつかずに気づいたら今ここってとこです」


『……え?』


「その割にはしっかりお洒落してメイクもばっちり決めてるなあと」


『………………』


「何も手がつかなくても完璧におめかししちゃうものなんですね。しかもラジオだから服装なんてどうだっていいのに」


『──すいませんもうちょっと緊張してもらってていいですか?』


「めっちゃ早口」


『だ、だってこんなに注目集めている中でおしゃべりするのは初めてだし……事務所の社長からも本当に貴重なチャンスだから頑張っておいでって言われたから気合い入れなきゃって……うぅ、これは本当に恥ずかしいです……』


「いやあ、初っ端から来崎さんが場を和ませてくれたおかげで、緊張がほぐれてきました。流石プロの方ですね」


『うぅ……逆に私が途端に緊張してきました。き、気を取り直して! ソラさんはどうしても聞いてほしいお話があってここに来たんだとか?』


「…………はい?」


『神崎さんからお話は伺っていますよ? とにかく話したいことがあるから自分の話を聞いてほしいと』


「………………来崎さん、俺も途端に緊張してきました」


『さっきまでの勢いはどこいっちゃったんですか?』


「……」


『あの……どうしてブースの向こうにいる神崎さんにその……中指を立てて……?』


「やだなあ、親指ですよ?」


『へ? あ、そ、そうかもしれませんね! これは大変失礼しました』


「ちょっと話がそれてしまいましたが、話したいことというのはもちろんあの動画の件なんですけど」


『やはりそうですよね! 私も拝見しましたが凄い内容でした』


「まさかたった一つの動画でここまで世界が変わることになるとは思いませんでしたが、やっぱり皆ちょっと気にしてるのは、いくらドッキリでも勝手に校内放送してそれをネットに上げるなんでひどいんじゃないかって話ですよね?」


『確かにそういった声がチラホラとSNS上で上がり始めているのは確かですが……』


「ドッキリは仕掛けたのは旧部、旧放送部のOBなんですけど、まあ勝手に校内放送させられたことに関しては、ちょっと別件で公開処刑してるんで、これはもう完全におあいこって感じです」


『こ、公開処刑ですか……』


「それに、動画を上げたことについては事前にちゃんと許可をもらってたんで大丈夫です。勝手に上げてたら、こんな急にラジオ番組にお邪魔できるほど、トントン拍子で話は進みませんしね」


『なるほど……そうだったんですね』


「いやあ、このラジオ番組の出演の話も、急遽紫ちゃんから言われて」


『待ってください! 今、ゆ、ゆかりちゃんって……あの神崎さんがそんな愛称で呼ばれてる方だったなんて……』


「呼ばれると、まんざらでもない反応なんですけどね?」


『い、意外ですっ……!』


「あれ、なんかブースの向こうで紫ちゃんが俺に中指──」


『あれはきっと親指です!』


「ちなみに動画でも出てきたcubeの代表のリクの姉がいたじゃないですか? その姉と神崎が学生時代からの仲良しで、そのよしみでっていう感じですね」


『あ、それはあの最後に登場した担任の先生の方ですね?』


「ですね。まあ……本当にいろんな意味で素敵な先生ですよ」


『それは……魅力的な意味で?』


「まあ、……威力的な意味で」


『……それでは、お便りを読んでいきましょうか!』


「さっきから気になってたんですがテーブルいっぱいに集められたこの紙は……?」


『あ、やっぱり気になりますよね? これは今日の放送に寄せられたメッセージの一部ですね。本当にたくさんのメッセージが来ているので、いくつか読み上げていきたいと思いますよ』


「どんな感じのメッセージが来ているのか気になる」


『よかったらソラさんも選んでくださいね』


「え、いいんですか? じゃあ良さそうなの選んでおきますね」


『よろしくお願いしますね。それではまず私から。【cubeの動画を見ていて、僕の周りではヤラセなんじゃないかという説が根強いです! ヤラセじゃないんですよね!?】』


「ああ、そういう声も多いみたいですよね。でもそれならこのメッセージが答えになりそうですよ。読んでくれません?」


『おっどんなメッセージですか? ええと、【キューブネーム:かつて旧部だった者】』


「これ分かる人にしか分からないやつですね。旧校舎組もメッセージ送ってくれてるとは心強いな」


『そうそうその、キューブネーム? という謎の枕言葉が付いているメッセージがいくつもあると、私とスタッフも事前打ち合わせで首を傾げていたんですが……』


「俺ら柊木生の方からのメッセージは大体これ付いてると思ってもらえれば」


『【SNS上にはあの校内放送がヤラセだったんじゃないかと言われているが、二人の師匠であるオレたち旧部OBからすると不本意極まりない発言だ。撤回してほしい】』


「流石先輩たち、強気だな」


『【せっかくの弟子たちの晴れ舞台を侮辱するのは止めていただきたい。そんな愚行はオレたちが断じて許さない】』


「おお、かっこいい」


『【あれがヤラセだったとしたら──僕たちは何故公開処刑されたのか、誰か教えてくれませんか?】』


「wwwっ やべえまじお腹いたいwww」


『【あの放送室への全力疾走と土下座は間違いなくガチでした……】……えと、もしかしてこれが先程の公開処刑?』


「wwwっ……はあ、すいません。そうですそうです。完全にこれ旧校舎組にしか伝わらない内容ですみません」


『どういったことなんでしょうか……?』


「これは第2回放送の話なんですよ」


『第2回放送?』


「そうか……ネットに上がってんのは初回だけだからか……そりゃヤラセだと思ってもおかしくないですね」


『もしかして動画の校内放送の続きがあるんですか? どんな内容だったのかとても気になりますが……もしかしてキューブネームと付いているメッセージを読めばわかるかもしれませんね! えーと……ありました。【キューブネーム:リク師匠の一番弟子】』


「……ん? なんか聞き覚えが……」

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