視線
「おはようって元気よく言いたいんだけど…どした?」
いつも通り学校へ登校中に合流した親友に、いきなり心配された。
「いや、少しいろいろあってな」
「いろいろ?まさか…イジメ的な?」
「いや…その……。ハルはいきなり有名人に話がしたいって言われたらどうする?」
「まぁ別に話だけなら…」
「話をする場所は自分の家」
「怪しいな。というより、俺なら逃げるね」
俺はハルの言葉を真顔で聞いていた。
「ってか、いきなりそんなことを聞くってことは…」
「ああ、昨日天宮さんとな」
「天宮!?まさか…天宮紗優か!?」
「いや、天宮結乃の方」
「天宮結乃?ああ…そう言えば双子だったような?」
ハルは確か中学のころ2年連続で天宮姉妹とクラスが一緒だったらしい。
そんな彼でも双子だと忘れるほどの存在感ということだろう。
天宮結乃とは昨日初めて接点を持ったから詳しくはわからないが、何か裏があるような気がする。
なんとなく…ほんとなんとなくだ。
「ま、どちらにせよ気を付けろよ。本当の本当に、いくら天宮結乃が相手でも気をつけろよ?」
「そうだな」
ハルの忠告を軽く受け流しながら、学校に向かう。
――1限目 魔法理論――
「えー、なので…魔法の詠唱は――」
先生が魔法の詠唱について語っている間、俺はずっと何者かの視線を感じていた。
(見られているな…)
――2限目 実習――
「じゃあそれぞれの適正の基礎魔法を的に当てていこー。とりま、前回的に当てれなかった人は、的に当てる努力を。当たったやつは…自主トレがんばってー」
楠乃の軽いノリの声が響く中、またも視線を感じる。
視線を感じる方を向く。
そこには結乃がいた。
(……まさか、な)
――3限目 体術――
「まずは走れー!基礎的な体術は、体力があってからこそだ!!」
体術担当の教師が叫びながら生徒たちと共にランニングをする。
男女ともに同じペースで進んでいるため、女子の途中リタイアが多くみられる。
そう言えば先生は体術の最初の授業の時に、男女平等主義を強調していたな。
そんなことを思いだしていると、またもや視線を感じる。
横を向けば、息も切らさず綺麗なフォームで走る結乃の姿。
その大きな――っと、これ以上考えると俺はただの変態になるな。
視線を結乃の顔に戻ると、瞳は俺を見たまま1ミリも動いていなかった。
(いや、こえーよ)
――4限目 座学――
「『ゲート』の崩壊が発生すると、その内部に存在していたモンスターが出てくる」
またも視線…。
「………」
「………」
結乃はずっとこちらを見てくる。
――昼休み――
俺はクラスに友達というものが存在しない。
それどころか、最近の授業で発覚した魔力9のせいで、教室内に居場所というものがない。
よって、俺は屋上に来ていた。
「思った以上に綺麗だな…。防犯カメラもないみたいだし」
学校あるある、屋上はあるのに立ち入り禁止になっている。
この学校も例外ではなく、屋上は立ち入り禁止で扉には鍵がかかっていた。
「鍵がかかっていたはずだけど、どうして扉開けたの?」
後ろから結乃の声がし、振り返る。
「結乃さん…どこから見てた?」
「鍵に何かしている所から」
「ピッキングからか…。それと、今日ずっと俺のこと見てた?気のせいならごめんけど…」
「見てた」
「そうか…それで、俺に何か用事があるって感じだけど…」
俺がそう聞くと、待ってましたと言わんばかりに結乃がこちらに寄って来る。
「実は一つ、東雲君に頼みたいことがあります」
結乃の表情からして、かなり重要なことっぽい。
内容によっては断るつもりだったが、これは難しいな。
「今週の土日どちらかに私とデートしませんか?」
「オッケー」
正直、この時の俺は脳死状態だったと思う。
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