【ドッキリ】放送室でバカ話で盛り上がってたらマイクがオンだった。
「で、件の動画ってやつは?」
「これだな」
二宮がスマホでMeTubeを開き、“【ドッキリ】放送室でバカ話で盛り上がってたらマイクがオンだった。”と名付けられた動画を全画面表示にして再生ボタンをタップした。
──肝心の動画の内容は、俺たちの初回放送のものだった。
動画の作りは非常に手が込んでいて、俺たちが昼休みに放送室に訪れて最初は普通に話していたところから、事態に気づいて微妙に仲違いしたりしたり、腹をくくって校内放送を始める場面を様々な角度のカメラから捉えている。
俺たちがバカ話を始めてから二宮が亡くなるまでの一部始終を、コメディテイストで仕上げてある。
メモを見せあって会話したところは描写説明のイラストを交えるなどの工夫も見られる。
しかもフル字幕つきで、要所要所でBGMをフェードさせるなど、さながらバラエティ番組のような、視聴者の存在を意識した演出が入っている。
さらに、状況ごとに柊木生のSNSのリアルタイムのつぶやきを入れることで、より臨場感が増すような工夫が施されており、柊木学園関係者でなくともこの動画が楽しめるようになっている。
最も気になる点としては、オレたちのプライバシー配慮なのか、俺たちの顔が見えないように顔の上にやたらかっこいい、何かのアニメキャラみたいなイラストで顔が隠されているという点だ。
ここからはわかるのは、動画投稿者は俺たちを
「こんな動画を作れるのは……」
「ああ……」
二宮も流石に犯人がわかったようだ。
この動画を作ったのは間違いなく──
「ちょうど今、奴らがファミレスに着いたようだ……全く面倒なことをしてくれる」
二宮先生がスマホを見ながら席を立つ。そしてしばらくして──
『おい見たか動画!』
『めちゃめちゃいい出来だっただろ』
『頑張って俺たちで作ったんだぜ?』
『編集大変だったよなあ』
『感謝してくれてもいいんだぜ?』
旧部のOBたちが現れた。
◇
「あんたら……なんてことしてくれてんですか?」
「うむ……まずは言い訳をする時間を与えてやろう」
少し大きなテーブルに移り、俺たちは向かいに座った5人のOBへ、尋問を始めた。
「ここは元部長の俺が説明させてもらおう」
元旧部の部長、
「これはな……俺たちOBからお前たち二人へのプレゼントなんだ」
「「プレゼント?」」
「全貌を知ったらお前らは俺らのことを、”素晴らしい先輩”と褒め称えると思うぜ?」
……まじで言っている意味がわからない。
「まずは動画につけられたタグを見てくれ」
言われるがまま確認すると──
「”柊木スター発掘コンテスト”……何このタグ?」
「まさかっ!!!」
俺がタグを読み上げた瞬間、二宮が飛び上がった。
「わかったか陸? このプレゼントの意味がな……!」
「オレとしたことがタグの存在を見落としていた……そ、それでイッチよ! 結果は!?」
「たりめーよ……特典ガッチリ掴んできたぜ!!」
イッチさんが片目をつぶりながらかっこよく言うと、
「なんて素晴らしい先輩だろうかっっっ!!!!」
ファミレス中に響き渡る声で二宮が叫んだ。
……そんなに素晴らしい先輩を連呼すると、別の意味になっちゃうから。
サンキュータッツって、あれめっちゃ言いたくなるような語呂なんだよなあ。
「えーっと? 全くついていけてないんすけど?」
「凛空に説明してやると、今、柊木芸能学園で面白いコンテストやってたんだよ。うちらじゃなくて芸能科の方でな」
柊木学園と柊木芸能学園は別の学園だが、たまにごっちゃになって間違われたりする。
「面白いコンテストってなんすか?」
「次世代のスターをスカウトしようという試みで、全国の中学・高校生を対象に、一番バズったコンテンツを投稿したやつの勝ちっていう」
「へー、そんなのやってたんすね」
「めちゃくちゃエントリー多いんだぞ? やっぱ凛空って基本そこら辺疎いよな」
スマホで調べてみると、公式サイトで大体的にコンテストが告知されている。
「へー、なんか調べてみると色々な部門あるんですね」
「そうそう。で、これが、動画部門がトップを取ったんだよ」
「へー…………まじ?」
……あまりにナチュラルに言うもんだから反応が遅れてしまった。
え……いや…………どゆこと?
「あんなに再生数稼いだら、トップ取らないわけ無いだろ?」
『再生数を見てみろよ』
『編集大変だったよなあ』
『おかげでテスト勉強なにもしなかったもんな』
『だが後悔はない!』
動画の再生数を見てみると──100万回再生を突破していた。
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