第51話 巨人族のダンジョンへ。
「なるほど……。巨人族のダンジョンか……。」
ようやく日本政府との交渉が始まりあれやこれやとワタワタしているが、根本的にDの周辺のダンジョン……富士樹海近辺のダンジョンを攻略するには変わりはない。
富士樹海の全てのダンジョンを支配下におければ、彼女の力はさらに莫大な物になるだろう。だが、巨人族のダンジョンは純粋に質量自体が異なっていた。
質量は正義である。巨人族がうろうろしている場所ではこちらは容易く踏みつぶされて終了である。
そして、巨人族がウロウロしているという事は、当然ダンジョン自体も極めて巨大である。そんな中をネズミよろしくウロチョロするなんて危険極まりないだろう。
「……いいだろう。先生も力を貸してやろう。ちょうどミスリルの剣ももらったところだ。多少は試し切りをしてみないとな。」
(えぇ……。先生もついてきてくれるの……?でも確かに多脚戦車でも巨人族に対抗できるかは分からないしなぁ……。)
ともあれ、強力な戦力が仲間になってくれるというのなら歓迎するしかない。彼らはそのまま詩音たちをパーティにいれて、近くの巨人族のダンジョンへと侵入していった。巨人族のダンジョンの入り口はかなり小規模ではあったが、入り口とは異なり、その中のダンジョンは非常に巨大なものだった。
人間などまさに虫けら程度の大きさしかない迷宮に、極めて巨大な人間……10mほどの巨大な存在が足を踏みしめながら入り組んだダンジョン内部をうろうろと動き回っていた。まるで彼らなど目に入っていないように知恵のない巨人族は虚ろな顔をしながら足音を立てながら歩き回っていた。
(よし、わざわざ戦わなくてもいい。このまますり抜けていこう。)
いかに戦力が増したとはいえ、ここで真っ向面から巨人族と戦うほど彼らも戦いには飢えていない。本来の目的はダンジョン攻略であり、敵を回避できればそれに越したことはないのだ。無目的にウロウロと歩いている巨人族はその下をチョコマカ動いている瑞樹たちに注意を払うことはない。
こっそりと巨人族の足元を潜り抜けていく瑞樹たちだが、だが、がくん、と足が沈むとそれをきっかけにして大音量の警戒音が鳴り響く。
これは罠の一つ、警戒警報を出す装置である。そして、その警報によって巨人族も足元をうろうろしている瑞樹たちに気づいたらしい。
だが、その迫りくる巨人の拳は、詩音が剣を振るった瞬間三枚に下ろされる事になった。こんな虫けら程度の人間が自分の拳をどうこうできたという事実は、彼らの脳には理解できない。だが、その痛みだけはその愚かな頭でも理解できたらしい。
巨人が悲鳴を上げると、ほかの数体の巨人たちがわらわらと大きな足音を立てながらこちらに迫りくる。それに対して、詩音はまるでダンスを舞うように、スカートをはためかせながら、剣を持ったままくるりと一回転すると、そこから離れた巨大な真空刃が数十mはある巨人の胴体を次々と両断していく。
さらに、まるで独楽のようにギュルルルル!と回転しながら彼女は平然と空中を舞いながら縦横無尽に駆け抜けると同時に、無数の真空刃があらゆる場所に射出され、大小さまざまな巨人たちを切り裂いていく。しかもそれは一度だけでない。胴体を縦に、横に両断され、さらに襲い掛かる真空刃により粉微塵の肉塊に切り裂かれていくのだ。肉と血が飛び散る鮮血の舞踏。彼女が舞い踊るたび巨人が粉微塵に粉砕され、血の華が咲いていくのだ。
「……もう先生だけでいいんじゃないかな?」
思わず瑞樹がそう漏らして、姫奈も頷いたのには、誰も否定できなかった。
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