男同士で自転車二人乗りなんて本当に青春だよね
「まじでなんだったんだ……!?」
よく考えれば、柊木の制服着た奴が学校より前のバス停で降りるのは、かなり違和感のある行動に違いないが、心の安寧が最優先だった。
しかしバスを逃げ出して朝からそこそこの距離を歩くハメになった分、冷静になることができた。
「……これ絶対昨日の放送のせいだろ」
そうとしか考えられない。
しかし疑問はある。
「……そんな一日で俺の顔と放送の白崎凛空が一致するか普通?」
全校生徒に知れ渡るようなタイプの生徒ではないことは、自分が一番分かっている。もちろん二宮は放送前から知れ渡っているだろうが。
昨日の放課後はもちろん二宮先生のところに伺っていないので、放送の反響というものがいまいち把握しきれていない。
しかし新校舎に流れていないのは確定。3年から人づてに伝わったとしても、いくらなんでもたった一日で大勢が知れ渡るということにはならない。
とりあえず情報が欲しいところだ──
と、その時、
「おい、白崎じゃないか。珍しいな」
自転車通学をしている二宮にばったり遭遇。
「おお二宮、ちょうどよかった。学校まで後ろ乗せてってくれ」
「ほう? まあいいが……妹以外を後ろに乗せるのは気が進まないな」
「ならその席は永遠に空席だな。まあ頼む、非常事態なんだよ」
「……非常事態?」
◇
「なあ? おかしいと思わないか?」
二宮が漕ぐ自転車の後ろの荷台に乗せてもらいながら、バスの出来事を大まかに説明すると、
「ほう、プロデュースが成功しているようだな……!」
わざわざ俺の方を振り返って得意げに笑う二宮。危ないから前見て?
「お前の仕業かよ!?」
「まあ一から説明してやろう。こうなったのは白崎、お前のせいでもある」
「……?」
「昨日の放送の最後に名指しで呼び出されていたのにお前、姉貴のところに行かなかっただろう?」
「ああ」
「……即答するなよ。少しは悪びれてくれ」
「お前だったら行く?」
「行かん」
「即答するなよ」
来ないと痛い目にあうと言われ、行っても痛い目にあうのは明白。
なんぞいかんや。(反語)
「というわけで今日の昼休みに、改めて謝罪しに来いと姉貴が言っていた。それでこの一件は終わりだ」
「うわーだりぃな……でも謝るだけで見逃してもらえるなら、まあいいか……りょーかい」
「うむ。というわけで今日の昼休みは空けておいてくれよ。校内放送するぞ」
「りょーかい…………は?」
……今こいつなんて言った?
「え。ちょ待って待って? どゆこと?」
「だから、昨日の突然の校内放送を詫びるために、今日、校内放送をして謝ろうということだ」
「逆撫でしてんだよなあ……」
火に油を注いでるとしか思えない。なんて蛮行なんだろうか。
「それで、せっかくやるなら楽しもうということで、公式SNSを発足させた」
「……へ?」
「昨日の放送でもメッセージを募集すると言っていたからな」
「た、たしかにそんなようなこと言ってたかもしんないけど……」
……やばい。
突然の急展開に全然頭がついていけない。
「メッセージを募集するならSNSがないと不便だろう? さらに放送室の前にメッセージボックスを置いたから、これでデジタルとアナログの両対応ラジオの完成だ」
「お、おう……」
「放送圏内の旧校舎は3年の教室だから、オレたちはなじみが薄いということで──」
ということで……?
「SNSにオレとお前のプロフィールを上げた──顔写真付きで」
「おい!? お前勝手に何やってんだよ!?」
「揺らすな! 倒れるだろ!」
「どうせ自転車乗ってることなんて、会話長すぎて誰も覚えてねえよ! 俺も忘れてたぞ!」
まるで物語の作者が慌てて思い出したかのように、自転車が激しく揺れる。
「つーか、なに勝手に人様の写真をネットに晒してんだよ!?」
「失礼な。許可は取ったぞ」
……は?
「……誰に許可とったんだよ?」
「なんせ昨日の放課後は本人不在だったからな」
「え?……おいまさか」
「ああ──我らが顧問が許可してくれた」
「許可の指揮系統おかしいだろ!?」
「『なんかよく分からんが……まあ白崎ならいいだろう』って」
「ちょっと先生!?」
来ないと痛い目にあうとは言ってたけど……痛さの方向性が全然違うんだが!?
瞬間的な痛みよりも永続的な痛みの方が、質が悪いんですけど!?
──キィィと、ブレーキ音がして自転車が止まる。
学校から少し離れた小さな公園の前だ。
「どしたんだよ?」
「いや、説明するより、白崎に実際のSNSの反応を見たほうが早いと思ってな」
……SNSの反応?
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