やらかし③
ひとまず魔法学の授業が終了し、俺は教室に戻る。
教室に入るとクラスの何人かが俺のことを見て、近くの生徒とヒソヒソと会話を始める。
なぜこうなってしまっているのか、それは先程の魔法学の授業中の出来事を話さなければならない。
天宮さんのスキルが『
魔力測定で俺に順番が回ってきた。
俺は先生の前まで移動し、魔力測定器で魔力を測る。
〈9〉
その数字を見たとき俺はやらかしたと理解した。
周囲がザワめく。
なぜなら俺の魔力量は、一般人よりも少ないとされているからだ。
この学校に入学してくる生徒たちは、基本的に一般人よりも優れている。
そんな中で俺が一般人以下の魔力量だった、というのは衝撃的だ。
「9ですか…」
心なしか、目の前にいる先生の俺を見る目が変わった気がする。
いや、実際変わったのだろう。
目のハイライトが完全に消え失せた先生の顔に、少し恐怖を覚えた。
先程の授業を思い出していると、女子生徒から話しかけられる。
「あの…」
「?」
振り向くとそこには天宮さんがいた。
「あー、さっき…ん?」
見た目は天宮紗優さんだが、雰囲気が少し違った。
「あー、天宮結乃さん」
天宮結乃は無表情だったが、どこか嬉しそうに見えた。
「よく気づきましたね。初見で私が結乃だと気づいたのは、家族以外だとあなたが初めてですよ。それと、天宮という苗字は二人いるので、名前で呼んでください。そちらの方が楽でしょう」
「そういうことなら、結乃さんと気軽に呼ぶよ」
「結乃でいいです。同い年じゃないですか」
「ああ、わかった」
正直、天宮紗優と間違えそうにはなった。
このクラスに天宮は結乃しかいないのに。
それにしても、天宮結乃が話しかけてくるのは予想外だった。
他のクラスメイトは基本的に俺に無関心か、距離をとって陰口を言っている。
この状況で接触してくるのは、メンタル化け物だな。
「それで、俺に用事?」
「はい、放課後でいいので少し付き合ってください」
「え?」
「「え?」」
思わず声が出たのは俺だけではなかったらしく、周囲のクラスメイト数人も口を押えていた。
これは途轍もなく嫌な予感がするのだが、どうしよう。
3限目 魔法理論
「えー、この世界には魔法が存在します。魔法は基本的には誰でも使えますが、スキルを持っている人間は使うことができません。理由は今もなお研究されていますが、未だ有益な情報は掴めていません。このクラスでは天宮さんがスキルを所持していましたね。それでは、簡単に魔法について説明します。必要な人はメモを取るように」
先生がそう言うと、前にあるホワイトボードに長々と文を書き始めた。
【燃え盛る炎よ、我が前に顕現し敵を灰と化せ】
「これは炎魔法の詠唱文よ。人によっては火魔法など違う言い方をするけど、正解はないわ。ここに書いた文を魔力を操りながら詠唱すると、炎弾や火炎放射ができるわ。基礎魔法だから覚えるようにしましょう。基礎魔法は他に水や風があります。あと、これは一番重要なんですが無詠唱なんて馬鹿なことはくれぐれもしないで下さい。毎年、異世界転生漫画の真似をして、何人か魔法が暴走して爆発しています」
「爆発…」
「マジかよ…」
「やべ、俺無詠唱で魔法極めようとしてたわ」
クラスメイトの男子何人かの顔が青ざめていた。
「それじゃあ、まずは自分自身の魔法の適正を確認することから始めましょう。これは基礎中の基礎なので、すでに自覚している生徒はいると思います。その生徒は以前配布された魔法学の教科書で予習しておいてください」
備考
基本魔法の属性は全部で5種類
炎、水、風、雷、氷
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