騎士②
「!?」
勝負が始まった瞬間、自身が出遅れていたことに気づいた。
何故なら相手の剣が俺の眼前に、ものすごい速さで迫っているから。
「ぐぅ!」
思いっきり体を捻り、剣を回避する。
「見事な回避だ」
騎士は剣を回避した俺を見てそう言った。
こいつは俺を試しているのだろうか?
「私は、剣術を学び三つの技を編み出した。その三つの剣技は私がこの世界に生きていた証。さあ試練を受けし挑戦者よ。死んでくれるなよ?」
途端、騎士の雰囲気が一変した。
「一つ、剣技『
「がぁっ」
腹部に物凄い衝撃と痛みを感じた瞬間、吐血しながら吹き飛ばされた。
何が起きた?
「そこまでです」
結乃が俺と騎士の間に立った。
「結乃…何を…」
思った以上に声が出ない。
違和感を感じ腹部を見ると、見事に切り裂かれていた。
かなり深く、致命傷だ。おそらく長くはもたない。
「見てのとおり彼はこれ以上戦えません。見逃すことはできませんか?」
「姫…そうはいかないのです。英雄を…新たな英雄の誕生を見届けねばならない。私たちのために…そして、姫のために。だからそこをどいてください」
「そうですか…ですが、今回ばかりは私も引けません」
騎士と結乃のやりとりを聞いているうちに、意識が遠のいていく…
◇
『凪、それと優。どんな状況になっても決して生きることを…守ることを諦めるな』
懐かしい、これは師匠の声だ。
ということは、ここれは遠い過去の記憶。
なぜ、今になって――
『――私の
◇
「姫、そこをどいて下さ――」
「――師匠…ありがとう」
結乃の横を駆け抜ける。
「!?」
騎士はすぐに俺に反応したが、不意を突かれたのと俺と結乃の距離が近いため、剣を振り始めるのが大幅に遅れている。
絶好のチャンスだ。この機会を逃せば次はない。
腹から息を一気に吐き出し、切先を騎士へと突き出した。
「くっ」
刀は騎士の兜に直撃し、破壊した。
「まさか兜を割られるとはな…」
騎士が割れた兜を外した。
白髪に白髭が特徴的で、顔には古傷がいくつかある。
明らかに歴戦の戦士の顔をしている。
「ふっ、面白い。今回は見逃してやろう。だが、次は逃がさない。我が名はラルド。次にこの場に来るとき、我が名を呼ぶといい。さすれば、最後の試練に挑戦することができるであろう」
「く…そ…」
その声が聞こえたとともに、意識が遠のいた。
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