デート?②
「チェックメイトです」
紗優VS俺のチェス勝負は俺の完敗で終了した。
小さな大会ぐらいなら優勝できる自信のある俺が、手も足も出ず、すべてを読まれ流れるように負けた。
「つ、強い…」
「そりゃ紗優は全国トップレベルの頭脳の持ち主だからな」
紗優の圧勝を見て、天宮兄が自慢気に言った。
あながち天宮兄の紗優に対しての評価は間違っていない。
実際、紗優は全国模試で5位の成績を修めているし、数々の馬鹿げた逸話を残している。
名のある将棋のプロに10歳という若さで圧勝したとか。
気分で出場したフラッシュ暗算の大会で優勝したとか。(その大会には日本2位がいたという噂がある)
オンラインのチェスで、世界3位と戦い勝利したとか。
正直なところ最初は嘘や作り話だと思っていたが、今日対戦してみて少なくともチェスの話は事実である可能性が高いように感じた。
「それにしても以外でした。東雲くん、意外とチェス強いですね」
「圧勝した紗優さんがそれ言う?」
「ふふふ、手加減してましたよね?」
「それは俺を過大評価しすぎだな」
一瞬、紗優は鋭い目つきで俺を見てきた。
「面白い人ですね。もし機会があればまた勝負をしましょう」
「気が向いたらでお願い。っと、確かトランプがあるんだったな。ババ抜きでもしないか?結乃が不満そうになってるから」
「「え?」」
俺の言葉を聞いた紗優と天宮兄が驚く。
何かまずいことでも言ったのだろうか?
もしかして、ババ抜きは禁止とか?
「東雲くん、今結乃が不満そうに…と言いました?」
「言ったけど、もしかして禁止ワード?」
「いや、そういうわけではありません」
「なるほどね。そういうことか。っといけないね。テンション上げていこう。ババ抜きだろ?カード配って」
天宮兄がテンションを上げ、カード配りを急かしたため先程の紗優たちの反応の理由はわからない。
もしかして結乃は、ババ抜きが嫌いだったり?
だけど、友達(?)枠の俺がいるから拒否できないとかか?
まあ、今はババ抜きを楽しもう。
突然紗優が手を叩き言った。
「ただ普通にババ抜きするのもあれだし、罰ゲームとかやっちゃいますか」
ゲームは遊びじゃない、全力を尽くそうか。
「到着しました。皆様……。あの、そちらの方は?」
「客人だね」
「「東雲君です」」
俺はサングラスをかけ、ワックスで髪型を変えられていた。
「見た目が完全に不良ですね」
「そうでしょう。私の想像していた不良そのものです」
「お嬢様が楽しそうで何よりです」
「それとすみませんが、私と東雲君は少し用事があるので家に帰り着くのは午後になりそうです」
俺は結乃に手を引かれる。
「了解。18時までには戻ってこいよ」
「わかっています」
「いや、俺この見た目のまま歩くの?マジ?」
いろいろ言う俺に、無表情で聞き流す結乃。
やはり彼女のことはわからない。
――天宮兄視点――
結乃は東雲を連れ、どこかへ歩き去った後。
残された紗優に話かけた。
「お前、さっきの結乃の顔見たか?」
「ええ。本当に久しぶりに見ました。結乃の楽しそうな表情」
「ああ。でも以外だったな。家族以外に結乃の感情が読み取れる奴がいたなんて。俺でさえ、よく見ていなきゃ何考えているなんてわからない」
俺は東雲凪の姿を思いだした。
結乃や紗優に近づく人間は基本的に里香に調べさせている。
以前より紗優が白井に探らせたり、結乃が接触したりしていたので、独自で東雲凪という人間を調べてみた。
結果から言えば未知だ。
現在までの調査で分かっていることはあまり多くない。
剣術の流派は東雲一刀流で、11歳の若さで中級ハンター資格を取得している。
小学校に通学していたという記録は一切なく、中学は2年からの記録しかない。
天宮家の情報収集能力をもってしてもこれだけしか集められなかった。
あの年齢で中級になれれば、将来は困らないだろう。
魔力量が9でなければ超級上位に届きうる存在となっていたであろう。
実力がそこそこあり、情報が驚くほど無い。やはり彼は怪しい。
現代社会に生きている人間が、ここまで情報を隠せるのはおかしいのだ。
そこから考えられることは、権力を持つ何者かが隠蔽しているか、東雲凪が裏の人間かだ。
これは少し監視しておく必要があるのかもしれない。
最悪の場合は…結乃に嫌われるかもな。
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