騎士②

「!?」


 勝負が始まった瞬間、自身が出遅れていたことに気づいた。

 何故なら相手の剣が俺の眼前に、ものすごい速さで迫っているから。


「ぐぅ!」


 思いっきり体を捻り、剣を回避する。


「見事な回避だ」


 騎士は剣を回避した俺を見てそう言った。

 こいつは俺を試しているのだろうか?


「私は、剣術を学び三つの技を編み出した。その三つの剣技は私がこの世界に生きていた証。さあ試練を受けし挑戦者よ。死んでくれるなよ?」


 途端、騎士の雰囲気が一変した。


「一つ、剣技『閃斬神威せんざんかむい』」

「がぁっ」

 

 腹部に物凄い衝撃と痛みを感じた瞬間、吐血しながら吹き飛ばされた。

 何が起きた?


「そこまでです」


 結乃が俺と騎士の間に立った。


「結乃…何を…」


 思った以上に声が出ない。

 違和感を感じ腹部を見ると、見事に切り裂かれていた。

 かなり深く、致命傷だ。おそらく長くはもたない。


「見てのとおり彼はこれ以上戦えません。見逃すことはできませんか?」

「姫…そうはいかないのです。英雄を…新たな英雄の誕生を見届けねばならない。私たちのために…そして、姫のために。だからそこをどいてください」

「そうですか…ですが、今回ばかりは私も引けません」


 騎士と結乃のやりとりを聞いているうちに、意識が遠のいていく…





『凪、それと優。どんな状況になっても決して生きることを…守ることを諦めるな』


 懐かしい、これは師匠の声だ。

 ということは、ここれは遠い過去の記憶。

 なぜ、今になって――


『――私の東雲一刀流すべては二人の中にある」





「姫、そこをどいて下さ――」

「――師匠…ありがとう」


 結乃の横を駆け抜ける。


「!?」


 騎士はすぐに俺に反応したが、不意を突かれたのと俺と結乃の距離が近いため、剣を振り始めるのが大幅に遅れている。

 絶好のチャンスだ。この機会を逃せば次はない。

 腹から息を一気に吐き出し、切先を騎士へと突き出した。


「くっ」


 刀は騎士の兜に直撃し、破壊した。

 

「まさか兜を割られるとはな…」


 騎士が割れた兜を外した。

 白髪に白髭が特徴的で、顔には古傷がいくつかある。

 明らかに歴戦の戦士の顔をしている。


「ふっ、面白い。今回は見逃してやろう。だが、次は逃がさない。我が名はラルド。次にこの場に来るとき、我が名を呼ぶといい。さすれば、最後の試練に挑戦することができるであろう」

「く…そ…」


 その声が聞こえたとともに、意識が遠のいた。


 


 

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