秘密のゲート攻略会議②

 花田に案内され、店の奥の部屋に俺と紗優が入る。

 

「それじゃあ聞かせてもらおうか、紗優ちゃん。なぜ、彼なんだ?」


 花田が床に座り、テーブルを挟んで紗優が花田の正面に座る。


「彼しかいないと確信しましたので」

 

 紗優が何を言っているかわからないまま、俺も紗優の隣に座る。


「彼しかいない…ね」


 花田がこちらを鋭い眼光で見てくる。

 品定めされてる感覚…そして、次の発言はだいたい予想がついた。


「平凡だな。多少体はできてるようだが、それだけだ」


 そう言うと思いました。


「彼には秘められた力があると思います」


 真剣な顔で紗優は言うが、花田は俺を見て鼻で笑う。


「すまないが、いくら紗優ちゃんのイチオシだとしても……、いやイチオシだからこそ死地には連れていけねぇ」


 流石の俺も『死地』という単語に反応せざるおえなかった。


「死地……、どういうことだ?紗優」

「…私と花田さん、そしてこの地域にいる一部ハンターで、『追憶ノ双生』の攻略をします」


 嫌な予感が的中した。

 

「……本気か?」

「はい、もちろん本気です」

「俺は花田さんや他のハンターたちの実力がどの程度かは知らない。だけど、これだけは言える。あの『ゲート』を攻略するなら最低でも一人、国家戦略級のハンターが必要だと思う」

「まさか……。入ったんですね?あのゲートに」


 紗優はすぐに気づいたようだ。

 

「んな馬鹿な。あのゲートの中でモンスターと遭遇しているなら、こいつが生きているはずがねぇ。あそこは推定S級のゲートだぞ?」

「確かに普通のS級ゲートでモンスターと遭遇していたら俺は無事じゃない。でも、もしあの空間にいるのはモンスターじゃなく、人だったらどうします?」


 驚愕の表情でこちらを見る花田と、再び何かを考える仕草を見せる紗優。


「モンスターじゃなくて人…ですか。それ以外に情報はありますか?」

「紗優は入ったことがないのか?」

「はい、残念ながら」


 正直、この場で紗優に言うという選択が正しいのか微妙だ。

 どうしようか迷っていると、紗優が何か気づいたような反応をする。


「そうでしたね。S級ゲートの内部情報なんて、タダで提供するわけにはいきませんよね」

「いや、別にそういうワケじゃ――」

「――10万」

「は?」


 紗優が何を言ったのか理解するのに数十秒かかった。

 

「10万じゃ足りないですか?それなら100万ですか?」

「いやいや、ちょっと待て。そんな金額を払う価値があのゲ――」

「――そうですか。なら私にできることならなんでもします」

「……」


 紗優がそこまであのゲートに執着する理由がわからない。

 しかし、紗優が私にできることはなんでもする…とまで言った。

 今はその言葉を利用させてもらおう。


「じゃあ、条件として…紗優があのゲートに執着している理由を教えてくれ」


 俺の出した条件を聞いた紗優は、すぐさま花田を見る。

 花田は静かに頷いた。


「これはハンター協会の極一部、そして十二天しか知らない情報です」


 十二天…帝釈天、焔摩天、水天、毘沙門天…というのが本来の意味合いなのだが、今の時代の十二天はハンターとして大きな功績を達成した十二の家に与えられた称号のようなもの。

 天という漢字はカッコつけなどではなく、ハンターの最上位を示している。

 実質、日本のハンターの最高戦力である。

 ちなみに俺が面識があるのは天宮家のみだから、ほかの十二天に関しての情報は持っていない。


「近いうちにあの『ゲート』は崩壊を起こします」

「崩壊?でも、中にはモンスターがいない」

「ゲート崩壊とはゲート内にいるモンスターが外に溢れ出ることを指す。そうですよね?」

「ああ…」

「本当に危険なのはその後です。ゲート崩壊を起こしたゲートと新たに現れるゲートが衝突したらどうなると思いますか?」


 紗優の聞き方からして、おそらく新たにゲートができる確信があるのだろう。 

 その場合どうなるか?だって?

 そんなのわかりきっている。

 

「新たに出現したゲートも同じように崩壊状態になる」

「そうです。そしてその現象は過去に一度日本で起きています」


 過去に一度、紗優が言ったみたいにゲートとゲートの衝突があった。

 そして、その『ゲート』から出てきたモンスターは『獄炎龍』だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る