確信
「結乃…これはどういうことだ?」
俺は無意識に結乃に問う。
「どういうこと、と聞かれましても…ただのお墓参りですよ」
「ただの墓参りか…確かにそうだな。でも、結乃は知ってたんだろ。ここに『
そこまで言うと結乃は黙った。
これは正解っぽいな。
「ええ、知っていましたよ。数年前、あなたが東雲優凪さんの訃報を聞いて行方不明になっていなければ、この場に来ていたでしょう」
「……」
「…単刀直入に言います。東雲君は魔法使えませんよね?」
結乃の目はまっすぐと俺のことを見ている。
おそらく確信があるのだろう。
「魔法は授業中使ったぞ?」
「…知らぬ存ぜぬは通用しませんよ?私は東雲君はスキル持ちだと確信しています。現に魔法学の実習の際、あなたの詠唱は【吹き荒れる風よ、我の前に顕現し敵を薙ぎ払え】でした。間違っていますよね?それにもう一つ、面白い物を見つけたんです」
そう言って結乃が見せてきたのは飴玉のようなものだった。
「これはあなたの家にあった飴玉です」
「窃盗罪ね」
「これ、普通の飴玉じゃなかったんです。舐めると半日ぐらい、自身の魔力量が〈9〉になるんですよ?すごいですね」
「それはすごいな」
「そういえば、東雲君の魔力量は〈9〉でしたね。こんな偶然があるとは、驚きです」
「ソウデスネ」
まさか飴玉のことまで調べられているのは予想外だった。
「もう言い訳は必要ないでしょう」
「そうのようだ…。で、わざわざこんな場所でその話を持ち出したってことは、何に協力して欲しいんだ?」
「流石、英雄のお弟子さんですね。東雲君には、今から私のすることに付き合ってほしいんです」
◇
結乃について行くこと約10分、俺たち二人の目の前には『ゲート』があった。
場所は森の中、近くに民家が無いことから、発見されていない可能性が高い『ゲート』なのだろう。
「この『ゲート』を、攻略して欲しいんです」
「なんで俺なんだ?『ゲート』の攻略ならハンター協会に依頼するか、天宮の家の力で潰せる気がするけど」
「天宮家とハンター協会の極一部の人たちはこの『ゲート』の存在を認知しています。ですが攻略の目途はたっていません」
結乃は表情を暗くして答える。
なにか隠したいこと…公にしたくない事情があるのだろう。
「はぁ、わかった。このゲートを攻略すればいいんだろ?俺はそこまで強くないからA級以上だったら無理だぞ?」
「不明です」
「帰らない?」
「何ビビってるんですか?行きますよ」
なぜかやる気満々な結乃は、俺の手を力強く引っ張って『ゲート』に入る。
「言い忘れていました。私、意外と戦えますので安心してください」
「そういう問題?」
徐々に周囲の景色がはっきりとしてきた。
「……ここは…」
「ええ、ここが『追憶ノ双生』です」
目の前に広がるのは、大自然。
太陽のような光源が存在し、明るい空なのに流れ星のようなものが複数見える。
非現実的なこの空間の中心らしき場所には、圧倒的な存在感を放つ柱が立っていた。
「パッと見、あそこを目指せって感じだよな?そして、さりげなくこのゲートの『名前』を言ったな?」
「ええ、言いました。ここは『追憶ノ双生』、クラス不明の未確認ゲートです」
この世界に『ゲート』は数えきれないほど出現したり消滅したりを繰り返している。
基本的に『ゲート』に名称はない。
だが一部の『ゲート』には名前が設定される。
そして名前が設定されるゲートの条件は大きく分けて二つ。
1つは、S級に相当するレベルのゲート。
そして、もう一つは――
――攻略が現状不可能とされているゲートだ。
※『ゲート』のランク付け
『ゲート』にもハンター資格やモンスター脅威度とは別にランクが設定されている。
S、A、B、Cの4段階が基本で、例外も存在する。
C級 脅威度が低級~上級のモンスタークラスのモンスターが出現する
主に初心者のハンターの教育の場として活用されることが多い。
B級 最低でも上級、ボスとして災害級のモンスターが存在している
C級と比べ、難易度が格段に上がっているため、『一般人ハンターの壁』と呼ばれている。
中級ハンター資格の習得にはB級ゲートの攻略が必要。
A級 ゲート内部の空間がB級の2倍以上になり、ボスとして災厄級モンスターが存在している。
上級ハンター資格の習得にはA級ゲートの攻略が必要。
超級ハンターの資格の習得には累計30以上のA級ゲートの攻略が必要。
S級 ゲート内部の空間がA級よりさらに広く、壊滅級のモンスターが支配している。
『一般ハンター』とは
ハンターに関連した専門学校等に通学したことがないハンターのこと。
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