やらかし
天宮さんイベントが発生した後の授業は、精神的に少しキツい。
疲れたというのもあるが、一部生徒が俺のことをチラ見してくるというのが大きな要因だ。
「モンスターと戦うにあたって、知識は重要になります。初見のモンスターに出会った場合はまず体の構造に着目しましょう。人型ならば、人間と弱点は似通っています。獣型は――」
モンスターについて熱く語る先生を眺める。
退屈すぎる。
俺の通う『国立英雄育成専門学校』の1年の最初の授業は、ほぼハンターになるための基礎知識を学ぶものだ。
ちなみになぜそんな学校がこの世界にあるのか?という疑問を解消するには、少し昔の話をすることになる。
今から約20年前、2005年に事件は起きた。
突如、世界各地に空間の裂け目のようなものが出現した。
最初は誰しもが警戒していたが、特に変化がなかったため次第に人々は警戒を解いていった。
そして、完全に日常の一部に溶け込もうとしていた時、惨劇が始まる。
東京の渋谷上空に現れていた裂け目から、異形の怪物が地上に舞い降りたのだ。
その姿はアニメや漫画で見るドラゴンそのもので、口から吐く炎はすべてを焼き尽くし、渋谷を…東京を日本の地図から消滅させた。
後にそのドラゴンは『獄炎龍』と名付けられ、世界で最初に滅亡級モンスターと認定された。(※滅亡級)
獄炎龍は今でも渋谷にいるとされている。
その出来事以降、世界各地の裂け目から異形の怪物たちが地上へ降り立ち、周囲にある町や村を襲い始めた。
日本以外の国では軍などを動かし、被害はあまりひどくなかったが一部地域、そして日本での被害は甚大だった。
そんな悲報の中、世界初の大型モンスターの討伐者が現れた。
当時23のサラリーマンをしていた一般男性が、異形の怪物を素手で倒したのだ。
その男の名は
現在ではハンター協会の代表として君臨すると同時に、日本でたった2人の国家戦略級ハンターの一人だ。
そして、賀茂憲明に続くように日本各地で異形の怪物たちに立ち向かう人間が現れた。
それこそが、現在のハンターたちだ。
そこから色々あり、日本にハンターの育成を専門とした学校が設立された。
ご丁寧(後半適当)な昔話はここまで。
学校内にチャイムが鳴り響き、授業が終了する。
「はい、次回の授業からは2005年、『獄炎龍』が出現したとき、なぜ日本はすぐに対応できなかったのか。など、班を作って考えてもらいます」
次回予告をし、教室を出ていく先生。
その数秒後、教室がにぎやかになる。
「はぁ、ったく早く実習がしたいもんだな」
「そうだな。聞くだけじゃつまんねーし」
「そういえばさ、このクラスにはいんのかな?」
「何が?」
「スキル持ちだよ」
「確かに気になる…、今んとこ俺が知ってるスキル持ちは天宮さんぐらいかな」
彼らの話題はスキル持ちについてだった。
スキル持ちというのは、簡単に言えば魔法とは違う特殊能力が使える人間のことを指す。
そんなんチートだ!なんて、言う人もいるかもしれないが、スキル持ちはそれなりのデメリットがある。
それは魔法が使えないというものだ。
まあスキルの内容によってはデメリットなんて気にもならないだろう。
二限目は確か、魔法実技だった気がする。
俺は一人立ち上がり、魔法学の授業が行われる体育館へ向かった。
※滅亡級 世界の脅威となるレベル
モンスターの脅威度一覧
・低級 単独なら一般人でも対処可能なレベル
・上級 小さな村なら壊滅するレベル
・災害級 中型ならば軍隊で対処可能なレベル
※軍隊など一般的な兵器で対処可能な限界レベル
大型は実力のあるハンターが必須
・災厄級 単独で町一つを壊せるレベル
・壊滅級 一国の脅威となるレベル
・滅亡級 世界全体の脅威となるレベル
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