出会い

――紗優視点――



 対抗戦開始から私は2組の転移場所へ一直線へ向かっていった。

 途中、2組の3人組の男子に出会ったが即座に障壁を破壊し脱落させた。

 今回重要なのは、1組方面へ向かっていた2組生徒を倒すことで、残りの2組の生徒に私が来ている可能性を考えさせ、行動を制限させることにある。

 

「まったく、皆さんはわかっていませんね」


 少し前に白井が見せてくれた匿名掲示板には、『最強ランキング』というものが予想されていた。

 1位は私で4位は結乃。

 確かに、純粋な戦闘能力は結乃よりも風見さんや唯のほうが高いでしょう。

 でも、結乃の本当の力は団体戦かつ資源が豊富なこの環境で発揮される。

 

「ところで…いつまで見てる気ですか?望さん」


 私は正面の木の上を見ながら言うと、一人の女子が降りてきた。


「もー。前も言ったじゃん。美香でいいよ?さゆっち」

「何用ですか?」

「んっとね。別に戦いに来たわけじゃないんだよ?だって私障壁コアあげちゃったし」

「…え?」

「凪っちにね」

「…障壁コアをなくした場合も破壊されたときと同様、失格となる。ルールにはそう書いてありましたよ?」

「なくしてないよ?預けたんだよ」


 美香はこちらを見たまま動かない。

 本当に戦う気はないように感じる。

 障壁コアを預けたなんてことも、美香さんならばありえそうだ。


「それで、私の目の前に現れた理由は何ですか?」

「暇だったから?」

「それだけの理由…ですか?」

「そだね。あ、いやさゆっちに訊いときたいことがあったんだ」

「私に?」

「うん、そうだよ。聞いてもいいよね?」


 美香が何を考えているのか、全く予想がつかない。

 ここは様子を見ているのが最善だと判断する。


「大丈夫ですよ」

「じゃあ、遠慮なく。いつまでゆのっちの真似事してるの?」

「………」

「前から思っていたんだー。さゆっち喋りにくそうだもん」

「美香さん、あなた――」


 私が最後まで言う前に障壁コアが震えた。

 今この時も戦況は絶えず変化していく。

 敵意のない美香をこれ以上相手するのは、良い選択とは思えない。

 私は障壁コアの通知を見て少し驚く。


「どう?私の障壁コア壊れてる?」

「……えぇ」

「そうかー。凪っち、ちゃんと使ってくれたんだ」


 障壁コアの通知画面には[3組の望美香の障壁コアの破壊を確認]と出ている。

 

「私は観戦するねー」

「……」

「じゃあ、いつかまた話そうねー」


 美香がそう言うと同時に、体が発光していく。

 この場所に転移された時と同じ光だと気づいた頃には、美香の姿はどこにもなかった。


「ふぅ」


 深呼吸をし、気持ちを切り替える。 

 美香の発言は気にするだけ無駄に思えた。

 今、私がするべきことは1組を優勝へと導くことだ。

 すぐに戻って3組の転移場所へ皆を連れて行こう。


「この勝負、1組の勝利に終わりそうですね」


 

――明石視点――


 

「本気なんだね?」

「はい」


 結乃さんの提案したことは、僕たちと別れて単独で行動し東雲君と合流するということだった。

 正直なところ、最初から一つだけずっと引っかかる点があった。

 なぜ天宮結乃は東雲凪についていこうとするのだろうか?

 確かに『祝福』を持った生徒が貴重な戦力になるというのはわかる。

 でも彼女の東雲君へ思っていることはそれだけなのだろうか。

 深く考えれば考えるほど、表情を一切変えない結乃さんの異常さに恐怖すら覚える。


「明石さん?」

「と、ごめん考え事していた。それともう一つ聞きたいんだけど…」

「明石さん」

「ん?」

「囲まれました」

「え?」


 静かにそう言った結乃さんは、手に剣と銃を持ち僕の背後を見る。

 思考が追いついた瞬間、全員に聞こえるように言い放つ。


「皆!周囲を警戒してくれ。囲まれている」


 僕の言葉を聞いた長石や鍵谷たちはすぐさま武器を構え周囲を見回す。

 

「多分3組だ。リーダーを守――」

「明石!天宮!」


 叫ぶ鍵谷。

 一瞬なぜと疑問に思ったが、彼の焦った表情が目に入ったと同時に勘づく。

 急いで鍵谷の視線の方向へ振り向く。

 そこには空を見ている天宮と、その天宮に魔法を放とうとしている新田晴馬の姿があった。

 新田の手にはすでに人の頭ほどの大きさの炎の玉が完成していることから、魔法の詠唱はすでに終えているとわかった。

 だが、問題はそこじゃない。 

 天宮結乃はなぜか、空を見ているのだ。

 あの状態じゃ、避けられない。

 

「…くる」


 結乃さんの口が動いたと思ったら、周囲が暗くなった。

 今僕たちが立っている場所は、木が少なく開けている。

 暗くなる理由が分からなかった。


(天候の変化…か?)


 空を見上げると、そこには木があった。


「は?」


 思考停止しかけるが、全力で状況を把握し全力で声を上げた。


「上だ!!」


 叫んだほぼ2秒後、新田晴馬に空から降ってきた木が直撃し障壁が割れた。




現在のポイント


・クラス

1組 6p  残り9人       

リーダー 天宮紗優?


2組 4p  残り7人       

リーダー 天宮結乃


3組 2p  残り7人       

リーダー 風見辰馬

 

※望美香の障壁コアは同クラスの彩霞が破壊したため0p 


・個人 TOP5

1 天宮 紗優  6p

2 望  美香  2p

3 東雲 凪   2p

4 4以下は0pのため非表示




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